このドラマ、セカンド・シーズンになって、ずいぶんとたくさんの方向転換を行っている。というよりも、前シーズンで築きあげた世界観をいったん反故にした上で、さらに派手なSFドラマに仕立て上げようとして力及ばず、失敗してしまいましたとでもいうような内容になっている。
ファースト・シーズンには、ふたつの柱があった。一つめはマックス(ジェシカ・アルバ)とローガン(マイケル・ウェザリー)の恋の行方で、二つめはマックスと、離れ離れになった仲間のジェネティック(遺伝子操作で生み出された超人兵士)たちの逃亡劇。セカンド・シーズンでは驚いたことに、このふたつを両方とも放棄してしまっている。
マックスとローガンのカップルについては、ファースト・シーズンの最後でいったんは結ばれたのだから、セカンドではもっと親密でホットな関係になるかと思えば、さにあらず。ローガンと再会したマックスは、アイズ・オンリー(テレビ放送をジャックして社会の不正を告発するローガンの通り名)の暗殺を謀る政府により、彼の遺伝子だけに作用する特別なウィルスに感染させられていて、二人は手をつなぐことさえできないという、あらたな展開が待っている。
ラブ・ロマンスにはカップルの邪魔をする障害がつきもだとはいえ、この設定はかなり強引だ。おかげで二人の関係はファースト・シーズンのとき以上に煮え切らないものになってしまった。またローガンに関しては、あらたにアレック(ジェンセン・アクレス)という二枚目キャラがレギュラーとして加わった分だけ、影が薄くなってしまった感が否めない。結果、恋愛ドラマとしての側面は、かなりおざなりな印象になってしまっている。
一方でジェネティックに関する描き方については、それどころじゃない変化がある。
身体能力の点でのみ超常的だったファースト・シーズンとは一転して、セカンドでのジェネティックは半人半獣、超能力者、サイボーグなど、フリーキーなキャラクターが百花繚乱。もはやマックスの昔の仲間なんてどうでもいいと言わんばかりの状況を呈している。特に半人半獣タイプのキャラの導入は、シリーズ終盤で大きな意味を持ってくる。
彼らを追う側にも大きな変化がある。前シーズンの最重要人物だったライデッカー(ジョン・サヴェージ)は、研究所の崩壊とともになし崩し的にお役ご免となり、マックスらを追跡する役目は、なんの説明もないまま登場したエイムズ・ホワイト(マーティン・カミンズ)という男に引き継がれるのだけれど、実はこの人が単なる捜査官などではなく、何千年もの歴史を誇る超人系秘密結社の一員で、ジェネティックの研究はその組織に絡んだなんらかの陰謀であったという、あらたなる大風呂敷が広げられる。
これらの大胆な設定変更により、SFドラマとしてはファースト・シーズンよりも格段に派手になったとは思う。ただ、それでドラマがその分おもしろくなったかというと話は別。不用意に広げた風呂敷が大きすぎて、収まりがつかなくなってしまっている。たとえばマックスたちの生みの親として、あらたにサンドマンなる科学者の名前が取りざたされるようになるのに、この人の正体は結局最後まで観てもあきらかにならない。そのほかにも、さまざまな伏線のほとんどが解決しないまま、宙ぶらりんで終わってしまっている。おかげで観終わってもすっきりした気分になれず、もの足りなさが残ってしまった。
1作目には登場しなかったミュータントや超能力者を登場させ、SFっぽさを強調したあげくに、収まりがつかなくなってB級感が生じてしまっている点において、この 『ダーク・エンジェル』 のセカンド・シーズンは 『猿の惑星』 シリーズの2作目以降に通じるものがあると思う。話の派手さやスケール感からすると、こちらのほうが、よりジェームズ・キャメロンっぽい気はするし、なかにはおもしろいエピソードもそれなりにはあったけれど、シーズン通じての全体の出来は、ファースト・シーズンのほうがよかった気がする。
(May 18, 2008)