2011年1月の映画

Index

  1. シャーロック・ホームズ
  2. サマーウォーズ
  3. Mr.ディーズ

シャーロック・ホームズ

ガイ・リッチー監督/ロバート・ダウニー・ジュニア、ジュード・ロウ/2009年/イギリス、アメリカ/BD

シャーロック・ホームズ [DVD]

 この映画、僕は最初に予告編を観た時点では、あまり関心を持てないでいた。アクション・シーンだらけのその予告編が、あまりに僕の抱いているシャーロック・ホームズのイメージとかけ離れていたからだ。なおかつ、ガイ・リッチーの作風が十九世紀という時代設定とうまくマッチするのかも、いまいち疑問だった。
 でも、いざ観てみたら、これがかなりおもしろい。やはりホームズやワトソンのキャラクター・イメージは原作とはずいぶん違うと思うけれど、でもそれはそれで違った魅力があるし、いかにもガイ・リッチーらしい緩急のついた演出も、意外にその物語世界にバシッとはまっていた。
 なにより感心したのは、アクション映画風でありながら、しっかりミステリとしての魅力を備えている点。確かにアクション・シーンは多いし、物語はオカルトじみているけれど、それでも最後にはちゃんとすべての謎があきらかにされる。一見、肉体派的なホームズの格闘シーンまでが、じつは彼の頭脳派たる部分に支えられている──いきあたりばったりの動物的な感で戦っているのではなく、どのように敵を倒すか、あらかじめ計算し尽くした上で戦っている──ことがわかるよう演出されているのには、なにより感心した。それでこそホームズ。
 ワトソンがホームズに対してやたらと強気なのには、やや違和感を覚えたけれど、彼が戦争帰りの軍医だという背景を考えれば、それは決しておかしなことではないような気もするし。ホームズの次男坊的なエキセントリックさにしても、彼のアウトローぶりを現代的な角度から視点を変えて見ただけと取れば、それほど大きく逸脱しているわけではない気がしてくる。
 ということで、予想に反して僕はこの作品がとても気に入った。いかにも続編ありって感じで終わったと思ったら、なんでも年内には早くも続編が公開されるらしい。それはそれで楽しみだ。
(Jan 19, 2011)

サマーウォーズ

細田守・監督/声優・神木隆之介、桜庭ななみ/2009年/日本/レンタルDVD

サマーウォーズ スタンダード・エディション [Blu-ray]

 あこがれの先輩のおともで、彼女の田舎へついていった数学の天才少年が、思わぬことからヴァーチャル・ワールドでの大事件に巻き込まれるという話。
 アカデミー賞の候補になるんじゃないかという噂もあったので、どれくらいおもしろいものかと思って、いまさらながら観てみたら、まったく思ってもみないような話でびっくりだった。田舎のあぜ道で女の子が仁王立ちしているポスターからはとうてい想像できないような内容だった。
 そもそもオープニングがCGだった時点ですでに予想外。まちがって違う映画をレンタルしちゃったのかと思った。昔ながらのセル・アニメで描かれる日本の田園風景における家族劇と、もうひとつの舞台となるコンピュータの仮想世界でのCGバトル、このふたつのミスマッチな世界を上手に組み合わせたアイディアがおもしろかった。こりゃまた観たくなるかもしれない。
 ただ、難があるとしたら、セル・アニメの部分の作画への手のかけ方がいまいちなこと。 キャラクター・デザインをしているのは、エヴァンゲリオンと同じ貞本義行だというけれど、絵はエヴァのほうがよっぽどきれいだ。なんだか同じ人の作画とは思えないくらい。劇場版映画がテレビ版に絵で負けてどうすると思ってしまった。
 もしかしてCGのほうに力を入れすぎて、セル・アニメのほうまで予算がまわらなかったんだろうか。おもしろい映画だったので、そこんところはやや残念かなと。ジブリとまではいかなくても、あともう一歩がんばって欲しかった。
(Jan 29, 2011)

Mr. ディーズ

スティーヴン・ブリル監督/アダム・サンドラー、ウィノナ・ライダー/2002年/アメリカ/レンタルDVD

Mr.ディーズ コレクターズ・エディション [DVD]

 フランク・キャプラの『オペラハット』のリメイクで、ヒロインがウィノナ・ライダーだというので、両者のファンとしては、そりゃ観ておかないとと思った作品。
 この映画、田舎出の人のいい兄ちゃんが億万長者の遺産相続人になったことからまきおこる騒動を描いている点はキャプラ版と同じだけれど、味つけはずいぶんと異なる。
 なんたってあちらの主演は天下の二枚目ゲイリー・クーパーで、こちらはコメディアンのアダム・サンドラー。彼が特にふざけた演技をしているわけではないけれど、それでも演出のベースはもろにコメディ。ウィノナ・ライダーによるプロレスまがいの乱闘シーンなんかもあって、終始おちゃらけている。クライマックスもとってつけたようで、キャプラ的な人生賛歌の高みにはまるでとどいていない。
 ということで、これにオリジナルと同じ感動を求めてしまったら駄目だと思う。リメイクだということはひとまず置いて、あくまで一編のどたばたコメディとしてならば、まあまあ楽しめるかなと。助演もジョン・タトゥーロやスティーヴ・ブシェミ、ピーター・ギャラガーなど、あくの強い演技派ぞろいだし、僕にとっては大好きな俳優たちのくだけた演技が見られただけでも、それほど悪くない映画だった。
 とりあえず、ジョン・タトゥーロがアダム・サンドラーの足を火かき棒だかなんだかで突き刺すシーンは爆笑もの。
(Jan 29, 2011)