ザ・ソプラノズ<フォース>
デビッド・チェース製作総指揮/ジェームズ・ガンドルフィーニ/2002年/アメリカ/DVD
ファミリー内部の不協和音がさらに大きくなる第四シーズン。これまでは磐石だったトニーとシルヴィオ(スティーヴ・ヴァン・ザント)の仲までぎすぎすし始め、ファースト・シーズンにトニーが、信用できる部下が欲しいからと、わざわざイタリアから呼びよせたフリオ(フェデリコ・カステルッチオ)さえもが、カメーラに想いを寄せるようになって悩みまくったあげく、トニーに反感を抱くようになってしまう。クリスはすっかりヘロイン中毒だし、その恋人アドリアーナ(ドレア・ド・マッテオ)はFBIの潜入捜査官に弱みを握られて、密告者となる始末。前作に続き、あいかわらずのお騒がせ男ぶりのラルフは、いつ誰に殺されるかが焦点、みたいな状況になっている。
そんなトラブルメイカーたちの中に加わり、今シーズンから新しく目立つようになったのが、ニューヨーク・マフィアの幹部、ジョニー・サック(ヴィンセント・カラトーラ)。前作でニュージャージーに引っ越してきて以来、なにかと登場回数の多かったこの人が、今回はトニーたちとNYの組織とのあいだでトラブルが続くこともあって、かなり重要な役割を果たしている。
もうひとり、意外な出世を遂げるのが、ジュニアの付き人だったボビー・バカラ(スティーヴ・シリッパ)。前シーズンまでは、人はいいけれど頭はあまりよくない、典型的な脇役って感じの人だったのだけれど、このシーズンではジュニアの推薦で幹部へと昇進を果たしたり、奥さんを亡くしたりを契機に、ものすごく存在感を強めている。
おもしろいのは、今回目立っているこの二人が、どちらも極度の愛妻家だということ。ジョニーは奥さんの肥満をジョークにしたラルフを殺すと言い出すほどだし、ボビーは奥さんを失って悲しみに暮れ、立ち直るまでに数エピソードを要するくらいの激しい落ち込みようを見せる。おそらくそんな二人をクローズアップすることで、彼らとは正反対に次々と浮気を重ねるトニーの罪深さを、コントラスト鮮やかに浮かびあげようという演出なのだろう。
そんなわけで、マフィアとトニーの家庭、両方ともそろって崩壊間近という雰囲気の漂うフォース・シーズンだった。次の第五シーズンはさらに悲惨なことになるという噂。ああ、困ったもんだ。
(Jul 07, 2007)