ドアーズ まぼろしの世界
トム・ディチロ監督/2009年/アメリカ/WOWOW録画
このドアーズのドキュメンタリーは、けっこう出来が微妙。なぜって純度100%のドキュメンタリーではないから。
この映画の冒頭には、ジム・モリソンらしき男が交通事故を起こして大破した車からよろよろと抜け出し、人の車を盗んでドライブをつづける、というあきらかなフィクション映像がフィーチャーされている。彼が運転するラジオから流れてくるのは、ジム・モリスンの死亡ニュース。どうやらこの映画はこの部分で、ジム・モリスンは実は死んでないかもしれないんだぞ、ということをほのめかしているらしい。
「らしい」なんて書くのは、その辺のことがはっきりと描かれていないから。僕が寝ぼけて見逃したのでなければ(この日は3本のドキュメンタリーをつづけて観て、このころにはいい加減、集中力を欠いていたので、その可能性もなきにしもあらずだけれど)、この映画の中では、ジム・モリソンの死亡に関しては、いっさい説明されていない。
その部分をあいまいにして、なおかつ偽モリスンの映像をフィーチャーすることで、ヒーローの死を謎のままにしておこう……という演出意図なんだろうか。
なんにしろ、僕はそこが気に入らなかった。本物と偽者の映像が一本の映像のなかで混ざって出てくるという構造にすっきりしない。ドキュメンタリーなのに、いきなり偽物を見せられて喜ぶ人はいないと思う。1時間半と短めの映画だけに、そんな余計な映像を見せているひまがあるならば、もっとドアーズを見せてくれと言いたくなる。
ジョニー・デップがナレーターを務めているってんで話題になったり(言われてみないとわからない)、フィクションが盛り込まれていたり。この映画はドキュメンタリーにしては、作り手の作為が強く出すぎていると思う。そこが鼻について、僕はいまいち楽しめなかった。
ドアーズの貴重な映像をまとめて見られる作品だけに、余計な雑音が入った感じがして、どうにももったいない。
(Mar 06, 2012)