第9地区
ニール・ブロムカンプ監督/シャールト・コプリー/2009年/アメリカ、南アフリカ他/BD
これに関しては前評判がよかったので、ちょっと期待しすぎた感があった。決してつまらなかったわけではないし、ドキュメンタリー・タッチの導入部とか、スピーディーなアクションとか、ひょんなことからワン・アンド・オンリーな存在となる主人公が漂わすアンチ・ヒーローな悲壮感とか、冴えているところもたくさんあって、評価が高いのはわからなくもないんだけれど、それでもあらすじは荒唐無稽だし、残酷シーンは多いしで、いまいち乗りきれなかった。
だいたいにして、理屈屋の僕は、巨大UFOを何年間も空中に浮かんだままにさせたり、人を一瞬で消し去るほどの破壊力を持った武器が作れる宇宙人が、地球人に難民扱いされてスラム街に隔離される状況に甘んじるというシチュエーションが、すんなり受け入れられない。宇宙人の宇宙船の燃料を顔にかぶっただけの主人公が、なぜか宇宙人にメタモルフォーゼしてしまう(しかも手だけが異常に速く)って展開も、気分的にすっきりしないし。ティム・バートンの映画のように、はじめからコメディとして開き直っているんならばともかく、これは終始シリアスなぶん、そういう筋の通らなさが粗として目についてしまった。
あとね、やっぱ宇宙人がかわいくない。字幕では「エビ」と呼ばれていたけれど、あれはどちらかというとバッタでしょう(ちなみに英語では「Prawn」とのこと)。その昆虫的なデザインのせいで、あまりに共感できなさすぎる。あれじゃ彼らを隔離したくなるのも、もっともに思えてしまう。この宇宙人でアパルトヘイトを引きあいに出されたんじゃ、南アの人もかわいそうだ。できればもうちょっと同情の余地のある宇宙人にして欲しかった。
でもまぁ、あの宇宙人だからこそ、なんともいえない味わいが生まれているって部分もなきにしもあらず……だろうか。
(Feb 21, 2011)