キング・コング
ピーター・ジャクソン監督/ナオミ・ワッツ、エイドリアン・ブロディ、ジャック・ブラック/2005年/アメリカ/DVD
『ロード・オブ・ザ・リング』のピーター・ジャクソンによる『キングコング』のリメイク版。
当初、僕はこの作品にあまり興味を持てなかった。33年のオリジナル版を知らないのに加え、キング・コングとティラノザウルスがにらみあっているポスターを見て、なんだかあざとく思えてしまったからだ。恐竜はすでに33年版でも出ているみたいだけれど、そんなことは知らないから、今回の作品のためのCG全盛期ならではのアレンジだと思ったわけだ。『ジュラシック・パーク』じゃないんだから、わざわざ恐竜まで出すこたあ、ないだろうと。
でも実際に観てみて、意外や意外。その恐竜の登場シーンがやたらとおもしろいのだった。本来ならば史上最大最強のはずのティラノザウルスだけれど、キング・コングとはサイズのうえでは五分。凶悪なこの恐竜に対して、キング・コングはそのぶっとい腕でパンチをお見舞いする。結果はキング・コングの圧勝だ。ティラノザウルスがパンチでぶっ飛ばされるなんてシーン、そうそうお目にかかれるもんじゃない。これはもう、恐竜と同じ大きさの類人猿が存在するとしたアイディアの勝利だろう。いや、非常に感心した。
舞台設定もいい。キング・コングが生息しているのは、太古の生物が跋扈する地図にもない孤島、スカル・アイランド(髑髏島)。そこにはいまだに恐竜が生息していて、見たこともないような巨大昆虫が飛びまくっている。キング・コングはそんな動物たちのうちの一員という位置付けだ。なので恐竜が出てくること自体に、特に違和感はなかった。
ジャック・ブラック演じる映画監督のカール・デナムが、俳優やスタッフ、それに船員たちを引きつれ、この島に乗り込んでくることになる。彼の映画の主演女優に抜擢されたのが、食うにも困る貧乏女優のアン・ダロウ(ナオミ・ワッツ)。この作品や『リング』で悲鳴をあげてばかりという印象のこの人だけれど、なるほどこのところ名前をよく聞くだけあって、青い眼が印象的な、とても綺麗な人だった。
ともかく彼ら一行が無人島だと思ってこの島にやってきてみると、そこには未開の原住民が暮らしていて、キング・コングに生贄を捧げたりしている。で、ナオミ・ワッツはその原住民に誘拐されて、キング・コングの生贄にされてしまう。残されたデナムを初めとした船員たちは、美女をそのまま残してはいけないと、ライフルを手に救出に出発するのだった。そして襲いくる恐竜や巨大昆虫のため、次々と命を落としてゆくはめになる。
たった一人の美女のために船員総出で救出に向かうという展開は、『24』のように平気で人を見殺しにする非情さに慣れてしまった目からすると、やたらとお人好しに思える。けれどここではその展開こそが
喧嘩には強いけれど、美女にはめっぽう弱い。そんな愛すべき男たちと巨大ゴリラが未知の孤島でくりひろげる冒険を、くどいほどのアクションと美しい映像満載で描いて見せた力作。『ロード・オブ・ザ・リング』に負けず劣らず、これはこれでなかなかの出来だと僕は思う。個人的には特に30年代のニューヨークを再現したシックな風景が好きだった。
(Dec 06, 2006)