ザ・ソプラノズ<フィフス>
デヴィッド・チェイス総指揮/ジェームズ・ガンドルフィーニ/2004年/アメリカ/DVD
地獄絵図ふうの強烈なデザインのパッケージに、「かつてない残酷な展開が待ち受ける」という宣伝文句。『ザ・ソプラノズ』 のシーズン5はいったい、どんな大変なことになっちゃているのかと心配しながら観始めてみたところ、これが意外とあっさりとした内容だった。少なくても僕が勝手に想像していたような、ファミリー内の摩擦が頂点に達して、次々と仲間うちでの殺し合いが始まったり、ニューヨークとの抗争が泥沼化して、死体が山積みになる、といったような悲惨さはなかった。ある重要キャラクターが命を落しはするものの、全体的な雰囲気としては、前の二つのシーズンよりもおとなしめな印象さえ受けた。まあ、そんな風に思うのも、単に僕がこのドラマの滑稽かつ悲惨な語り口に慣れちゃったからなのかもしれないけれど。
このシーズンの一番の目玉は、 『ファーゴ』 の「変な顔の男」として有名なスティーヴ・ブシェミが、トニーの従兄弟の役でレギュラー出演していること。もとより個性的な俳優さんではあるけれど、このドラマのなかでも異色のキャラとして、存分に存在感を発揮している。当然のごとく、この人が今回のシーズンのキーマンだ。
大物俳優といえば、十一話目でトニーが見ている夢のシーンには、アネット・ベニングが登場して、トニーを罵倒していたりする。彼女の役柄はなんと、メドウのフィアンセの母親──と見せかけておきながら、実はその役を演じているアネット・ベニング自身というひねった役どころ。そう言えば、このドラマには以前にも、ジャニーン・ガロファローやダイアン・アボット、ジョン・ファヴローといった渋めの俳優たちが、カメオ出演していた。こうしたゲストの豪華さは、このドラマが業界内でも高い評価を得ている証拠なのだろう。
ささやかなところでは、前のシーズンの終盤でバカラにアプローチをかけていたジャニスが、このシーズンが始まったとたん、いきなりバカラ夫人の座に収まっていたりするのには、ちょっとびっくりした。
(Sep 11, 2007)