ドラムライン
チャールズ・ストーン三世監督/ニック・キャノン/2002年/アメリカ/DVD
TLCやジャネット・ジャクソンのプロデュースで有名な売れっ子プロデューサー、ダラス・オースティンが、自らの経験をもとにして映画化の企画を持ち込んだことから生まれたという作品。才能ある青年が挫折を乗り越えて成長してゆき、ライバルに打ち勝つまでを描くという、典型的な青春映画だ。
舞台となるのは大学のマーチング・バンド部。これが音楽部にもかかわらず、完璧に体育会系なところにこの映画のおもしろさがある。アメフトのハーフタイム・ショーなんかで観客をにぎわすのが役目の人たちだから、単に演奏ができるだけではなく、見た目でも観客にアピールできなければならない。チーム全体で意思統一の取れたパフォーマンスを実現するべく、彼らは運動部と変わらない過酷な練習の日々を送っている。新入生として入学してきた主人公デヴォン(ニック・キャノン)は、最初のうちはまったくドラムに触らせてさえもらえない。この作品で描かれる大学のマーチング・バンドという馴染みのない世界のあり方には、なかなか興味深いものがあった。
ジャンル分けをすると音楽映画の部類に入るにしては、基本的に音楽自体にはそれほど感動的ではない。マーチング・バンドの演奏というものは実際に見てなんぼ、というものだと思うし(家にいてレコードで演奏を聞きたいと思う人はあまりいないだろう)、それゆえにクライマックスのパフォーマンスに到っても怒濤の感動が押し寄せてきたりはしない。「あれ、こんなもの?」という感じで、純粋な音楽的な感動を求めてしまうと肩透かしを食う感がある。こと演奏シーンの盛り上がりにかけては、似たようなタイプの映画で言うならば、 『天使にラブソングを2』 の方が上だと思う。これはどちらかというと音楽映画というより、スポ根・青春映画として見るべき作品だ。ま、ごちゃごちゃとジャンル分けを考えたりせず、一人の天才黒人ドラマーの青春の一ページを楽しめればそれでいいんだろう。僕は基本的にこの手の映画は大好きなので、十分に楽しませてもらった。
(Mar 06, 2005)