ザ・ソプラノズ<セカンド>
デイヴィッド・チェイス製作総指揮/ジェームズ・ガンドルフィーニ/2000年/アメリカ/DVD
ファースト・シーズンでは組織のボス、ジャッキーが癌で他界し、その後釜にすわったトニーの叔父ジュニア(ドミニク・キアニーズ)が逮捕されるまでが描かれていた。セカンド・シーズンでは、獄中のジュニアのあとをトニーが引き継ぎ、ファミリーのボスとして権力を振るい始めてからが描かれる。
このシーズンのキーとなるエピソードはふたつ。ひとつはトニーの姉ジャニス(アイダ・タトゥーロ──この人はジョン・タトゥーロの従姉妹だそうだ)がニュージャーニーに戻ってきて、これまた刑期明けで戻ってきたジャッキーの兄リッチー(デイヴィッド・プローヴァル)とつきあい始め、二人してトニーの悩みの種となるというもの。もうひとつはファースト・シーズンの最後にFBIの密告者なんじゃないかと疑われたまま姿を消していたプッシー(ヴィンセント・パストーレ)が再び姿をあらわして仲間に加わるものの、実は彼がやはり密告者だったというもの。ジャニスとプッシーがともに一話目で登場して、最終回で退場するという点でも、この二つのエピソードがメインと言っていいと思う。
その他にもトニーと女性たち──母親や妻カメーラ(イーディ・ファルコ)や愛人──との関係、ドクター・メルフィー(ロレイン・ブラッコ)がトニーのカウンセリングを再開したことに悩んで自らもカウンセリングを受け始めてしまう展開、クリストファー(マイケル・インペリオリ)が映画脚本家をめざして試行錯誤したあげく、臨死体験をへて結局マフィア稼業に骨を埋める決心をするまでの顛末、メドウ(ジェイミー・リン・シグラー)の進学話などがこのシーズンの主要なエピソードだ。ファーストではやたらと存在感のあったトニーの母親は今回、コミック・リリーフとして脇役に徹している。
『ザ・ソプラノズ』の場合、『Xファイル』のような一般的なドラマとは違い、こうしたさまざまなエピソードが一話完結で順番に描かれてゆくのではないところが特徴だ。すべてのエピソードがシーズンの全体を通じて同時進行してゆく。一回の話でいずれかにクローズアップすることはあっても、その回だけですべてが語られてしまうことはまずないし、また一話のなかでひとつのエピソードだけが集中して語られることもほとんどない。どの回でもいつもいくつかのエピソードの断片が入り混じって話が進んでゆく。ゆえに一話一話になんだかとてもとりとめのない印象を受けることになる。このとりとめのなさこそが、ソプラノズの最大の特徴だと思う。
ちなみにこのシーズンのゲストでおっと思ったのは、『Xファイル』でジョン・ドゲット捜査官を演じているロバート・パトリックと、『トゥー・ウィーク・ノーティス』のアリシア・ウィット。ロバート・パトリックはトニーの学友で賭け事が大好きなスポーツ用品店オーナー役として数回出演しているのだけれど、その小市民ぶりがあまりにドゲットのイメージと違うものだから、不覚にも最後までその人だと気がつかなかった。おそまつ。
(Nov 03, 2006)