FC東京2-2鹿島アントラーズ
J1・第18節/2017年7月8日(土)/味の素スタジアム

毎年恒例の味スタ詣で、今年はひさしぶりのナイト・ゲーム。
時期的には梅雨のさなかだけれど、今年は空梅雨であまり雨が降らず、この日も三十度を超える真夏日の一日。スタジアムも暑そうだなぁと思っていたけれど、二階席のスタンドは風が吹き抜けて、とても快適だった。いやぁ、気持ちよかった。
さて、ACLの敗退により石井監督が解任され、後任の大岩剛が就任してから5連勝中と絶好調のアントラーズ。個人的には大岩監督になってからアントラーズ戦を観るのはこれが初めてだったし、のみならず前半戦17試合を追えてアウェイ全勝という新記録のおまけまでついている。あと、今年はここまで引き分けがひとつもないというのも珍しかろう。ということで、とても楽しみにしていた一戦だった。
注目のスタメンは、GKが曽ヶ端、DF西、三竿弟、昌子、山本、ダブル・ボランチは永木とレオ・シルバ、攻撃的MFに遠藤、レアンドロ、そしてツートップが夢生とペドロ・ジュニオールという布陣。
大岩が監督に就任して以来、中村充孝がずっとスタメンを張っていたから、当然この日も出てくるだろうと思っていたのに、スタメンどころか出番もなかった。大岩体制になって覚醒した充孝を見られるかと思っていたので、ちょっと肩すかし。
でもまぁ、充孝がずっと出ていたのは、遠藤康が故障で離脱していたってのも理由のひとつだったんだろう。レアンドロの出番が増えたのも同じことで、遠藤が戻ってきてしまえば、おいそれとレギュラー確保とはいかないのだろうし。この3人に土居を加えた4人のMFをどう使うかってのは、けっこう贅沢な悩みという気がする。
2日前のガンバ戦にフル出場したオガサがベンチってのは納得。あと、植田が故障中だということで、ここ数試合はずっと三竿弟がCBを務めているらしい。
対するFC東京のスタメンは、GK林彰洋、DF室屋、吉本、丸山、太田、MF米本、高萩、橋本拳人、ピーター・ウタカ、東慶悟、FW永井という顔ぶれ。
大久保が故障で離脱中、森重も怪我で欠場ということで、こういうメンツになったらしいけれど、丸山、高萩、ウタカのセンター・ラインはいい感じでボールがつながるものの、サイドがまったく生きていない感じだった。永井とか、東とか、ほとんど存在感がない。どうせならば前田や中島翔哉(どちらも後半途中からの出場)をスタメンで使ったほうがいいんじゃないかと思ってしまった。
でもまぁ、試合の入りがよかったのはホームのFC東京のほう。最初の10分くらいはとてもいい感じでボールをまわしていた。
でもそれもアントラーズの先制点が決まるまでの話。前半16分にこちらが右サイドの崩しから先制点を奪ったあとは圧倒的にアントラーズ・ペースの試合になった。
先制点の場面は、右サイドで遠藤が柔らかいスルーパスを西に通し、これを西がスライディングしながらクロス。そこを夢生がダイビング・ヘディングでシュート。林にいったんは止められたものの、そのこぼれ球をペドロ・ジュニオールがきっちりと決めた。僕らが観ていたスタンドの目の前で繰り広げられた、それはそれは見事な連携でした。
そっから先は本当に鹿島が気持ちよくボールをまわしていた。やっぱ首位に立っているだけのことはあるわ、鹿島つえーとか思って、ホーム側のスタンドで観ていたこともあって、ちょっと申し訳なくなるくらいの内容だったのだけれど。
前半の終わりに「えっ?」と思うくらいあっけなく同点ゴールが生まれてしまう。太田宏介のアーリー・クロスに橋本拳人が頭であわせた。
この日は高萩、米本、橋本とボランチの選手が3人もいたので、僕は高萩がトップ下でプレーするのだろうと思っていたら、右サイドの攻撃的なポジションに入ったのは、高萩ではなく橋本だった。で、橋本はそこまでとくに目立つプレーもなかったし、僕の大好きな中島翔哉にベンチを温めさせて、守備的な印象の橋本を攻撃的なポジションで使うなんて、篠田監督ってどういう人?──と思っていたんでしたが。よもやその橋本に同点ゴールを──さらには逆転ゴールまでを──決められるとは驚きもいいところだった。いやはや、おそれいった。
後半の立ち上がりに高めの位置でボール・ロストしたところからウタカにドリブル突破を許し、彼らからのラスト・パスをふたたび橋本に決められた逆転弾もまたびっくりするくらいのイージーさだったし、この日の失点はどちらもそのときだけ妙に緩かった。あとはしっかり守れていただけに、悔やまれる2失点だった。
とにかく前半の出来からしたら、前半終了間際の失点にしても、後半たちあがりの逆転弾にしても、まさかという感じがあった。僕はFC東京の出来をいまいちだと思っていたので、前半早くに先制したことで、きょうは悪いけど楽勝だなぁと思っていたんだった。ところが後半早々に劣勢に立たされ、連戦の疲れからか動きも悪くなり、ロング・ボールが目立つようになって、こりゃもしかしたらこのまま終わっちゃうのかも……という展開に……。
でもこの劣勢を救ってなんとかドローに持ちこんでくれたのがペドロ・ジュニオールだった。見事な個人技。僕らがいたスタンドとは反対サイドでのゴールだったから、遠くてディテールはよくわからなかったけれど、でもその鮮やかな弾道は「うわ、こんなシュート打たれたらお手上げだわ」と思ってしまうようなものだった(FC東京目線)。おみごとでした。
後半でおもしろかったのは、永木を下げて、伊東を入れて、西をひとつ前のポジションに上げ、遠藤にボランチをやらせた大岩采配。僕は永木を下げた時点でレオ・シルバのワン・ボランチにして、攻撃の枚数を増やすのかと思ったのだけれど、遠藤のポジショニングはボランチだった。その後、その遠藤を下げて、土居を入れてからは、また違った形になっていたんだろうけれど、うろんな僕にはその後のフォーメーションは確認できず(あと一枚の交替は夢生→優磨)。いずれにせよ、大岩は思いのほか不思議な采配をふるう人だった。
まぁ、試合自体はどちらにとっても勝ち点3を取り逃した印象の、痛み分けって内容だったと思う。でも4ゴールは観られたことだし、それなりに楽しい試合でした。
そういや、この試合でFC東京にとって武藤のラストゲーム以来、2年ぶりのチケット完売だったとのこと。入場者数が4万2千人を超えたというだけあって、スタジアムに向かう道すがらも、いままでにない賑わいだった。今年の観客動員数は浦和につぐ2位だとのことだし、そのせいかFC東京サポーターの応援も以前よりも活気がある気がした。この熱気を受け止めるためにも、FC東京はもっといいサッカーをしないといけないんじゃないかって。他人事ながらちょっとそう思いました。ま、余計なお世話か。
とはいえ、篠田監督には悪いけれど、これほどの戦力を誇る人気クラブが、なぜに指導者としてこれといった実績を残しておらず、現役自体にクラブに所属していたことさえない人にチームを託しているのか、いまいちよくわからない。
(Jul 09, 2017)