ホークアイ
リス・トーマス、バート&バーティ監督/ジェレミー・レナー、ヘイリー・スタインフェルド/2021年/アメリカ/Disney+(全6話)
『シャン・チー テン・リングスの伝説』にがっかりしすぎて、今後はもうマーベルの作品は観るのをやめようかと思ったのだけれど、でもスパイダーマンの次のやつは絶対に観たいし、変に意地をはって観たい映画も観ないと決めつけてしまうと、単に損をするだけだというのは経験上よくわかっている。
だからもうマーベルは絶対観ないなんて極端なことはいわないけれど、だからといって無条件に受け入れつづけるのもしゃくなので、今後は新作をすべて観るのはやめて、観たいものだけ観ることにしようと思う。
ということで、いくぶんすっきりしない気分で観はじめたマーベルの連続ドラマ最新作は、ホークアイことクリント・バートン(ジェレミー・レナー)を主人公にしたスピンオフ。
これはどっちかというと「絶対観たい!」って作品ではなかったのだけれど――ホークアイが大好きって人ってあまりいない気がする――でも観て正解。ヒロインのヘイリー・スタインフェルドが可愛いすぎる。彼女のキャスティングがこのドラマの成功の要因のほぼすべてじゃないかとさえ思ってしまうくらい。彼女がいるがゆえに、アベンジャーズでは地味さナンバーワンのホークアイがちゃんと魅力的なスーパーヒーローに見える。
とかいいつつ、正直をいえば、僕はこのドラマのポスターなどでヘイリー・スタインフェルドを見ても、それほど可愛い子だとは思っていなかった。実際に椎名林檎的な言い方をすれば「美人ってタイプじゃない」と思う。
でもこのドラマの彼女はいきいきとしていて本当に魅力的だ。自然体の演技が役どころにぴったりで、もっと彼女の演技が観たいと思わせるものがある。
その不思議な魅力に、なにこの子?――と思って調べてみて、あぁ、『トゥルー・グリッド』の女の子かっ!――って即納得。そういや、あの映画の彼女も観ているうちにどんどん可愛く思えてくる役どころだった。『はじまりのうた』にも出てたというから、あぁ、マーク・ラファロの娘さんの役かと思ったけれど、あれはふつうだった気が……。まぁ、なんにしろこのドラマの彼女は最高によかった。すっかりファンになりました。
物語は幼いころにニューヨークの自宅で『アベンジャーズ』一本目のエイリアン襲来を経験したヒロインのケイト・ビショップ(ヘイリー・スタインフェルド)が、そのときに見たホークアイの活躍に感動して、自らも弓矢の使い手になり、ある年のクリスマス・シーズンに憧れのホークアイとぐうぜん出逢って、無理やり弟子入りし、双方に絡んだとある事件に巻き込まれるというもの。
内容的にはたわいのない話だけれど、なにかとオーバー・アクションのインフレ著しいマーベルのシリーズにあって、超能力が使えないホークアイ師弟が主人公ということもあって、アクションにある程度の節度が効いているのがいいところだと思う。終始ユーモラスだし、僕にはちょうどいい匙加減だった。
あと『ブラック・ウィドウ』からの流れでナターシャの妹エレーナ役のフローレンス・ピューが出てくるのもシリーズにとっては重要な伏線。最後に出てくる悪役は『デアデビル』の重要なヴィランらしいけれど、そちらを観ていない僕にとっては単なるタフなスキンヘッドのおっちゃんだった。マーベルと一線を引くと決めたので、当面『デアデビル』を観る気はないから、あの人について詳しく知ることはない予定。
今後MCUにおいてケイト・ビショップがどういう立ち位置になるのか知らないけれど、彼女が主演のシリーズが作られるようならば、そりゃとうぜん観たくなっちゃうよなぁと思わされる良作だった。
(Dec. 28, 2021)