2022年2月の映画

Index

  1. チック、チック…ブーン!
  2. ドント・ルック・アップ

チック、チック…ブーン!

リン=マヌエル・ミランダ監督/アンドリュー・ガーフィールド、アレクサンドラ・シップ/2021年/アメリカ/Netflix

 今年もアカデミー賞が近いので、ネトフリで観られる候補作を観ておこうってことで、まずはこの作品から。
 ベースとなるのはミュージカル『レント』の作者であるジョナサン・ラーソンという人の出世作で、みずからのデビュー作の失敗という苦い経験を描いた自伝的ミュージカル。そこにスクリーン向けのアレンジをたっぷりと加えたのがこの作品。
 主演は二代目スパイダーマンのアンドリュー・ガーフィールドで(ひさしぶりに観た)、彼の恋人役のアレクサンドラ・シップという人は、Xメンの劇場版最新シリーズでストームを演じている女優さんとのこと(気づくわけがない)。つまりスパイダーマンとXメンの主要メンバーがここでは恋人役を演じているわけだ。それも一興。
 ミュージカルというとまずは主役の歌唱力って印象があるけれど、この映画のガーフィールドくんは正直そこまで上手くはない。下手とはいわないけれど、少なくても歌手としてデビューできるほどの美声の持ち主とは思えない。
 そんな彼が主演だというのが最初は意外だったけれど、でも、もともとが原作者自身による自作・自演の舞台ミュージカルなのだと知って、ああなるほどと思った。歌よりも作詞・作曲がメインの人が主演なのだから、変に上手すぎる人をキャスティングしたらそのほうが不自然だ。そう思って観れば、彼はなかなかの適役だった。いい味だしてました。
 タイトルの『チック、チック…ブーン!』は、三十歳になるまでに成功を収めないとと焦る主人公の内面を時限爆弾の音に例えてあらわしたもの。
 オリジナルの舞台――エンド・クレジットで映像が紹介されている――はインディー感たっぷりな小規模なものだったらしく、登場人物は主人公のジョナサンと恋人のスーザン、親友のマイケルの三人しかいないようだけれど、映画版はその他のキャストもたくさんいて、ジョナサンのデビュー作『スーパービア』にまつわるシーンもたくさんあるし、さすがハリウッドって仕上がりになっている。
 ミニマムな原作を見事にふくらました、とてもいい映画だとは思うし、僕は好きだけれど、オスカーの最優秀作品賞にふさわしいかと問われると、残念ながらそこまでの傑作ではないかな……と思ったら、僕の勘違い。ノミネートは主演男優賞と編集賞だけだった。至極納得。
(Feb. 26, 2022)

ドント・ルック・アップ

アダム・マッケイ監督/レオナルド・ディカプリオ、ジェニファー・ローレンス/2021年/アメリカ/Netflix

 ネトフリ配信のオスカー候補作品の二本目は、地球に激突する彗星を発見した大学教授とその教え子が現代社会のあれこれに邪魔されて右往左往するさまを描いたシニカルなSFコメディ。
 この作品を観て思ったことは、ただひとこと――「滅びてしまえ」。
 ディカプリオ演じる大学教授とその教え子の大学院生役のジェニファー・ローレンスが、このままでは巨大彗星が地球に激突して、100%人類が滅びると告発しているのに、女性大統領――なんとメリル・ストリープだ――は自らの選挙戦を案じて知らぬ存ぜぬを決め込むし、ワイドショーの女性キャスター――こちらはケイト・ブランシェット――はフェイクニュース扱いで真剣に取り合わず、ディカプリオに色目を使う始末。そこへうさんくさいスティーヴ・ジョブズ(またはイーロン・マスク)のバッタもんみたいなIT長者が絡んできて、事態を悪化させる。
 誰もが自分たちに都合の悪い真実から目をそむけて、科学者の言葉を無視するその展開が、昨今のコロナ禍や五輪騒動に対する日本政府の対応なんかを思い出させて、鬱憤やるかたなし。こんな馬鹿ばかっりの世界なんて滅びてしまえ!――と思わないでいられない。それも二度、三度と繰り返し。
 地球滅亡の危機を描いた映画は数多くあれど、こんなふうに「滅びてしまえ!」って思わせる作品って珍しいのではないかと思う。そう思わせたってだけでも、この映画はある意味特別だといっていいのではって気がする。
 前述の豪華俳優陣に加えて、最後の方になってティモシー・シャラメがひょっこり登場するキャスティングも本当に(無駄に?)豪華だし、オープニングのブルーノート・ジャズっぽいレタリングを施したクレジットの演出もスタイリッシュでカッコいいし、だいたいのところはアカデミー賞・最優秀作品賞候補も納得の出来映え。
 ただしあのエンディングだけは駄目。どうにも好きになれない。そういう人が多いのではないかと思う。あの部分をもう少し違うふうに描いていてくれたならば、文句なしに大好きになれたかもしれないのに……って思わずにいられない。
 あたかも最後の最後で一歩か二歩コースを逸れて打上げに失敗してしまったロケットのよう。あと少しってところで失敗して傑作になりそこね、一気にB級に堕してしまった感じのもったいない作品。
(Feb. 26, 2022)