2022年5月の映画

Index

  1. ドクター・ドリトル [2020]
  2. エミリー、パリへ行く シーズン2
  3. ナイル殺人事件 [2022]
  4. ゴジラvsコング

ドクター・ドリトル [2020]

スティーヴン・ギャガン監督/ロバート・ダウニー・ジュニア/2020年/アメリカ/Netflix

ドクター・ドリトル(字幕版) (4K UHD)

 お気楽な映画が観たくて選んだ映画だったけれど、これはいささかお気楽すぎた。お気楽というか、ぶっちゃけひどい。
 動物をCGで描いたいまどきの実写映画で、タイプ的にはちょっと前の『ピーター・ラビット』――俳優陣に興味がなくてちゃんと観てません――と同系統だけれど、イギリスの田園地方を舞台に動物中心のどたばたを描いたあの映画と違い、こちらは変にアクション・アドベンチャー系のストーリーになってしまっているのが駄目。
 なぜにドクター・ドリトルが海賊と追いかけっこをしたり、ドラゴンと戦わなくちゃならないんだ。その着想が安直すぎる。これを観るくらいならば、『ピーター・ラビット』を観ればよかった(二作目は難ありだそうだけど)。ロバート・ダウニー・ジュニア主演だというので観ようと思った作品だったけれど、正直こんな映画には出て欲しくなかったよ……。
 ということで、あまりの出来に途中で集中力が飛んでしまって、最後まできちんと観ていられなかったから、感想を書くのをやめようかと思ったんだけれど――うちの奥さんからも書かなくていいんじゃないといわれる始末だった――あえて書くことにしたのはその声優陣の贅沢さゆえ。
 普通に出演している俳優で僕が知っているのは海賊のボス役のアントニオ・バンデラス(でもそういわれないとわからない)くらいだったけれど、彼らをとりまく動物たちの声優をつとめている俳優陣が無駄に豪華。
 オウムがエマ・トンプソン、ゴリラがラミ・マレック、アヒルがオクタヴィア・スペンサー、犬がトム・ホランド、虎がレイフ・ファインズ、キリンがセレーナ・ゴメス、狐がマリオン・コティヤールって、なにそれ?
 まぁ、当然声だけ聴いてその人と認識できるはずがないんだけれど、それにしても豪華。本当に無駄に豪華。こんな映画のためにこれだけの俳優陣が集まったという事実にびっくりだよ。もったいないにもほどがある。
(May. 14, 2022)

エミリー、パリへ行く シーズン2

ダレン・スター製作/リリー・コリンズ/2021年/Netflix(全10話)

 パリの広告会社で働くアメリカ人の女の子――主演はフィル・コリンズの娘さん――が仕事と恋と友情のはざまで悩みつつ、花の都での新生活を謳歌するトレンディー・ドラマ(死語?)の第二シーズン。
 配信開始したのは去年の暮れだったらしいけれど、それほど大好きってわけでもなかったので最近まで放ってあったのを、ゴールデンウィークになにか長めで気楽なやつを観ようってことで観た。そしたら、二シーズン目に入ってキャラクターにも馴染みが深くなったこともあって、思いのほか楽しく観ることができた。やっぱ魔法やドラゴンが出てこない適度に笑える話っていいよねって思う。
 主演のリリー・コリンズってしっかりした眉とおでこのしわが印象的で、美人は美人ながら、特別に魅力的って気がしないのだけれど(失礼)、このドラマの場合はそこがはまり役。絶世の美女ではないからこそ、ここでのあっけらかんとした役どころにぴったりだ。なにそれって笑ってしまうような奇抜なファッションも健在。
 物語的には前作の終盤に発覚したシェフのガブリエル(リュカ・ブラヴォー)と友人カミーユ(カミーユ・ラザ)との三角関係は今回ももつれにもつれ、さらにはエミリーがフランス語学校で知りあったイギリス人の黒人銀行家アルフィー(ルシアン・ラヴィスカウント)も加えての四角関係に発展。仕事でも最後にシカゴのボスがやってきたことで一大事がまきおこり、今後が気になる展開になっている。
 ファースト・シーズンでは敵対的だった上司のシルヴィー(フィリピーヌ・ルロワ=ボリュー)たちともすっかり打ち解けて、いまや信頼できる同僚として認められているのが微笑ましくてよいです。
(May. 14, 2022)

ナイル殺人事件 [2022]

ケネス・ブラナー監督・主演/2022年/アメリカ/Disney+

ナイル殺人事件 (字幕版)

 ケネス・ブラナーが主演・監督のひとり二役をつとめる名探偵ポアロ劇場版シリーズの第二弾。
 今作はいきなり『1917 命をかけた伝令』のロケ地を流用させてもらったんじゃないの? って思うような戦場シーンで始まる。
 おいおい、これってクリスティー原作だよな? なぜいきなり戦場?――と思っていると、それがポアロの若いころの話で、そこから前作でもほのめかされていた彼の悲恋があきらかにされるという趣向。でもこれはいきなり蛇足な感あり。
 今回の再映画化では旧作との差別化を図るためか、ポアロの人となりを描く、そういうオリジナルのサブエピソードを盛り込みすぎな気がする。別に僕はクリスティー以外の人が勝手につけくわえたポアロの過去なんて知りたくない。
 でもまぁ、リメイクだからこその改変部分でいうならば、そう悪いところばかりでもないとも思う。原作では小説家だったキャラを黒人女性ブルース・シンガーにして、彼女が歌うクラブのシーンで冒頭のカップルを紹介してみせる演出とか、けっこう気がきいていてよいと思った。
 あと、原作でポアロの相棒役をつとめているライス大佐を登場させず、そのかわりを前作から引きつづきトム・ベイトマンという人が演じるブークというオリジナル・キャラクターにつとめさせたのもこの映画のポイント。続投の彼の存在が思わぬミスリードを招いて、旧作とは違った驚きを与えてくれている。ミステリとして、このシナリオは見事だと思った。
 そのほか、旧作との比較でいうと、エジプトやナイル河の風景がとても綺麗なのが印象的だ。1978年の映画版はある種の観光ミステリとしては風景描写の美しさが足りないと思っていたので、今回4K映像とCGが普及した今だかこそ撮れる色鮮やかなナイル河クルーズの風景が見せてもらえたのはわが意を得たりの気分だった。序盤でブークがピラミッドに登っているシーンとかも、なにげに旧作へのオマージュなのではないかと思う。
 まぁ、『オリエント急行殺人事件』と比べるとあまり有名な俳優は出ていないし(僕が知っているのは『ワンダーウーマン』のガル・ガドットくらい)、部分的にやりすぎの感があるせいか、あまり評判はよくなさそうだけれど、いろいろ盛り込んだわりには、二時間ちょいという時間にコンパクトにまとめてみせた編集もよいと思うし、今回もクリスティー作品のリミックス版的なミステリ映画として、個人的には楽しませてもらいました。
(May. 21, 2022)

ゴジラvsコング

アダム・ウィンガード監督/アレクサンダー・スカルスガルド、ミリー・ボビー・ブラウン/2021年/アメリカ/WOWOW録画

ゴジラvsコング(字幕版)

 モンスターバース・シリーズの第四弾。
 前作の『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』がひどかったので、今回は最初から期待していなかったけれど、やはり予想にたがわぬ駄目さ加減だった。
 とにかく冒頭の寝起きのキングコングが滝をシャワーがわりにするシーンで、これはもう駄目だろうなと思った。いきなり擬人化がすぎる。キングコングが耳の不自由な小さな女の子と手話で会話をするという設定においてはもうなにをいわんやだ。無理ありすぎでしょう?
 前作につづいて出演しているミリー・ボビー・ブラウン(ずいぶんと大人びたなぁ)が怪獣絡みの陰謀論を配信している黒人ユーチューバーと一緒にゴジラに襲われた企業に潜入して香港に運ばれちゃうという展開も無理やりな感が否めない。
 そもそも、キングコングは幼女となかよし、ゴジラ方面は女子高生がキーパーソンって、これは少年ジャンプ原作ですか? もっとちゃんと大人の話にできないもんなのか。もしかして日本オリジンだからって、日本のマンガ文化へのリスペクトだとかいわないよな?
 地球の中心には空洞があってそこがコングの故郷だって設定も強引だし(もしかして『地底探検』のような古典映画へのオマージュ?)、そもそもコングがそこで手に入れるゴジラの背ビレ(?)の斧はいったい誰がどうやって作ったんだって話だ。『ゴジラvsコング』というタイトルなのに、クライマックスは実質ゴジラ&コングvs*****だし。もうシナリオも設定もでたらめすぎて言葉にならない。
 小栗旬が出てきたのには日本人としておーっと思ったけれど(前作で渡辺謙が演じた芦沢博士の息子という設定らしいです)、でもあんな役ではねぇ……。
 ということで、褒める言葉がみつけるのが難しい、残念すぎる映画だった。もうハリウッドが作る怪獣映画には今後期待するのをやめたほうがよさそうだ。
 ――というか、文句をいうくらいなら最初から観るなって話だ。
(May. 21, 2022)