24 -Twenty Four- シーズンⅣ
ジョン・カサー監督ほか/キーファー・サザーランド/2005年/アメリカ/DVD
シーズン4で薬物中毒に陥っていたことの責任を問われてCTUをくびになったとかで、今回のジャック・バウアーは、なぜか国防長官ヘラー氏(ウィリアム・ディヴェイン)の特別顧問なんていう、前よりも偉そうな身分になって登場する。それもいきなり長官の娘オードリー(キム・レイヴァー)と一夜を過ごしたあとで身繕いをしている場面から。すっきりとしたダークスーツ姿がなかなか新鮮だ。
トニーとミシェルにも前シーズンが終わったあとに紆余曲折があって、この二人は序盤はまったく出番がない(トニーはかなり可哀想な目にあっている)。ということでCTUもすっかりさま変わりしてしまっていた。支部長はエリン・ドリスコル(アルバータ・ワトソン)という女性で、知っている顔はクロエ(メアリー・リン・ライスカブ)のみという状況。
物語は、この新生CTUが早朝に発生した列車爆破事件への対応でどたばたしているところへ、ジャックが国防長官の代理として予算案の打ち合わせのためにやってくる、というところから始まる。彼がCTUにいるあいだに国防長官の誘拐事件が発生。上司と恋人をいっぺんに奪われたジャックは、現職のCTUメンバーに煙たがられるのをものともせず、強引に現場の先頭に立って、事件の解決に乗り出すことになるのだった。
今回の話の特徴はテロの首謀者がひとりだけという点。これまではだいたい最初のテロの犯人が前半十二時間が過ぎたあたりで捕まり、後半はそれを引き継いで別のテロリストが事件を巻き起こすというパターンだった。
ところが今回は違う。序盤こそ出番が少ないけれど、最初の事件の首謀者マルワン(アーノルド・ヴォスルー)が最初から最後までひとりですべてのテロを仕切っている。しかも仕掛けてくるテロ行為が規模の上でも数の上でも半端じゃない。ひとつを解決したと思うと、次にまたとんでもないものが控えていて、まさに休む間もないという感じ。ルックスは地味だけれど、これまでのシリーズで最強のテロリストだった。この人は 『ハムナプトラ』 に出ている俳優さんだそうだけれど、そちらは僕はまだ未見。
そんな手強いテロリストを相手に、四時間に一度は重大な事件が持ち上がっては解決する、というパターンが延々と最後まで続く。それに対処するジャック・バウアーの存在感は、これまでのシリーズで一番だと思った。序盤にコンビニ強盗を仕掛けちゃうあたりでは、今回もやっぱりひどい奴だとうんざりしたものだったけれど、その後はそういう「やれやれ」と思わされる行動も減って、終盤はひたすら頼りになる人という印象だった。
そうそう、お騒がせ娘キム・バウアーが不在のため、余計な脱線が少ないというのも好印象の理由かもしれない。ドリストルを始め、ちょっとなあというキャラもいるのだけれど、そういう人たちも因果応報というか、その人たちなりにつらい目にあっているので、それぞれ同情の余地がある。なんだこいつと思わされたままだったのは、副大統領くらいじゃないだろうか。たまに事件に巻き込まれる民間人──とばっちりで襲撃を受けるスポーツ店の兄弟とか、“核のフットボール”の争奪戦に巻き込まれてしまう夫婦とか──が、不必要に悲劇的な運命にあわないのもなによりだった。
まあそれでも 『24』 は 『24』 だから、やはりひどいシーンも多い。なかでも今回は特に拷問シーンの多さが目立った。それもテロリストのみならず、民間人やCTUのメンバーまで、ありとあらゆる人が拷問にあっている。CTUの拷問担当のリチャードだかなんだかが、やたらとちょこちょこと何度も出てくるので、終盤には彼の名前が出るたびに「またリチャードだ~」と、つい苦笑してしまった。
ゲストスターでおもしろいのは、1話目に登場してテロリストに悲惨な目にあわされるハッカー役のルーカス・ハース。彼は 『刑事ジョン・ブック/目撃者』 で子役のサミュエルを演じた人だそうだ。 『マーズ・アタック』 では火星人を撃退するきっかけを作ってナタリー・ポートマンといい雰囲気になる青年だったとか。
あと最後の最後に出てくる美人テロリスト、マンディ役のミア・カーシュナー。彼女はシーズン1の第1話で旅客機を墜落させたり、シーズン2の最後にパーマー大統領にバイオテロを仕掛けた女性と同一人物だった(ちょっとびっくり)。最近ではジェイムズ・エルロイ原作、ブライアン・デ・パルマ監督の 『ブラック・ダリア』 で、猟奇殺人の被害者であるブラック・ダリアその人を演じているらしい。要チェック。
(Jan 07, 2007)