オリエント急行殺人事件
ケネス・ブラナー監督・主演/ミシェル・ファイファー、ペネロペ・クルス、デイジー・リドリー/2017年/アメリカ/WOWOW録画
ケネス・ブラナーが自らポアロを演じて監督もつとめたアガサ・クリスティーの代表作の劇場リメイク版。先月観たのに感想を書くのを忘れていた。
シドニー・ルメット監督の74年バージョンの出来がいいからだろうか。この映画はその先達との違いを引き出すことに気を取られすぎて、いささか奇をてらいすぎてしまったような感がある。
ケネス・ブラナー演じる名探偵ポアロのキャラクターは、よくいえば新しい。悪くいえばちっともポアロらしくない。
だってあのポアロが容疑者を追っかけて走り回ったり、ピストルを振りかざしたり、女性の写真に向かって愛をささやいたりするんですよ? そんなのあり?
トレード・マークの口髭もこっけないほどに大きいし、ここでのポアロはクリスティーのそれとは違った、アメコミ調にアレンジされたニュー・バージョンだと思う。
いってみればガイ・リッチーの『シャーロック・ホームズ』と同じ系統。でもガイ・リッチーのホームズの場合は原作から乖離したアクティヴさが見事にはまっていたけれど、こちらの恋するポアロにはどうにも「コレジャナイ」感が否めない。オリエント急行に乗る前に原作にはない寸劇をはさんでみせたもの僕としては蛇足に思えた。
でもまぁ、いろいろつっこみどころのある作品だけれど、僕はこの映画、それなりに好きだったりする。原作と比べると違和感はあれど、そのぶんリミックス・バージョン的なおもしろみがある。
出演している俳優陣もルメット版に負けずに豪華だ。ミシェル・ファイファー、ペネロペ・クルス、デイジー・リドリー(『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』のレイです念のため)、ジュディ・デンチ、ウィレム・デフォー、そしてジョニー・デップと、これだけの俳優が一堂に会しているだけでも一見の価値あり。
あと、オリエント急行が雪山を駆け抜けるシーンなど、CGあればこその映像美もたっぷりと楽しめる。長くなりがちなミステリにもかかわらず、上映時間が二時間足らずとコンパクトなのも好印象。これだけの内容にもかかわらず、あまり評判がよくないのは、やはりリメイクゆえなのか……。
まぁ、とりあえず続編(『ナイルに死す』?)の噂もあるようなので、この新生ポアロがこの先どんな活躍を見せてくれるのか、つづきを楽しみに待ちたい。
(Feb. 27, 2019)