ワンダヴィジョン
マット・シャクマン監督/エリザベス・オルセン、ポール・ベタニー/2021年/Disney+(全9話)
『アベンジャーズ/エンド・ゲーム』でひと区切りがついたマーベル・シネマティック・ユニヴァースの外伝的ドラマ・シリーズの第一弾。
予告編がワンダとヴィジョンのカップルが連続ドラマの夫婦役を演じている意味不明な映像ばかりだから、こりゃいったいなんだろうと思っていたら、これが予想外の内容のとてもエキセントリックな作品だった。
このシリーズは全体がシットコムと呼ばれるアメリカの連続ドラマのパロディになっている。一話目が五十年代のそれで、次が六十年代(『奥さまは魔女』のパロディ)と、一話ごとに時代をたどってスタイルが変化してゆく。最初の二話はモノクロで、三話目で七十年代に入ってカラーになる。でもって、その主役はずっとワンダとヴィジョンの夫婦。『奥さまは魔女』くらいしかシットコムの知識がない僕らには、いったいなにこれって感じで、わけわからない。
まぁ、途中にスターク・インダストリーやヒドラの名前を使ったCMのパロディが挿入されたりして、それはそれでおもしろいとは思うんだけれど、でも基本的にMCUの新作を期待して観ているわけだから、あまりにあさっての内容に戸惑いが否めない。
でも、そんな困った状態なのは、とりあえず三話目が終わるまで。三話目の最後に「えっ?」というサプライズがあり、四話目に入ったとたん、そこまでの謎が一気に解き明かされ、舞台となっているのが『アベンジャーズ/エンドゲーム』以降だということが明らかになり、物語は怒涛の展開をみせる。
でもって『マイティ・ソー』や『キャプテン・マーベル』、『アントマン』などの脇役たちが登場してきて、話に華を添える(まぁ、そうと言われないとわからないレベルの人たちばかりだけれど)。さらには『X-MEN』シリーズの新三部作から、ワンダと浅からぬ関係にあるキャラが引っぱりだされてきたりして。なにそれすげー。
いやー、これは予想外のおもしろさだった。最後にワンダの衣装が唐突にコスチューム化してしまうのはちょっとどうなの?って思ったけれど、そこ以外は大満足。これから始まるMCUの新シーズンにつながるミッシング・リンク的な作品として、マーベル映画ファンならば必見ではと思います。
そういや、ヴィジョンの役ゆえにこれまで一度も素顔をさらすことのなかったポール・ベタニーが、ヴィジョンが人間に化けて市民生活を送っているという設定のもとで、初めて素顔で演技をしているのも逆説的でおもしろかった。
(Jun. 06, 2021)