バーン・アフター・リーディング
ジョエル&イーサン・コーエン監督/ジョージ・クルーニー、フランシス・マクドーマンド/2008年/アメリカ/BS録画
コーエン兄弟がスパイ映画を撮るとこうなるんだぞというような作品。おそらく当初のコンセプトはスパイ映画だったんだろうけれど、結果としてできた作品がまったくスパイ映画と呼べない内容になっているところが、らしいというか、おかしいというか……。
しかし、これくらい豪華なキャスティングで、これくらいどうしようもない話を撮るってのは、考えようによっては贅沢きわまりない気がする。
なんたって主要キャストには、ジョージ・クルーニー、フランシス・マクドーマンド、ブラッド・ピット、ジョン・マルコヴィッチ、ティルダ・スウィントンという、オスカー受賞者およびその常連さんがずらりと勢ぞろいしているんだから(地味なところでは、スポーツジムのマネージャー役のリチャード・ジェンキンスという人もノミネート歴ありとのこと)。
コーエン兄弟はこれだけの名優たちに、そろいもそろって「あんた、それじゃ駄目じゃん」て言いたくなるような役ばかりを演じさせている。
ジョージ・クルーニーは女性とベッドインすることしか頭にないような浮気男。
フランシス・マクドーマンドは美容整形に憧れる出逢い系サイトの常連さん。
ブラッド・ピットはただのバカ青年(思いがけない退場シーンにびっくり)。
ジョン・マルコヴィッチはCIAを頸になった引きこもりの分析官。
ティルダ・スウィントンはジョージ・クルーニーと浮気中のその妻。
これらの人々それぞれの自分勝手な思惑がからみあって、なんだかなぁという、しょうもない事件が巻き起こる。
ある意味じゃ、『ファーゴ』 や 『ノーカントリー』 に近いものがあるんだけれど、あれらの作品にアカデミー賞をもたらしたシリアスさの代わりに、ここでは馬鹿ばかしさが前面に出ている感じ。なんかもう救われねえなぁと苦笑するしかないって作品だった。
それにしてもブラッド・ピットの若々しさには驚く。この映画の彼は、とても四十代なかばを過ぎているとは思えない。彼ほどのネーム・バリューがあってなお、あの貫禄のなさを堂々と売りにしてるってのは尊敬に値する。
(Mar 02, 2010)