ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破
庵野秀明監督/2009年/日本/新宿バルト9
子供がはじめての林間学校へ出かけていって、この週末は珍しく夫婦水入らずだった。で、せっかくだからなにか珍しいことをしようということになり、ちょうど映画の日だったので、大ヒット中のエヴァ劇場版・第二弾を観に行ってきた。
僕が先日の 『序』 の感想で「続編も観てみたくなった」と書いたのを見たうちの奥さまから「じゃあ行こう」と誘われて、ついついOKしてしまったのだけれど──そういえば旧映画版も同じようにして観にいったんだった──、あとになって冷静に考えてみれば、わざわざ映画館に足を運ぶのならば、スパイク・リーの 『セントアンナの奇跡』 のほうが優先順位は上だったなあと思ったり。そもそもせっかく夫婦水入らずなんだから、もっと大人らしい時間の過ごし方もあるだろうに、よりによってエヴァを観にいってしまうってのも、どんなもんかと思ったり……。
そんな風に感じてしまったのも、この劇場版第二弾が、思っていたほどのインパクトを与えてくれなかったからだ。
ほぼテレビ版の流れを踏襲していた第一作目 『序』 に対して、『破』 と題したこの第二作は、そのタイトルどおりに大幅な変更があるという噂だったので、どれくらい「壊れている」のか楽しみにしていれば、これが思っていたほど壊れていない。たしかに、かなり大胆な変更や衝撃的なシーンは加えてあるけれど、基本的な流れ自体はテレビ版と同じままで、ディテールを大きくいじった感じ。
で、そうした変更によって作品の価値が上がったかといえば、正直なところ疑問だった。単に物語としての質ということでいえば、僕にはテレビ版のほうが高いように思える。とくに今回の話の中心となるのが、エヴァ参号機の悲劇やミサトさんの名セリフ、「使徒を食ってる……」など、テレビ・シリーズの白眉というべきエピソード群だけに、それをアレンジして、似て非なるものにしてしまったことに対しては、そこはかとない失望感が否めなかった。クライマックスの戦闘シーンにおける歌の使いかたなども、個人的には興ざめはなはだしかったし。
でも、じゃあこの映画版がつまらなかったかといえば、そんなこともない。前作同様、格段にグレードアップした映像はやはり刺激的だし、テレビ版との違いも、もちろんそれ自体が見どころだ。つっこみどころ満載で、おもしろかったのはたしかなところ。ただ、単にテレビ版と劇場版を比べて、どちらが好きかと問われれば、僕としてはテレビ版と答えざるを得ないという、そういう作品。おそらく大半のファンにとっては、この画質でもってテレビ版をまるまるリメイクして、ラストだけ作り直しもらったほうが、よほど嬉しかったんじゃないだろうか。
まあ、いろいろ思うところはあったけれど、なにを書いてもネタばれになってしまうので、これだけにしておきます。なんにしろ、僕はそれほどエヴァに対する思い入れが深くないので、これを観終わった時点で、次回作はもう劇場で観なくてもいいやって気分になってしまった。
――とかいいつつ、喉もと過ぎれば熱さを忘れるで、そのころになったらまた、うちの奥さんにそそのかされて、観にいってしまいそうな気もするけれど。
(Aug 03, 2009)