ザ・ファイブ・ブラッズ
スパイク・リー監督/デルロイ・リンドー、クラーク・ピータース/2020年/アメリカ/Netflix
今月はアカデミー賞の授賞式があるそうなので、せっかくだから、その前にネットフリックスで観られる候補作品を観ておこうと思う。
ということで、一本目はスパイク・リーの最新作であるこれ(ファンならばさっさと観とけ、俺)。ベトナム戦争の退役軍人である黒人四人組が、ベトナムの奥地で戦死したかつての仲間の遺骨を回収にいくという口実で、隠しておいた金塊を手に入れようともくろんだところ、欲得ずくの愚行と予想外の展開から大変なトラブルに見舞われるという話。
ベトナム戦争絡みということで、七十年代が主要な舞台なのかと思っていたら、メインは現代劇だった。過去のシーンはわざと画質を落として、画角を4:3比にしてみせた演出がおもしろい。
物語の肝となるのは、デルロイ・リンドー演じるポールの困った人っぷり。で、この人のひどく自分本位な行動がある種の苦い笑いを誘いはするものの、観ていてあまり気持ちよくない。いい加減にしろよな、おっちゃんっていいたくなる。もっとも目立つこの人があまりに共感を呼ばないのが、この作品のウィークポイントだと思う。
ということで、出来が悪いとはいわないけれど、かといって(これまでのスパイク・リー作品と比べて)特別によいとも思わなかったったので、これで本当にアカデミー賞にノミネートされているんだろうか?――と思ったら、なんのことはない、ノミネートは作曲賞だけだった。あぁ、そりゃそうだよなぁと納得。
で、ノミネートされたオリジナルのスコアがよかったかと問われても、どんなだったかまったく印象ありません。ただ、ベトナム戦争絡みってことで全編的に使用されているマーヴィン・ゲイの『ホワッツ・ゴーイン・オン』の収録曲の数々は非常に印象的だった。そこんところはさすがスパイク・リー。
ということで、必見ってほどの出来映えではないけれど、往年の洋楽ファンならば、観たらかなり楽しめる作品なのではと思います。映画を観たあとで『ホワッツ・ゴーイング・オン』を聴きたくなるの間違いなしって一本。
あ、大事なことを忘れていた。回顧シーンに登場するいまは亡き戦友を演じているのが去年亡くなったチャドウィック・ボーズマンだというのもこの映画のポイント。脇役ではあるけれど、物語の鍵となる重要なキャラクターで、しかも若くして命を失う兵士という自らの境遇に通じる役どころ。彼が人生最後の日々にどういう気持ちでこの役を演じていたんだろうと思うとなんともやる瀬ない。
(Apr. 11, 2021)