ラストナイト・イン・ソーホー
エドガー・ライト監督/トーマシン・マッケンジー、アニャ・テイラー=ジョイ/2021年/イギリス/Amazon Prime
ここ二年くらいですっかりわが家のお気に入りになったエドガー・ライト監督の最新作。九月の初めに観たのに、なぜだか感想を書くのを忘れていた。一ヶ月以上たってしまったので、すでに印象が薄れていて、たいしたことは書けない。
それにしても、この人の作品って、いつでも説明なしで唐突に変なことが起こる。一晩あけたら街中がゾンビだらけになっていたり、好きになった女の子の元カレにいきなりバトルを挑まれたり、パブのトイレで喧嘩になった相手の首がもげたり。
この映画でもトーマシン・マッケンジーという主演の女の子が、ある日突然六十年代のロンドンで歌手としての成功を夢見るサンディーという女性――演じるのは『クイーンズ・ギャンビット』のアニャ・テイラー=ジョイ――と自分を同一視して重ねあわせたような幻想を見るようになる。そのあまりの唐突な展開がエドガー・ライトらしいなぁと思った。
まぁ、最後まで観たら意外と話がちゃんとまとまっていて、かえって意外な気がしたりもしたけれど。勝手にゾンビが出てくるようなホラー映画かと思い込んでいたら、ファンタジー仕立てのサイコ・スリラーだった。
時代設定が現代であるにもかかわらず、主人公が六十年代に憧れるファッション・デザイナーの卵という設定ゆえに、その当時のロックやポップスやファッションがたっぷりと盛り込まれているところもこの映画のいいところ。エドガー・ライトって本当に音楽の使い方が素晴らしい。
(Oct. 12, 2022)