ハッピーフィート
ジョージ・ミラー監督/2006年/アメリカ/DVD
このアニメは出来がかなり微妙。少なくても、可愛いペンギンが踊って歌う楽しげなCGアニメとか思って、小学生の子供と一緒に観始めると、肩透かしを食うことになる。なんたって吹替でも歌はすべて英語だし、いきなりフィーチャーされているのがプリンスの 『キッス』 とかだし。いまとなれば普通の曲なのかもしれないけれど、少なくても英語のわからない小学生がすんなりと受け入れられるタイプの曲じゃない。しかも主役の子ペンギンが、DVDジャケットのイラストにあるような可愛い子供のままでいるのは、最初のわずか30分たらず。その後はいきなり成長してしまって、正直なところ、あまり可愛くない。ということでこの作品、八歳のわが子にはあまり好評じゃなかった。
ただ、子供と一緒に観ようなんて思わず、英語で観たならば、そういう不満もなく、それなりに楽しめるかもしれないという気もする。少なくても、人間に捕獲された経験を持つ鳥が、自分はエイリアンに誘拐されたんだと吹聴するあたりのギャグや、アメリカのアニメの定番というべき愉快な脇役キャラ、五人組ペンギンのなんとかブラザーズの騒がしさとか、すごい笑えた。僕はその辺のギャグは大好きだ。
要するにこの映画の問題は、思いっきり子供受けを狙ったような装いのわりには、実はけっこう大人向けの内容になっているという、ターゲットとする観客像が中途半端な点にあるんだと思う。エイリアンによるアブダクションなんてネタで、子供が笑えるはずがない。そうしたディテールの描き方や、音楽の選び方は大人向け。そのくせ、メイン・ストーリーは地球に優しくというエコ・メッセージ入りの子供向けという。
そもそも歌の上手いヒロイン・ペンギン役の声優に、ブリタニー・マーフィを採用する姿勢からして中途半端だ。どうせ声優の顔なんて見せないんだから、採用するならば、まず歌唱力ありきでしょうに。そりゃブリタニー・マーフィは、女優にしてはなかなかの歌いっぷりだけれど──クイーンの 『愛にすべてを』(Somebody to Love) を熱唱していて、ボーナス・ディスクではそのレコーディング風景が見られる──、 『ドリームガールズ』 のジェニファー・ハドソンを観ちゃったあとじゃ、カラオケの上手なお姉さんくらいにしか思えない。かりにもミュージカルを名乗るんならば、ちゃんとした歌で観客を満足させて欲しかった。
ということで、映像は見事だし、それなりに楽しませてはもらったものの、そうした中途半端さがひっかかって、素直にほめる気になれない作品だった。
ちなみにボーナス・ディスクに入っているプリンスの 『ソング・オブ・マイ・ハート』 のビデオクリップは、踊る子ペンギンをフィーチャーして、映画のシーンを編集しただけのもの。曲もペンギンもとても可愛いけれど、殿下御本人は登場していなくて、プリンス・ファンとしては、やっぱりちょっと残念だった。
(Aug 06, 2007)