2019年3月の映画

Index

  1. アントマン&ワスプ
  2. キャプテン・マーベル

アントマン&ワスプ

ペイトン・リード監督/ポール・ラッド、エヴァンジェリン・リリー/2018年/アメリカ/Amazon Prime Video

アントマン&ワスプ (字幕版)

 今年いちばんの注目作『アベンジャーズ/エンドゲーム』の劇場公開まであと一ヶ月。さすがにそれは映画館で観ようと思っているので、となれば、直近のマーベル作品二本もその前に観ておかないわけにはいかない。
 ということでまずは『アントマン』シリーズの第二弾。これはAmazonで配信版をレンタルした(なぜかiTunesで借りるより100円安かったので)。
 今回の話は『シビル・ウォー』での大あばれの責任を問われた主人公のアントマンことスコット・ラングが政府から二年間の自宅軟禁を受けている、という設定で始まる。
 知らないうちにピム博士&ホープの親子(マイケル・ダグラスとエヴァンジェリン・リリー)も政府から追われる身になっていたりするし、僕のようにMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)の流れがきちんと追えていない人間にとっては、いきなりなぜそんなことに?……と思わないではいられない展開。
 でもまぁ、そういう細かいことがわからなくても、たいして困らずに楽しめちゃうのがマーベル作品のいいところ。この映画の場合、そうした伏線のみならず、量子がどうしたという科学的な部分もちんぷんかんぷんだけれど、それでも特に問題なく楽しむことができた。
 前作『アントマン』がそうだったように、基本コメディ・タッチなのはこの新作も同様。一作目では笑いがやや空回りしているように感じてしまったけれど、今回はそうした作風や登場人物になじみが出てきたせいもあってか、前作よりも素直に笑いながら観ることができた。とくにアントマンの友達ルイスを演じるマイケル・ペーニャのマシンガン・トークがやたらとおかしかった。
 物語は量子の世界に入り込んで死亡したと思われていたホープの母親(なんとミシェル・ファイファー)が生きているかもしれないから確かめようという話と、ドラえもんの便利グッズ的なピム博士の携帯ラボを狙う人たちの争奪戦がふたつの柱になって進んでゆく。
 『ブラックパンサー』同様にアベンジャーズのキャラはまったく出てこないので、これまた独立性の高い作品だなぁと感心してみていたら、最後の最後、マーベルお約束のエンド・クレジットのあとにとんでもないシーンが……。
 あぁ、それで『インフィニティ・ウォー』にはアントマンは出ていなかったのかと大いに納得しました。マーベルすげえ。
(Mar. 24, 2019)

キャプテン・マーベル

アンナ・ボーデン&ライアン・フレック監督/ブリー・ラーソン、サミュエル・L・ジャクソン/2019年/アメリカ/ユナイテッド・シネマとしまえん

Captain Marvel The Official Movie Special

 この映画、『アベンジャーズ/エンドゲーム』のひとつ前の作品でなかったら、わざわざ映画館で観ようとは絶対に思っていなかったと思う。
 だって地味でしょう? 誰ですが、キャプテン・マーベルって。
 『ブラックパンサー』も地味だったけれど、あちらが『シビル・ウォー』で顔出しを済ませていたのに対して、こちらはその正体がまったく不明なまま(少なくてもアメコミ知識ゼロの僕らにとっては)。派手なコスチュームを着た女性が仁王立ちしているポスターを見て、これはおもしろそうだと思う人ってあまりいないのではないかと思う(そんなことないですか?)。
 でもって時代設定は1990年代で、アベンジャーズ以前を描くという。それならわざわざ『エンドゲーム』の前に観ておかなくてもいいんじゃん? とか思いつつ、でもまぁ『インフィニティ・ウォー 』のラストになにやらそれらしいほのめかしがあったからなぁ、とりあえず観ておかないわけにはいかないよなぁ……と思って、なんとなく惰性で映画館へと足を運んでみたらば。
 これが予想外のおもしろさだった。期待値が低かったせいか、思いのほか盛り上がってしまった。
 この映画、まずは冒頭のエピソードが宇宙を舞台にしているところに意外性がある。え、キャプテン・マーベルって宇宙人なの?──というのは、実は彼女自身にもわからない(過去の記憶を失っているので。そもそもこの時点ではキャプテン・マーベルなんて呼ばれていない──というか、最後まで呼ばれなかった気がする)。
 でもってそんな彼女ヴァース(ブリー・ラーソン)がわけあって地球に降り立ち、若き日のニック・フューリー(サミエル・L・ジャクソンがCG加工で若返ってんのがすごい)と出会って、過去の記憶につながるある人物の痕跡を辿って行くというのが前半のだいたいのあらすじ。
 この映画の特徴は、そんな主人公の自己探求譚を、これでもかというコッテコテな90年代ロックをBGMに描いてみせた点。でもってそこが僕に対しては特にアピールが高かった点でもある。
 自分が二十代のころに聴いていたガービッジやノー・ダウト、ニルヴァーナ、ホールなんかの代表曲に乗せて、ナイン・インチ・ネイルズのTシャツに革ジャン姿の美女がハーレーをかっ飛ばすなんてシーンをみせられたら、そりゃニヤニヤせずにはいられないだろうって話で。
 これまでブリー・ラーソンって特別に美人だとか、可愛いとか思ったことがないんだけれど、でもこの映画の彼女はじつに凛々しくて格好いい。彼女がオスカーの主演女優賞を獲った『ルーム』(テーマが苦手でこれまで観る気になれないでいた)も、この映画のおかげで観てみたくなった。
 まぁ、物語自体にはそんなに意外性はないし、主人公も過剰に強すぎるとは思うんだけれど――彼女がいればサノスなんて一発でKOできちゃうんでは?――それでもそういうところも含めて安心して楽しむことのできる、おもしろい映画だった。
 そうそう、あと、アベンジャーズ(復讐者)がなにゆえにアベンジャーズと命名されたのか、その理由があきらかにされるという意味でも実は重要な作品です。
 これを観てますます『エンドゲーム』が楽しみになった。
(Mar. 31, 2019)