天使のくれた時間
ブレット・ラトナー監督/ニコラス・ケイジ、ティア・レオーニ/2000年/アメリカ/BS録画
『クリスマス・キャロル』の昔から、拝金主義的な価値観にノーをつきつけ、人と人とのつながりにこそ幸せを見いだそうというメッセージをこめた物語というのが、英語圏ではクリスマスの定番らしい。『三十四丁目の奇蹟』もそうだし、これもそのうちの一本。ちょっとばかり社会的成功と家庭的な幸せを、対立するものとして図式的に描きすぎている嫌いがなくはないけれど、それでもまあ悪くはなかった(ただし恥かしい邦題はどうにかして欲しい)。
ニコラス・ケイジ演じる主人公のジャックは若くして一流企業の社長の座に登りつめた仕事一筋の独身男性。最高級マンションのペントハウスに住まい、クローゼットには高級ブランドのスーツとシャツがずらりと並んでいる。オペラを好み、愛車はシルバーのフェラーリ。仕事はできるし、性格もいいので、職場でもプライベートでも多くの人に敬意を寄せられ、基本的には文句のつけようのない人生を送っている。ただ唯一、いまだ独身でクリスマスを一緒に過ごす人さえいないことをのぞけば。
彼には学生時代につきあっていた女性がいた。それがティア・レオーニ演じるケイト。二人は就職が決まって、ジャックが長期研修のためにロンドンへゆくことになったのが原因で別れてしまった。それから13年後のクリスマス・イブの晩、ジャックは偶然出会ったひとりのマジカルな黒人男性(ドン・チードル)のいたずらで(?)、ケイトと別れなかったらばどうなっていたかという、もうひとつの人生を追体験させられることになる。それも住宅ローンと二人の子供を抱え、タイヤ・ショップの店員をつとめるという、彼の価値観からするとかなり敗残者的な人生を。
主演のティア・レオーニという女優さんの名前にはどこかで聞きおぼえがあると思っていたら、なんとデイヴィッド・ドゥカヴニーの奥さんだった。『Xファイル』にも一度出演している。この作品のなかで、ニコラス・ケイジが幼い娘さんから、「あなたは本当のパパじゃないわね。エイリアンね。私たちを連れて行って、変なものを移植したりするの?」と言われてしまうシーンがあるけれど、あれはもしかしたら主演女優の旦那が『Xファイル』の主役をつとめているのを意識したのかもしれない──って、いや、それはちょっと
音楽監督はティム・バートン作品でおなじみのダニー・エルフマン。この人もクリスマス映画にはうってつけだ。エンド・クレジットで、初めて聴くエルヴィス・コステロのナンバー "You Stole My Bell" がかかるのも、コステロ・ファンとしては、ちょっとしたクリスマス・プレゼントみたいで嬉しかった。
(Feb 03, 2007)