アンブレラ・アカデミー シーズン3
スティーヴ・ブラックマン制作/エリオット・ペイジ/2022年/アメリカ/Netflix(全10話)
前シーズンの結末で現代に戻ってきたはずのアンブレラ・アカデミーの兄弟姉妹は、彼らの父親とベンが生存していて、別の子供たちとスーパーヒーロー・チームを結成しているパラレル・ワールドにたどり着きましたと。
パラレル・ワールドならば、その世界には別の自分たちが存在しているはず――自分と自分が出会ったらどうなってしまうの?――という彼らの心配は杞憂に終わる。
なぜならばその世界には初めから彼らは存在しないから。
なぜって?――というその理由や、なぜハーグリーブズ卿が生きているのかとか、どうして別の子供たちでチームを編成したのかとか、そういう重要な展開においてしっかりと前シーズンの伏線を回収したシナリオがよいです。
ライバルとなるスパロー・アカデミーの存在とともに今シーズンの肝となるのは、アンブレラの面々とともにその世界に現れた、メラメラとオレンジ色に輝く謎の球体。果たしてその球体をめぐり、アンブレラ・アカデミーの面々は今シーズンも新たなる世界の破滅と直面することになる。――それも過去最大の規模で。
現実世界で性別を変更したエレン・ペイジあらためエリオット・ペイジが、このドラマでも満を持してカミングアウト。長髪をばっさり切り落とし、名前をヴァーニャからヴィクターに変えて、トランスジェンダーとしての自分を兄姉たちに受け入れてもらうというのが今シーズンのトピックのひとつ。
あと、クラウスの能力が死者と話ができるだけではなく、もっと重大なものであったことが明らかになるところがブラック・ユーモアたっぷりで個人的にはお気に入り。『ONE PIECE』の能力者の覚醒的な。すげーそれって素直に感心しました。
そのほかだと、ルーサーに新しい恋人ができたり(アリソンとの関係は?)、ライラがすっかりメンバーの一員として認知されていたり。メンバーが隠れ家にするホテルの裏側の世界では日本語が使われているのも、日本人としては要注目。
シリーズきってのキーパーソンであるナンバー・ファイヴがちょっと大人っぽくなってきたから、このままだとあまりこの先長く続けられそうにないのではと思ったら、やはり次のシーズンで完結する運びっぽい。大団円を期待しています。
(Jul. 03, 2022)