ハンナ(ミア・ファロー)の夫エリオット(マイケル・ケイン)はハンナの妹リー(バーバラ・ハーシー)に夢中。リーも悪からず思っているうちに愛人関係に引き込まれ、同棲中だった中年の画家と別れることになる。ハンナのもう一人の妹ホリー(ダイアン・ウィースト)はオーディション落選を繰り返す芽の出ない女優。男運にも恵まれず、ハンナの前夫ミッキー(ウディ・アレン)とデートをして最低の結果に終わったりしている。そのミッキーはといえば病気恐怖症が高じて人生を儚み、ついには自殺未遂に到る始末。そんなハンナとその姉妹を巡って繰り広げられる人間模様を、こまやかなエピソードの積み重ねで描き出す好作品。ホリーの友人エイプリル役でキャリー・フィッシャーが、端役でジョン・タトゥーロが出演している。
いつもどおりあらすじもなにも知らずに見始めた僕は、最初から最後までずっとホリーが三女だと思って見ていた。ところが見終わってから妻と話をしていたら、彼女はリーが三女だという。ネットで調べてみたら彼女の言う通り、日本ではホリーが次女、リーが三女ということで意見が統一されている。ありゃ、おれはとんでもない間違いをしていたのかと思った。
でもね。正直言って僕にはリーが三女だと言われてもいまひとつぴんとこなかった。だって物語のなかで紹介されるリーの経歴を考えてみて欲しい。同棲中の画家と出会う前にアルコール依存症かそれに近い経験があり、中年の画家と同棲していて、一年前には相手からのプロポーズを望むようなシチュエーションがあったという。演劇一家にあって、さっさと自分の才能に見切りをつけて俳優の道を諦めている。少なくてもかなり人生経験は豊富な女性に思える。
一方のホリーはと言えば、女優志願でオーディションを繰り返しつつ、芽が出ないので親から堅気な仕事を紹介されたりしている。つまり、まだ人生の進路が確定していない年齢だということじゃないだろうか。ロックが好きだったりするし(趣味はよくないけれど)、キャラクター設定としては、ぜんぜんリーよりも若く感じられる。
ということでおっかしいなあと思いながらネットで英語のサイトを調べてみたところ、思ったとおり、英語圏では必ずしもリーを三女だと決めつけていないことがわかった。よく言って五分五分、印象的にはリーが次女という見方の方が多いんじゃないかという感じだった。次女、三女のような明確な言葉がない英語では、あの映画を見ただけではどちらがどちらとも言えないんだろう。実際女優さんたちの年齢ではバーバラ・ハーシーとダイアン・ウィーストは同い年だったし、ルックスでも判別しにくいものがある。そんな中、少なくても米Yahooの映画サイトでははっきりとホリーを三女と書いてあったので、どうやら僕の見方に極端な問題があったわけじゃないことがわかってほっとした。
結局、次女、三女という明確な言葉のある日本では、最初に公開された時にそういう順番で紹介されたために、以降それが定説となってしまったということなんじゃないかと思う。これには後半、リーが大学に通い始めるという展開も大きく影響している気がする。大学生なんだから一番年下だろうということで。でも前にも書いたように、それまでにあきらかになっているリーの経歴は、普通の大学生と考えるにはあまりにも波乱に富んでいる。どちらかと言うと同棲相手と別れて自宅に戻った彼女が、愛人のエリオットに触発されて学問に興味を抱き、他にやるべきこともないので大学へと通い始めたと見る方が自然だと思う。
まあ、ただこれだけあちらこちらではっきりとリーは三女と書かれているとなると、もしかしたら僕が知らないだけで、ウディ・アレン自身のインタビューかなにかで、リーとホリーの年齢設定をあきらかにするような発言があるのかもしれない。ただ少なくても映画の中では二人の年齢の上下を明白にするようなシーンはなかった。だとするならばそれを勝手に次女、三女と決めつけてしまうような紹介の仕方はいかがなものとかと、意固地な僕は思うのだった。
以上、まるで本題とは関係のない話ばかりになってしまったけれど、なにはともあれ、なかなかいい映画でした。
(Feb 29, 2004)