ゴッドファーザー
フランシス・フォード・コッポラ監督/マーロン・ブランド、アル・パチーノ/1972年/アメリカ/DVD
映画史上に残るギャング映画の至宝ともいうべき作品──なのだけれども。
かれこれ二十年近く前の話ながら、僕はこの映画を観る前に、マリオ・プーヅォの原作を読んで、そのおもしろさに感服しまくっていたので、両者の比較で、映画の印象がいまいちになってしまっていた。まあ、いまになって観直してみると、この映画の出来映えのよさには、なるほどと思うところがあるし、いま原作を読んで、かつてのような興奮を味わえるかというと、それはそれであやしいところだけれど、それでもやはり最初に感じたもの足りなさは、今回もやはりつきまとってしまっていた。
僕の不満は、とにかくマイケルの内面が見えない点、これに尽きるのだと思う。原作ではマフィアの家に生まれたことに反発していた彼が、最終的には父親のあとを継ぐことになるまでの葛藤が、きちんと描かれていた。というか、それこそがこの作品の一番の読みどころだと思った記憶がある(まあ、昔のことを忘れまくっている男の記憶だから、かなりあやしいですが)。
ところがこの映画版からは、そういった彼の内面性がまったく読み取れない。そうとうボリュームのある原作を映画化するにあたって、原作者であり脚本家でもあるプーヅォは、あえてマイケル個人への言及を最低限にとどめ、コルレオーネ家の家族史へと内容を絞ってみせたという印象がある。それでもおよそ3時間という長さになっているのを考えれば、それはおそらく正解だったのだろう。
でも、やはり僕には原作にくらべて、この映画のマイケルはあまりに魅力に乏しいように思える。とくに彼がイタリアから帰国して、いきなりケイに結婚を申し込むくだりなんて、いったいなんじゃそらって感があった(そういえばケイを演じているのは、若き日のダイアン・キートンだったんですね。気がつかなかった)。この一点を取っても、僕にはこの映画が完璧だとは思えないのだった。
まあ、ただ単に映画よりも小説が好きな男ゆえの少数意見という気もする。
(Sep 06, 2009)