007/ノー・タイム・トゥ・ダイ
キャリー・ジョージ・フクナガ監督/ダニエル・クレイグ、ラミ・マレック、レア・セドゥ/2021年/イギリス、アメリカ/Amazon Prime
ダニエル・クレイグ主演でリブートした007シリーズの完結編。
007シリーズに完結なんてあるのかよって話だけれど、ダニエル・クレイグを主演にした今回のシリーズはこの作品で疑いの余地なく完結しているので、それまでのシリーズとは一線を画した五部作ということでいいのだと思う。
とにかく、今回のシリーズはすべてが前作の内容を踏まえた連作となっているのが最大の特徴であり、僕みたいなもの忘れのひどい人間にとっては最大の弱点だ。五作目にしてなお『カジノロワイヤル』でエヴァ・グリーンが演じたヴェスパーの名前が出てくるんだからびっくりだよ(毎回「ヴェスパーって誰だっけ?」って思っていた気がする)。ボンドガールだって、今回のメインは前作につづいてレア・セドゥだし。
アナ・デ・アルマスという女優さんが演じるセクシーで初々しい新人スパイが序盤で登場するから、この子が今回メインのボンドガールだとばっか思っていたら、彼女の出番はそのアクションシーンだけだったのにもびっくりだった(彼女の活躍がもっと見たかったぜ)。
この映画ではボンドはすでに引退していて、007のコードネームは別の黒人女性に与えられている。演じているのはラシャーナ・リンチという人で、どうやらこの人も一応ボンドガールという扱いになるらしい。どこかで「史上初の女性007」みたいな宣伝文句を見た気がするけれど、ジェームズ・ボンド以外の脇役が007を名乗ってもなぁ。
物語はDNAを判別して特定の人だけに効く殺人ウィルス――スペクターが開発してイギリスが回収した。ウィルスではなくではなくナノマシンというらしい。つまり人工のウィルス――を、ラミ・マレック演じるテロリストに盗まれて、世界各国の要人が暗殺されるかもって騒動になるというもの。終盤にボンドのプライベートに絡んだなにそれってサプライズとかもあって、物語としてはそれなりにおもしろかった。
そういやダニー・ボイルが監督するとかもという話は結局うわさに終わり、監督はキャリー・ジョージ・フクナガという人が務めている。名前のとおり日系人らしいけれど、日系何世という遠い話のようで、写真をみたら、ちっとも日本人ぽくないイケメン監督だった。
いやしかし、この五部作は007の誕生から始まって、ボンドに本気の恋をさせたり、少年時代を回想させたり、酒浸りにさせたり、ついにこの映画では****にさせたりと、ジェームズ・ボンドの人となりをこれまでになくつっこんで描いてみせている。そこをどう思うかが評価の分かれ目では?――という気がする。
ショーン・コネリーの演じた飄々とした女ったらしの初代ジェームズ・ボンドこそ007とするならば、まったくの別人といってもいいくらいなので、シリーズのガチなファンがどう思ったのか、ちょっと聞いてみたい。
(Jun. 07, 2022)