パワー・オブ・ザ・ドッグ
ジェーン・カンピオン監督/ベネディクト・カンバーバッチ、キルスティン・ダンスト/2021年/ニュージーランド、イギリス、アメリカ、ギリシャ、オーストラリア/Netflix
前の作品からずいぶんあいだが開いてしまったけれど、ネットフリックスで今年のアカデミー賞候補作を観ようシリーズ第三弾は、ジェーン・カンピオンが最優秀監督賞を受賞した『パワー・オブ・ザ・ドッグ』。ジェーン・カンピオンってずいぶんひさしぶりだなと思ったら、この映画が十二年ぶりの監督作なのだそうだ。
主演のカンバーバッチが馬に乗ってカウボーイ・ハットをかぶっているから西部劇だと思っていたけれど、これを西部劇と呼ぶのはおそらく違うんだろう。舞台となっているのは1925年のモンタナ州だそうだから、もう第一次大戦後。さすがにその時代ではもうドンパチの銃撃戦はない。
カンバーバッチ演じる主役のフィル・バーバンクは大牧場主の長男で、ゲイの傾向がある男性。でも牧場という男の世界のボスの地位にあるので、そのことを隠している。
彼には気のあわないジョージ(ジェシー・プレモンス)という弟がいて、この人がキルスティン・ダンスト演じる未亡人のローズと結婚したことから――というか、彼女に美男のひとり息子がいたことから?――バーバンク一家にさまざまなトラブルが巻き起こる。
ローズの息子ピーター役のコディ・スミット=マクフィーという人は『X-MEN』新シリーズでナイトクローラー(真っ黒な悪魔みたいなミュータント)の役を演じているそうだ。ちょっと目が離れ気味のそのエキセントリックなルックスを見て、なるほどと思った。
『ドント・ルック・アップ』のジェニファー・ローレンスはミスティーク役だし、『チック、チック…ブーン!』のアレクサンドラ・シップはストーム役だというし。今回のアカデミー賞関係者は『X-MEN』絡みの俳優だらけなのがおもしろい。
なんにしろ、この映画で意外な存在感を発揮しているのがこのコディ君。彼のなにを考えているんだかよくわからない感じがこの映画の味を決定していると思った。
そうそう、全体的な雰囲気が『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』っぽいから、もしやと思ったら、音楽はやはりあれと同じくジョニー・グリーンウッドだった。彼の音楽って意外と記名性が高いかもしれない。
(Apr. 03, 2022)