オリンピック・イヤー初の代表戦は、五輪代表がアジア最強の座を争うU-23アジア選手権。日本代表はグループ・リーグでサウジアラビア、シリア、カタールと対戦する。でもって、この日の緒戦でいきなりサウジに黒星を喫する。
森保がこの試合の先発に起用したのは、GKが大迫、DFは渡辺剛、岡崎慎、古賀太陽の3人、MFは両サイドに橋岡と杉岡(どっちも名前はダイキ)、ボランチは田中碧と田中駿太(どちらもタナカ)、攻撃的なポジションに旗手と食野、そしてFWに小川航基というメンツだった。
海外組としての招集は食野のみで、その食野もクラブとの合意はグループリーグの3試合のみという制限つきらしい。そもそもなぜ食野だけ招集できたのかわからない――というか、わざわざ食野を呼ぶ必要があるのかが疑問。
いや、食野はよかったよ?――というか、食野以外にはまったく得点の可能性を感じなかった。食野のゴールは相手DFにあたってコースが変わったラッキーなものだったけれど、あれだって積極的にシュートを打っていったから生まれたものだし。ガンバのころと変わらず、その積極性は好印象。
だから食野を起用したこと自体には不満はないんだけれど、でもこのポジションには安部裕葵、堂安、久保建英と有望なタレントがたくさんいるわけで。本番ではOAで中島翔哉や南野を招集することだってできる(クラブが了承しないだろうって話だけれど)。食野をその中に加えるってことは、その分これまで主力だった誰かが外れるってことだ(まぁ「これまでの主力って誰?」って感じだけれど)。
そんな状況で――わずか3試合なんて制限まで受けながら――なぜ食野を呼んでくる必要があるのかがわからない。ま、わざわざこの局面で呼ぶのは、彼がどれだけ成長したかを確認しておきたかったってことなのか。でも試すならばもっと早く試しておけよなって思う。
今回の五輪代表は海外組が多くて、思うようにベスト・メンバーで戦えないのは気の毒だとは思うけれど、それにしたってこの局面でいまだにメンバー選考ばかりで、チームの骨格さえ固められない森保の姿勢に僕はまったく共感できない。
そもそもさ、上位3チームにオリンピック出場権が与えられるというこの大会。日本は開催国として予選が免除されているから、海外組を呼べずに負けてもノープロブレムって雰囲気だけれど、そんなことでいいはずがないでしょう?
だってこの世代にとってこの大会は、五輪出場権うんぬん以前に、アジア・チャンピンを決める最後の公式大会なわけですよ。A代表にとってのアジア杯と一緒だよね? それなのに優勝を狙わないでどうするんだよって話だ。
五輪での金メダルを狙うと公言するのならば、すべての国が本気で挑んでくるこの大会は願ってもないシミュレーションの場でしょうよ。国内での親善試合なんかより、ここでの真剣勝負のほうがチームの強化には何倍も役に立つはずだ。ならば、協会はできるかぎりの努力で本番に近い選手をかき集めて、優勝を狙いにゆくのが筋ってもんだろう。アジアで優勝できない国がどうしてオリンピックで金メダル獲れるっていうんだよ。とんだ笑い話だ。
とにかく本番まであと半年の時点で、いまだにチームの形が固まっていない――しかも本気でアジア・チャンピオンを目指しているようにさえ見えない――森保にはがっかりを通り越して怒りさえ覚える。このままグループリーグ敗退なんてことになるようならば、まじで解任すべきだと思う。
とにかく僕個人は3バックって時点でイヤなのに、この日はそれでちゃんと守れないんだから論外だ。
先制点を許した場面では、ゴール前でドリブルでマークをはがされて、逆サイドから交錯する形で入ってきた選手に見事なゴールを決められている。なんであれだけDFがいて守れないんだってあきれた。
後半の残り5分で決勝点を許した場面では、古賀のバックパスが相手への絶妙なスルーパスになってしまい、それを止めようと追った岡崎がうしろから相手の足を踏んづけてPKを献上してしまう。GKの大迫と接触する前に相手が勝手に倒れたように見えたので、VARで判定が覆るだろうと思ったら、ビデオ判定の対象は大迫じゃなくて岡崎だった。なんてこった。
そもそもなんで本番まで残り半年というこの局面で岡崎が2試合連続でスタメンなの? クラブでスタメンを確保している渡辺や古賀はともかく、岡崎はほとんど出場機会さえもらえていないのに。しかも今年は清水にレンタルされることが発表されている――つまり現時点ではFC東京の戦力としては不十分ってことでしょう? そんな選手が世界で戦えるのかって話だ。とにかく森保の選手起用には納得がゆかないことが多い。
選手交替もそう。気温が30℃を超えるなかでの試合ということで、選手の疲労も激しいだろうに、小川航基を上田綺世に替えたのが同点の後半27分。最後の2枚のカードを切って、田川亨介と相馬勇紀を投入したのが決勝ゴールを許したあとの後半ロスタイムって。どう考えたって遅すぎでしょう? もうわけがわからない。
まぁ、敗戦がひとえに森保だけのせいだとはいわない。前述したとおり決勝点は古賀と岡崎のミスからだし。前半にDFラインの裏へと抜け出した旗手がGKと一対一のチャンスを得ながら、ゴール前でスローダウンしてシュートを打てずにゴールラインを割ったシーンとか、意味がわからなかったし。
結局あれはオフサイドだったみたいだけれど、判定を受ける前にちゃんとシュートを打って終われないのが信じられない。対するサウジの選手が常に積極的にシュートを打っていたのとは対照的だ。
旗手はフロンターレへの加入が決まっているくらいだから、きっといい選手なんだろうけれど、あんなプレーをしている限りは一流のストライカーにはなれないと思うぞ。
まぁ、いずれにせよそういう選手――しかもいまはまだ大学生――をわざわざ起用しているのは森保だ。結局、責任は彼にあると思わずにはいられない。
試合内容的には日本が押している時間も長かった。大迫は二度ほどスーパーセーブをみせてチームを救ってくれたし、ダブル田中のボランチ・コンビも僕は好きだった。橋岡・杉岡の両サイド・ウィングもさすがにクラブで活躍しているだけあって存在感があった。
ただ、ゴール前での積極性ではサウジのほうが断然上だった。サウジの選手たちはちゃんとゴールを狙ってシュートを打っていた。大迫のファイン・プレーがなければ、もっと悲惨な結果になっていたかもしれない。
そういう意味では負けるべくして負けた試合って気がする。
そういえば、鹿島への加入が決まってから杉岡のプレーを観るのはこれが初めてだった。杉岡、ようこそ鹿島へ――とかいう一方で相馬はレンタル元の名古屋へ帰ってしまった。来るものあれば、去るものもある新年の初めだった。
まぁ、いずれにせよ、もう一試合でシリアとカタールが引き分けたから、現在日本はグループ最下位。もしも次のシリア戦が引き分け以下に終わったら、グループリーグ突破はほぼ絶望でしょう。U-23森保ジャパン、新年早々いきなりの正念場。
(Jan. 11, 2020)