2015年3月のサッカー

Index

  1. 03/04 ● ソウル1-0鹿島 (ACL・グループH)
  2. 03/08 ● 清水3-1鹿島 (J1・1stステージ第1節)
  3. 03/18 ● 広州恒大4-3鹿島 (ACL・グループH)
  4. 03/27 ○ 日本2-0チュニジア (親善試合)
  5. 03/31 ○ 日本5-1ウズベキスタン (親善試合)

FCソウル1-0鹿島アントラーズ

AFCチャンピオンズリーグ・グループH/2015年3月4日(水)/ソウル/スカパー!

 あぁ、また負けてしまった……。
 負けてとうぜんって思えるような試合ならば仕方ないのだけれど、先週のウェスタン・シドニーにしろ、この日のFCソウルにしろ、相手の出来はそれほどでもなかった。どちらも全体的に押し気味に試合を進めていたのはアントラーズのほうだ。
 でも勝てない。ここぞのビッグ・チャンスを決められない。反対に相手にセットプレーでのちょっとした油断からゴールを許して、スコアレスのまま黒星って……。あぁ、この内容ならば、最低でもドローで終わって欲しかった。
 この日のスタメンは曽ヶ端、西、ファン・ソッコ、昌子、山本、柴崎、小笠原、遠藤、土居、カイオ、高崎の11人。
 先週のメンバーから植田が抜けて、代わりにファン・ソッコが公式戦デビュー。なぜ植田がベンチ?と思ったけれど、まぁ、考えてみれば、韓国での試合だし、経験不足の植田よりも、経験豊富で韓国が故郷のファン・ソッコを選んだってことなのだろう。実際、ファン・ソッコはとてもよかった。おかげでアウェイだけれど、守備面ではかなり安定して見ていられた。だからこそ、あの失点がなぁ……。
 失点の場面は左サイド浅い位置のFKから。蹴り込まれたボールが体勢を崩した昌子にあたってファーに流れていった先にフリーの韓国選手がいて、どかんと思い切りよく打ったシュートがぐさっとアントラーズ・ゴールに突き刺さる。あの場面、なんで詰めてゆく選手がいないかなぁ。あぁ、痛い失点だった……。
 こちらも──主にカイオを中心に──何度かビッグ・チャンスは作っていた。シュート数はおそらく、こっちの方が多かったと思う。でも決められない。なぜか決まらない。いや、相手GKのファイン・セーブが2、3度あったっけ。それにしても、ま~決まらない。いまさらノーゴールに終わった事実は変えられない。
 途中出場の一番手として、期待の金崎夢生がアントラーズ・デビュー!──がしかし、期待は空回り。まぁ、悪くはなかったと思うけれど、決定的な仕事はできず。二番手・中村充孝はあいかわらず存在感なさすぎ。三番目の赤崎もぱっとしない。サブの投入でまったく状況を打開できないのが歯がゆい。マジで強力な外国人助っ人が欲しい。2連敗ですでに黄色信号点滅。次に負けたらもう終わりでしょう。あぁ、まったく。
 それにしても今回のACL、Jリーグ勢は最初っから最悪。ガンバ、レッズともに2連敗で、唯一勝ち点を挙げているのは、プレーオフを制して出場しているレイソルだけってのはどういうことだ。──といいつつ、レイソルがベトナムのクラブに5-1で勝ったとか聞くと、どうしてうちのグループにもそういうクラブがないかなと思わずにはいられない。
 あぁ、早く1勝が欲しい……。
(Mar 04, 2015)

清水エスパルス3-1鹿島アントラーズ

J1・1stステージ第1節/2015年3月8日(日)/IAIスタジアム日本平/スカパー!

 よもやJ1開幕戦でまで負けようとは想定外にもほどがある。
 なんたって今年の開幕戦の相手は、昨年ギリギリで残留を決めた清水エスパルスだ。そこから今年はアントラーズにめっぽう強かった高木俊幸とチーム得点王のノヴァコヴィッチが移籍していなくなっている。かわりにこれといった補強をしたという話も聞かないし、となれば去年より苦しい戦いを強いられるのは必至。今シーズンの降格候補の筆頭だろうと勝手に思い込んでいた。
 それに対して、こちらは好成績をあげた去年の戦力をほぼ踏襲している。若手主体で伸びしろも期待できるし、優勝候補の一角と呼ばれるのも当然だろうって状況。普通に戦えれば、負ける要素が見当たらない。
 ――と思っていたんですが。
 まず想定外だったのは、いつものメンツで戦えなかった(戦わなかった?)こと。
 この日のスタメンには、なんと、去年全試合出場を果たした曽ヶ端と昌子、そしてキャプテン小笠原の名前がなかった。
 昌子は手の骨折の手術を受けたとのことで故障欠場。曽ヶ端、オガサがなぜスタメンをはずれたかは不明。曽ヶ端はベンチ入りしていたから、プレーができないわけではないのだろうから、なにかアクシデントがあったんだろう。
 小笠原に関してはベンチにも入っていなかった。ACLもあったので、ターンオーバーを引いたのかもしれない。でも、オガサのキャプテンとしての存在感の大きさを考えれば、開幕戦で彼をわざわざベンチから外すってのも、ちょっと考えにくい。やはりなにかトラブルがあったのではないかと思う。
 で、理由はともかく、その小笠原の不在がこの試合の結果を象徴していた気がしてしかたない。
 というのも、先制点を許すきっかけとなったのは梅鉢のボール・ロストだったし。決勝点となった清水の2点目は、元鹿島のボランチ、本田拓也のゴールだったから。
 ポスト小笠原として期待のかかる梅鉢のミスから先制を許し、その梅鉢同様、鹿島時代は小笠原のために出場機会に恵まれず、清水への復帰を余儀なくされた本田拓也に決められての敗戦。――それってなんとも皮肉だよなぁと思う。ある意味、すごくいいシナリオだとさえ思う。サッカーの神様は、ときに味なことをする。
 この日の鹿島の先発メンバーは、GK佐藤昭大、DF西、植田、ファン・ソッコ、山本脩斗、MF柴崎、梅鉢、カイオ、土居、金崎夢生、FW高崎という11人。途中出場は遠藤、充孝、豊川の3人。
 そういや、遠藤もスタメンを外れたんだった。金崎のスタメン・デビューにはおぉと思ったけれど、でもだからって遠藤はずしちゃったのはどうだったんだろう? 実際、アントラーズの攻撃がようやく活性化したのは、後半頭からカイオに替えて遠藤を入れてからだったし。
 ―─ってまぁ、でもそれは結果論だろうか。ACLでのカイオの活躍を見ていれば、彼をはずすわけにはいかないだろうし(でもこの日はいまいちだった)。土居はトニーニョ・セレーゾにとって、トップ下のファースト・チョイスみたいだし。金崎をスタメンで使おうと思えば、遠藤がベンチってのは致し方のない選択なのかもしれない。
 まぁ、僕としては、それだったら、いまだに結果の出せない高崎をはずして、ゼロトップでいいじゃんと思ってしまうけれど。
 そもそも、高さを買って取ったんだろう高崎が、いまだヘディングシュートらしいヘディングシュートを打って見せてくれていないのが不満だ。その一方で、きょうの試合では金崎が惜しいヘディング・シュートを2本も打っていた。ああいうシュートをこそ高崎には期待しているのに。足元の技術に秀でた金崎がああいうヘディングも打てるんならば、マジで金崎のワントップでもいい気がする。
 まぁ、なんにしろ、この日のアントラーズのスタメンで確固たるレギュラーと呼べるのは、両サイドバックと柴崎、カイオ、土居の5人だけ。つまり過半数はサブか、新加入の選手だったわけだ。さすがにそうなると、連係などの問題も出てくるだろう。
 去年からのアントラーズの強さの秘訣は、とにかく相手より多くチャンスを作って、多くのシュートを打っていることだと思っている。そういう意味では、シュート数が1桁台に留まったこの試合、アントラーズは普段のような戦いができていなかったと言っていいと思う。
 まぁ、でもそれは相手のエスパルスの出来のよさに苦戦を強いられたという部分もかなりあった。
 いや、よかったです、エスパルス。エース大前だけでなく、村田、永沢、八反田といった二十代後半の選手たちが前向きでアグレッシヴなプレーを見せていて、とても好印象だった。本田拓也もキャプテンマークを託されて、非常に存在感があったし。かつてのクラブメイトだった彼の活躍は敵ながら嬉しい。
 それにエスパルスのゴールはどれもとてもきれいな形だった。敵ながらあっぱれ。
 梅崎がボールを奪われたところからパス1本をつないで大前が決めた1点目は、ペナルティ・エリア内で大前にフリーで持たせたら、そりゃ駄目だろうって感じだったし。カウンターから本田拓也がゴール真正面に飛び込んできて決めた2点目も見事だった。そして3点目はまたも大前。それも1本目に劣らぬ豪快なやつ。そういや、大前には前にもさんざんやられたんだっけ。高木俊幸がいなくなって楽勝かと思っていたのに、この子がいたかぁ……。
 対するこちらのゴールは、遠藤のシュートが相手GKの手を弾いて、ゴールマウスにかろうじて入ったもの──という判定だったけれど、リプレイで見たら、ゴールラインのぎりぎりでDFにかき出されていた。誤審じゃん……。
 まぁ、とはいえ、そのあとで金崎の打った決定的なシュートが、相手の手にあたって止められたのを主審が見逃したので、誤審の件はイーブン。それにしても開幕戦でいきなり誤審の痛み分けってあたりが、今年のJはなんとも幸先悪い。
 いずれにせよ、こちらは誤審の1点のみで、あちらはきれいな3ゴールなのだから、勝負としては完敗だった。エスパルスはこういうサッカーがこの先もできるようならば、今年も降格の心配はないだろう。
 それにしても鹿島はこれで開幕そうそう公式戦3連敗だよ……。まさかこんな展開が待っていようとは夢にも思わなかった。
(Mar 08, 2015)

広州恒大4-3鹿島アントラーズ

AFCチャンピオンズリーグ・グループH/2015年3月18日(水)/広州/スカパー!

 この試合、キックオフが日本時間の夜9時だというので、仕事から帰ってからでも余裕で観られると思っていたのに、こんな日に限って仕事がトラブって、オフィスを出たのが夜の11時。ようやく帰宅して遅い食事をとりつつサッカーを観はじめたときには、日にちが変わっていました。
 ということで、不本意ながら録画観戦になってしまったACL3試合目。結果も不本意はなはだしかった。
 まぁ、数日前のJ1第2節では、J2上がりの湘南にホームで逆転負けを食らっているので、そんなクラブが中国王者にアウェイで勝つのは至難の技だろうとは思っていたのだけれど。とはいえ、一度は逆転してみせてくれただけに、その後の再逆転負けは痛恨の極み。
 この日はGK曽ヶ端、DF西、ファン・ソッコ、昌子、山本、MF柴崎、小笠原、遠藤、土居、金崎、FW高崎というスタメン。
 手の手術をしたという昌子が戻ってきた。植田が五輪代表招集中だからだろう、直前の湘南戦ではCBに山村が入ったとのことで、あとはその試合と同じメンバー。
 つまりカイオはこれで2試合連続のベンチ。背番号7をもらったことだし、今年はレギュラー定着かと思っていたら、金崎の加入でやや状況が変わったらしい。まぁ、当分は遠藤、金崎、カイオの3人が中盤の2つのイスを取り合うことになるんだろう。
 なぜ土居のポジションだけ安泰かはよくわからないけれど、少なくてもこの日の彼はワン・ゴール、ワン・アシストと気を吐いて、とてもいいプレーをしていた。W・シドニー戦での今季初ゴールのときも思ったけれど、今年の土居にはちょっと期待してもいいかなって気がしている。
 いやしかし、この試合は序盤の出来が悪かった。もうパスミスだらけ。こんなんでは勝負にならないだろうって思った。
 相手の広州恒大は、さすが4年連続中国王者というだけあって強かった。プレスは厳しいし、なによりブラジル人FWの11番リカルド・ゴラール(日テレプラスのテロップではゴウラー)が強力。
 この人、グループリーグの2試合でここまで4得点というから、どんなにすごいのかと思ったら、なるほど、ポジショニングはいいし、シュートも正確。この試合でも2ゴールを決められてしまった。もう手がつけられない感じ。セットプレーからの先制ゴールとか、敵ながらあっぱれだった。ニアにするっと入ってきて、こつんと頭にあて、あっさりとファーに放り込んでみせたけれど、あれってかなり高度なんじゃないだろうか。あまりに簡単に決められてしまって茫然。
 まぁ、とはいえ、とにかく序盤はこちらの出来が悪かった。先制の場面だって、いくら相手がうまいとはいえ、敵のエース・ストライカーをフリーにしちゃいかんでしょう。2点目もセットプレーから9番のブラジル人エウケソンにあっけなく決められているし。9番と11番にセットプレーでゴールを許すってのは、マークがゆるい証拠じゃないだろうか。もっとガツガツいってくれよぉ。
 とにかくこの試合、そんなふうに開始からわずか10分で先制を許すわ、15分にはオガサが足を痛めて交替しちゃうわで、最初から踏んだり蹴ったりだった。深夜に録画で観ていたせいもあって、あとはもう早送りしちゃおうかと思ってしまった。
 それでも救われたのは、この日はこれまでのように、ゴールに嫌われていなかったこと。序盤こそひどかったものの、その後は徐々に持ちなおし、前半のうちに同点に追いついてみせたのみならず、後半には(一時的ではあったけれど)逆転までしてみせてくれた。アウェイでつかの間ながら勝利の希望を抱かせてくれたのは嬉しかった。
 同点ゴールは土居のシュートをGKが弾いたそのこぼれ球を高崎が胸で押し込んだもの。高崎、形は悪いけれど、とりあえず移籍後初ゴールはめでたい。でもほんと、彼のプレーを見ていると、簡単にボールを奪われたりしていて、あんまりうまくないよなぁと思う。悪いけど、1ゴールくらいではまだまだ信用できない。
 後半の土居の勝ち越しゴールも1点目と同じような形。こちらは遠藤が積極的に打ったシュート──これもGKに止められた──のこぼれ球を土居がヘディングでどんと決めた。土居にしては珍しいダイビング・ヘッド。いやぁ、ナイス。とてもいいゴールだった。
 これであとは守るだけ……と思ったのだけれど、どうにも守れないんだよなぁ、いまのチームは。勝利を期待できたのは、そのあとわずか5分ちょい。前に書いたように、セットプレーからあっという間に同点にされ、さらにはそのあとすぐにゴラールに2点目を決められて、再逆転されてしまう。
 その後、途中交替でカイオ、本山を順に投入。アウェイだし、せめてドローに持ち込んでくれと、後半ロスタイムまでゴールを期待するも、逆にそのロスタイムに中国人に追加点を許す始末。おいおい……。
 その4点目のあと、柴崎のヘディングで1点返したのはよかったけれど、さすがにロスタイムもそこでタイムオーバー。まさか3点取って負けるたぁ。終わってみれば、ロスタイムの4点目が余計すぎた。
 まぁ、セットプレーからの2失点は、相手もうまかったので仕方ないと思うけれど、3点目、4点目の失点はとにかく形が悪かった。どちらも自陣でボールを奪われてのカウンター。で、最後にボールを奪われたのはどちらも梅鉢とくる(この日はオガサの故障で前半から出場)。
 僕が観ている試合限定ながら、梅鉢はこれで清水戦とこの試合と、2試合つづけて相手に決勝点を与えるきっかけを作っている。
 この日はどちらもボールを失いかけて、タックルでクリアしようとしたボールが相手に渡ってしまうという不運な部分もあったけれど、そもそもボランチというポジションの重要性を考えれば、そういうシチュエーションで球際で競り負けているのが問題。彼のプレーからは、いまいち勝利への執念やプレーすることへの飢えが感じられない。梅鉢にはもっと死ぬ気で走り回って欲しい。
 僕は今のままだったら、青木や山村をボランチ起用してくれたほうがよほど納得がゆく。中田浩二が引退したことや、本田拓也や増田誓志がいなくなってしまったことを惜しく思わずにいられない。そんなことを思わなくても済むよう、梅鉢にはオガサのレギュラーを脅かすくらいのプレーをみせて欲しいと、せつに思います。
 ということで、ACLのグループリーグを半分終えて、アントラーズは3連敗の勝ち点0というさんざんな結果に終わっている。もう3連勝の広州に追いつくのは論外として、勝ち点4ずつのあとの2チームを追いつくのもきびしそうな状況。なんでこんなことになっちゃうかなぁ……。
 それにしても、これで公式戦5連敗だ。それも引き分けさえ挟まず、黒星ばっかり5つも並ぶという。こんなこといまだかつてないんじゃないだろうか。まさに春の珍事と呼ぶにふさわしい。
(Mar 19, 2015)

日本2-0チュニジア

親善試合/2015年3月27日(金)/大分スポーツ公園総合競技場/TBS

 ヴァイッド・ハリルホジッチ氏が日本代表監督に就任してから、わずか2週間という短期間で行われた初の親善試合。
 前監督アギーレが八百長疑惑で正式に告訴されたことで結局解任の憂き目を見てしまったのは残念だったけれど、後任としてこの日から指揮を取り始めたハリルホジッチさん、この人はこの人でとても期待できそうな印象でよかった。
 日本代表監督としての初采配にあたって、ハリルホジッチ氏が選んだスターティング・メンバーは以下の通り。
 GK権田、DF酒井宏樹、吉田麻也、槙野、藤春廣輝(G大阪)、MF長谷部、山口蛍、清武、FW永井謙佑、川又堅碁、武藤。フォーメーションは川又をワントップに据えた4-2-3-1。
 本田、香川、岡崎をこぞってスタメンから外したり、故障明け(しかもJ2)の山口蛍をスタメンで起用してきたのは意外性があったけれど、それでも、もともと若手を積極的に起用すると語っていたそうなので、基本的には、あぁ、なるほど、という感じ。個人的によく知らなかったのは藤春くらいで、あとはこれが代表初キャップの川又にしろ、2試合目の永井にしろ、これまで代表に呼ばれていたとしても、なんら不思議のない選手たちだし。藤春にしても、さすがガンバの三冠に貢献したSBだけあって、運動量が豊富で好印象だった。少なくても、皆川、坂井といった、「誰それ?」って選手を引っぱってきた(そしてそれっきり呼ばなかった)アギーレさんの初戦と比べれば、納得のゆくスタメンだった。
 でも、それでは内容がよかったかというと、さすがにそこはいまいち。少なくても前半は、なかなかパスがうまくつながらず、消化不良な印象があった。
 右サイドの永井はけっこう目立っていたし、川又にもおっと思うようなプレーがひとつふたつあったけれど、それでもチャンスは数えるほどしか作れない。逆に左サイドはほとんど機能していなかったし、清武なんか消えっぱなし。さすがに初招集から数日で、新顔がたくさん揃ったメンバーでは、そうそう連係も高まらないし、致し方ないかなぁという感じだった。
 ただ、観ているうちに、おやっ? と思うようになる。なんだか、いままでよりはバック・パスが少なくて、いざボールを持ってからの攻撃が速い印象だったから。マイ・ボールになったところからの、まわり選手の動きだしが、これまでよりも確実に素早くなっている気がした。そしてそれは、いかにも噂に聞いていたハリルホジッチ氏の方針どおりに思えた。
 わずが短期間でチームをしっかりと自身の方針に従えてみせるのだから、この人、本当に優れた監督なのかもしれないと思った。
 もうひとつ、ハリルホジッチのスタンスがはっきり表れていたと思うのが、後半の布陣。
 今回の親善試合2連戦では、なるべく多くの選手に出場機会を与えるという話だったので、スコアレスで前半が終わったあと、後半は頭から何人か選手を替えてくるだろうと僕は思っていた。選手選考を考えれば、ほかの選手にもある程度の時間を与えて、どんなプレーをするか観てみたいと思うのが普通だと思ったからだ。
 ところがハリルホジッチは、ひとりも選手を入れ替えることなく、後半をスタートさせた。
 普通の試合ならば──というか勝利を目的とするのならば──それって特別なことではない。前半だけならば疲労もまだそれほどではないだろうし、45分をともにプレーした選手をそのまま使ったほうが、連係もよりスムーズになって、得点の可能性は高まるだろう。
 ハリルホジッチはこの試合、より多くの選手を試すという一方で、また「絶対に勝つ」とも公言していた。だから、後半の選手交替がないのを見て、あぁ、なるほどと思ったんだった。この人は本気でこの試合に勝とうと思っているんだなと。
 でもって、ハリルホジッチは後半の選手交替により、その公約を果たしてみせる。
 後半15分までスコアレスのままなのを見届けると、本田、香川を同時に投入。さらに10分遅れで岡崎と宇佐美(A代表デビュー!)を入れて、これにて前線の選手は総入れ替え。
 もとよりボランチの長谷部・山口はW杯のレギュラーだったわけで、ここに本田たちが入った中盤より前ってのはつまり、ザッケローニJAPANの主力に宇佐美を加えた攻撃陣なわけだ。そろそろ疲れが出ているチュニジア相手にこの形で戦えば、そりゃ点も取れるだろう。
 はたして日本代表は、この形となった直後に、岡崎のゴールで先制する。香川が左サイドに流したパスを本田がくるしい体勢からしぶとくファーへと上げ、そのボールを最後は岡崎がヘディングで押し込んだ。
 その5分後の追加点は、香川が左サイドから蹴り込んだシュートかクロスか曖昧なボールを相手GKが弾いたところへ本田が詰めていったもの。
 日本は本田、香川の登場以降、すっかり試合を制圧して、わずか20分であっさりと勝利を決めてみせた。
 そのあと、残り10分を切ってから今野と内田篤人を入れてきたのには、僕は初めなんで?と思ったんだけれど──経験十分の今野と、怪我で膝にテーピングしているウッチーをわざわざその時間から使う意味がわからなかった──、終わってから考えてみるに、それって要するに、ハリルホジッチがこの2試合でできる限りの選手に出場機会を与えると言った、その公約を果たすために必要な交替だったんだなと。いまになるとそう思う。
 この日、交替で出てきたのは、宇佐美を除けば、あとは全員、いまさらテストは不要なだけの経験値を持った選手たちだ。若い選手を途中交替で使わなかったのは、次の試合を見据えてだということがわかる。
 ハリルホジッチは経験値の少ない選手に60分ずつのチャンスを与える一方で、経験値豊富な選手をあとから使うことによって、勝利をもぎ取ってみせた。
 唯一例外的な起用をされた宇佐美も、試合終了間際には、香川からの見事なスルーパスを受けて、代表初ゴールかというシュートを打っている(惜しくもポスト。あれが決まっていれば……)。宇佐美を後半から使ったのは、勝利を収めるためには彼の決定力が有効だと判断したからだろう。怪我をしているウッチーをあえて使うとすれば、勝利を決定づけたこの試合の残り10分ほどふさわしい時間帯もない。そう考えると、ハリルホジッチ氏の姿勢は非常に論理的だ。
 ということで、終わってみれば、その采配たるや、見事のひとこと。勝利という公約を果たしながら、きちんと交替カード6枚を使い切り、しかも適材適所で、それぞれのいいところを引き出してみせた、申し分のない初陣だった。
 次の試合ではスタメンを総入れ替えするような話もしているようなので、この分ならば、今回招集されている選手は、おそらくGKを除くほぼ全員がなんらかの形でピッチに立つチャンスをもらえるのではないだろうか(まぁ、試合展開にもよると思うけれど)。つまり、柴崎、昌子、大迫らには、次の試合に出られる可能性がかなりあると見た。逆にそういうことになると、今回の招集から漏れた柿谷、細貝あたりはちょっと可哀想だなと思ったりもする。
 まだたった一試合だけれど、少なくてもこの試合をみる限り、ハリルホジッチという人は、徹底的に勝利にこだわる一方で、約束を大事にする、とても信頼できる監督とお見受けする。この先、この人のもとで日本代表がどのように変わってゆくのかを見るのが、とても楽しみになってきた。
(Mar 29, 2015)

日本5-1ウズベキスタン

親善試合/2015年3月31日(火)/東京スタジアム(味の素スタジアム)/日本テレビ

 ハリルホジッチ新体制の2試合目。
 前の試合とはスタメンを総入れ替えするという話だったから、今度はどんな布陣で楽しませてくれるのかと思っていたら、意外や意外。なんと前の試合で途中出場した本田らベテラン勢がそろって名を連ねていた。
 GKは川島だし、4バックは内田篤人、昌子(祝A代表デビュー!)、森重、酒井高徳で、ダブル・ボランチに今野と青山。その前が本田、香川、乾で、岡崎のワントップって。なんだい、それって、ほぼザッケローニ&アギーレ時代の布陣と一緒じゃん!
 ──ってか、まぁ、スタメン総入れ替えした結果がこのメンバーになるのだから、それだけ前の試合での選手起用が大胆だったってことだろう。ハリル氏(長いので略す)にしても、本田や香川がスタメンでどんな働きを見せるか、じかに見てチェックしたいことだろうし。結局、主力組に関しては、スタメンとサブの2パターンを試しているわけで。ある意味すごくよく考えられた起用法のような気もする。
 で、おもしろかったのは、そんな風に馴染みのある顔ぶれで戦っていても、やっているサッカーが確実にこれまでと違うこと。
 具体的にいえば、とにかく球離れがいい。パスを受ける選手は、受ける前から前線をチェックして、ボールを受けたら、できるかぎりノートラップでダイレクトにボールを前へ出す。チェックにいった選手も、相手からボールを奪ったら即座にフィードする。そういう意識が徹底されている。前の試合でも感じたことだけれど、この試合ではその印象がさらに強かった。
 相手からボールを奪った瞬間から、すでに攻撃は始まっているんだと。無駄なパス回しをしているひまがあったら、さっさと最前線にボールを預けて、シュートまでいけと。そういう新監督の意向が早くもチームに浸透している印象を受けた。
 堅守速攻とかカウンターというと、どうにも受け身なイメージを抱いてしまうけれど、守備に攻撃の起点となる意識が強いため、ボール奪取・即攻撃という切り替えの速さゆえ、試合のテンポが速くて、やたらと小気味いい。で、前に行けば行ったで、ちゃんとシュートで終わる。GK真正面でもいいから、とにかくシュートを打つ。開始10分くらいのあいだに何本シュートがあっただろう。こんなに最初から積極的にシュートを打つ日本代表って、いままで観たことなんじゃないかって思った。
 開始わずか6分に決まった青山の素晴らしいミドル・シュートは、そんなチームの新しい方向性の象徴のようだった。
 でも全体にそういう感じだから、逆に本田のようにボールをためるプレーをしていると、なんかもっさりした印象を受けてしまう。もしもこのサッカーが定着した暁には、本田はお役御免ということになりかねない気がする。
 まぁ、そんな風に思ってしまうのも、前半は青山のゴールの1点に終わったからかもしれない。なんたって後半、本田や香川が抜けたあとで3ゴールが決まっているのだから。それも柴崎、宇佐美、川又ら、若手が主体。ここまで若い選手がいっぺんに結果を出した試合なんて、とんと記憶にない。
 そういや、この日のハリルホジッチは後半の頭から選手を替えてきた。ウッチー、今野をさげて、太田宏介、水本を投入。そしてなんと、水本はボランチでの起用ときた。なんだそりゃ。
 柴崎の出番を首を長くして待っていた僕としては、この水本のボランチ起用はちょっと疑問だった。だってボランチだよ? そこは柴崎だろうよ。もしや、ハリルホジッチは柴崎をあまり評価していないのか?──と。
 ──というか、思うにハリル氏はボランチには、必ず一枚は守備力の高い選手を起用する方針のような気もする。前の試合の山口蛍に、この試合の今野。そして水本。そのポジションには必ず一枚、きちんと敵をつぶせる選手が必須ってことなんだろうと思われる。ザッケローニのように、長谷部と遠藤を組ませるような無茶は、きっとこの先もしないとみた。
 あと、全部の選手に出場機会を与えるといいながら、GKとCBのふたりは2試合とも替えなかったのもおもしろい。そのふたつのポジションは90分を通じてプレーさせないことには評価できないという考えなんだろう。それゆえ水本をCBで使えないがゆえのボランチ起用なのではとも思った(水本、けっこういい感じだった)。そしてまた、その流れもあって、ボランチとしては守備よりもパスセンスや攻撃参加に持ち味のある柴崎の起用法がトップ下ということになったのかなと──。
 そう、この日の柴崎は、なんと香川と交替でピッチに立ち、そのままトップ下のポジションに入ったのだった。
 そして──最初のうちこそ球ばなれの悪いプレーでおいおいと思わせたものの、徐々にペースをつかみ始め──登場からわずか10分で、相手GKが前に出てきた隙を見逃さず、センターライン付近からのロングシュート──というか、これぞまさにゴールへのパス──を決めてみせる。ブラボー!
 この場面では、柴崎のシュートを追っていった岡崎がボールに追いつき、そのまま押し込めば自らのゴールにできるところをそうせずに、相手DFをブロックして柴崎にゴールを譲ったのには大笑いだった。岡崎、なんていいやつなんだ~。
 ──話が前後してしまったけれど、その岡崎は後半10分にヘディングで追加点をあげている(2試合連続)。アシストしたのは、これまた後半から出てきたばかりの太田。
 そのゴールの少しあとには、乾にかわって宇佐美が登場。そのあとが柴崎、そしてその3分後には、本田にかわって大迫も出てきた。これにて使える選手は全員を使うといった公約を実現してみせるハリルホジッチの偉いこと。
 大迫は本田のいた右サイドにそのまま入って、つなぎ役としてはそこそこボールを触っていたものの、決定機に絡むようなプレーはできずに終わった。
 柴崎のゴールのあと、ウズベキスタンにゴール前の混戦から1点を奪われたのはちょっともったいなかったけれど、それでも間髪入れずに、そのあと今度は宇佐美の代表初ゴールが決まる。ゴール前でするするっと相手DFのあいだをすり抜けて右足一閃! いやぁ、なんて素晴らしいシュートなんだ、宇佐美。やっぱすげーや。
 そのあと、最後の交替カードでわずかばかりの出場機会をもらった川又も、試合終了間際にセットプレーのこぼれ球をしぶとくつないだ森重のアシストを受けて、泥臭いヘディングを決めてみせた。
 ──ということで、終わってみれば、取りも取ったり5得点。うち代表初ゴールが3本とくる。それも後半の4ゴールは太田のアシストを初め、すべて途中交替の選手絡み。ザッケローニもアギーレも、選手交替ではほとんどいいところがなかっただけに、ここまで選手交替が実効性をともなう日本代表を見たのもじつにひさしぶりだ。
 そもそも、過去の記録を見てみたら、僕がこうやってサッカーの感想を書くようになってからのウズベキスタンとの試合は、すべて1-0、1-1、0-1などの、最少得点差で終わっている。そんな相手から5得点ですよ? もうなにもいうことなし。
 いやはや、新生日本代表の船出はびっくりするくらいに順風満帆だ。ハリルホジッチ監督、むちゃくちゃいいかもしれない。
(Apr 01, 2015)