クルエラ
クレイグ・ガレスピー監督/エマ・ストーン、エマ・トンプソン/2021年/アメリカ/Disney+
エマ・ストーンを主役に『101匹わんちゃん』の悪役クルエラの若いころを描く実写版のスピンオフ映画。
アニメのクルエラは骨ばっていてエラの張った世辞にも美人とはいえないキャラなので、それをキュートなエマ・ストーンに演じさせてどうするのかと思ったら、ここでのクルエラさんは白黒ツートーンの髪のファッション・デザイナーというキャラ設定だけを踏襲しただけのほぼ別人だった。
まぁ、とぼけた子分ふたりを引き連れていたり――正確には子分ではなく、家族同然に育った孤児ふたりだけど――ダルメシアンと因縁があったりと、アニメの設定はあちこちに取り入れられているようだけれど、それでもクルエラの性格づけはまったくの別物。
この映画のクルエラは明るくてポジティヴで、憎々しいところは微塵もない。まぁ、母親の命を奪った人物に復讐を果たすため、あれこれ策略を仕掛けてゆくあたりはちょっとピカレスクっぽいけれど、対する相手に同情の余地がないので、喧嘩両成敗で結果オーライって感じ。不幸ななりゆきで幼くして孤児となった美女が、気のいい仲間たちの助けを借りて逆境をはねのけ、成功をつかむまでを描く、なかなか愉快なコメディだった。
共演者でよかったのが、『リチャード・ジュエル』で主演を務めていたポール・ウォルター・ハウザー。あの映画では笑いどころのない難しい役どころのせいで、あまり魅力的とはいえなかったけれど、この映画ではクルエラの孤児仲間(泥棒仲間?)の片方の役で、コミック・リリーフとしていい味を出している。もともとがコメディアンだというので、これぞ本領なんでしょう。とてもよかった。
クルエラが憧れる天才デザイナー役のエマ・トンプソン(エマとエマの共演)もメリル・ストリープやケイト・ブランシェットあたりが演じそうな高慢な憎まれ役の女性をみごとに演じている。この人って善良で繊細な役どころが多いイメージだったので、ここでの悪役ぶりは意外性があって新鮮だった。
時代背景にあわせて音楽を70年代のロック・ナンバーで固めたサントラもいい感じだし、そんな中に混じる新録の主題歌がなんとフローレンス・アンド・ザ・マシーンというのも個人的には得した気分。
ということで、正直それほど期待していなかったのだけれど、思いのほかおもしろい映画だった。
(Nov. 20, 2021)