25時
スパイク・リー監督/エドワード・ノートン/2002年/アメリカ/DVD
エドワード・ノートンの演じる主人公のモンティは、仲間に裏切られて逮捕され、7年の実刑判決を下されたドラッグ・ディーラー。甘いマスクの優男ゆえ、刑務所なんかに入れられたらば、同性にレイプされて(男としての尊厳を失い?)、生きてゆけなくなる、そう思って刑務所に入るのをひそかに恐れている。この映画は、保釈中の彼がいよいよ明日刑務所に入るという最後の25時間を描いてゆく。
悪いことして大儲けをしたあげく捕まり、でもって刑務所で野郎にレイプされたら生きていけないとかいって悩んでいるというのは、なかなかふざけた話だ。でもそれがふざけた話であろうとなかろうと、そこにはその人なりの悩みと痛みがあり、それは本人のみならず、まわりのものたち、親友や恋人や親、それぞれの痛みもともなうわけで。不完全な人間たちが陥った救えない状況における痛みを共有すること。スパイク・リーはそのキャリアを通じて、常に一貫してそのような方向性を示してきた気がする。そういう意味では、これもまた実にスパイク・リーらしい映画だなと、観てみてあらためて思った。最初から最後まで、ものの見事に原作そのままという内容なのだけれど──脚本を原作者のデイヴィッド・ベニオフ自身が手がけているので、それも当然かもしれない──、それでいて、僕はこの映画から、原作の倍くらいのインパクトを受けた。やはり映像の力は大きい。好きな監督の作品だけになおさらだ。
俳優陣では、フィリップ・シーモア・ホフマン、バリー・ペッパーのふたりがモンティの親友役、ロザリオ・ドーソンが恋人役、ブライアン・コックスが父親役で脇をかためている。個人的にはおそらく初めて見る人ばかりだけれど、それぞれにいい演技を見せてくれていると思った。なかでも原作同様に救えないイジイジ高校教師、ジェイコブを演じるホフマンがいい。『カポーティ』でアカデミー賞主演男優賞を受賞するとは思えない情けなさが最高だった。いや、こういう駄目な役をきちんと演じられる演技力ゆえのオスカーかもしれない。
あと、忘れちゃいけないのが、ホフマンが思いを寄せる教え子役を演じているアンナ・パキン。この時はすでに
(Apr 08, 2007)