最強のふたり
エリック・トレダノ監督/フランソワ・クリュゼ、オマール・シー/2011年/フランス/Amazon Prime Video
iMDBのトップ250で上位(現在40位)に入っているので観てみようと思った作品。
なんでも東京国際映画祭でグランプリをとって、日本で上映されたフランス映画では興行成績が歴代一位なんだそうだけれど、そんな人気作とはつゆ知らず。それどころか、フランス映画ということさえ知らず、ずっとアメリカの映画だと思い込んでいて、観初めてから、「え、英語じゃないのか!」と驚いたくらいだった。
アメリカの作品だと思い込んでいたのは、この映画のあらすじ――全身麻痺の大富豪が酔狂で雇った黒人の介護人と深い友情を育んでゆくという実話ベースの物語――がいかにもハリウッドっぽかったから。
いざ観てみたら、音楽の使い方なんかは、いかにもフランス映画って感じだけれど、作品全体のテイストはこれまでに僕が観てきたフランス映画のなかでは、もっともアメリカンなタッチだった。つまりとても観やすかった。
この手の作品だと主人公のふたりが親しくなったあとで喧嘩別れして仲直りして……みたいな話になりそうなところだけれど、この映画の場合そうではなく、お互いが最初から最後まで相手を尊重しあって良好な関係を築いているところがいい。観ていて気持ちいい。
黒人のドリス(オマール・シー)はそもそも介護人になりたくてフィリップのもとを訪れたわけではなく、たんに失業保険をもらうために必要な就活の実績を作るため、最初から不採用になるつもりでフィリップ(フランソワ・クリュゼ)のもとへとやってきた前科者だ。
フィリップはそんな彼に興味を持ち、介護人に雇って自分の面倒を見させる。実家を追い出されて住む場所にも困っていたドリスは、豪邸での住み込みの仕事と大富豪の挑発の言葉につられて、その仕事を引き受ける。
ただ、もとからそんな仕事に興味のないドリスの態度はいたってニュートラル。相手が障害者だからといって大げさに同情を寄せたり、媚を売ったりしない。自分を対等に扱う、いたって自然体のドリスに好意を持ったフィリップは、周囲の心配をよそに、日々ドリスとの交友関係を深めてゆく。
生まれも育ちも年齢も肌の色も違うふたりが、そんなお互いの違いを超えて友情を育んでゆく。この映画はそんないかにも感動的な話を、あまりべたべたしない絶妙な距離感の演出で描いてみせる。
なるほど、iMDBの好評価や東京国際映画祭のグランプリも納得のいい映画でした。
(Aug. 13, 2019)