マトリックス リザレクションズ
ラナ・ウォシャウスキー監督/キアヌ・リーヴス、キャリー=アン・モス/2021年/Netflix
前作から十八年ぶりに登場した『マトリックス』のシリーズ第四弾。
三部作として(よかれあしかれ)きっちりと完結してたシリーズなのに、なにゆえいまさら続編を作ろうと思ったのかわからないし、評判もいまいちなので、失礼ながら観る前からまったく期待していなかった。
予告編を観るかぎり、ネオとトリニティーが普通に活躍しているっぽいけれど、そもそもあのふたりって『レヴォリューション』で死んでなかったっけ?
――あ、だからタイトルが「リザレクションズ」=「復活」なのか。
ジーザス・クライストに倣うならば、救世主は復活してこその救世主ってこと?
なるほど。ならばこの第四作も蛇足ではないかもって気がしてくる。
実際に出来もそんなに悪くない――というか、個人的には思っていたよりもぜんぜんよかった。あまりに期待値が低すぎたせいで、予想外に楽しめてしまった。
オープニングも気が効いている。第一作でのトリニティーの初登場シーンをそのままなぞり、それを今作のキーパーソンとなる男女ふたりが覗き見しているというシチュエーション。その後のネオの初登場シーンにおける旧三部作のひねりのある扱いといい、どちらも仮想現実というテーマを生かした脚本がよい。
三部作から引きつづき主演を演じるキアヌ・リーヴスとキャリー=アン・モスは二十年近い年月の流れをさほど感じさせないし、ローレンス・フィッシュバーンからヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世という人にキャスティング変更されたモーフィアスも、ヴァーチャルな存在になっているからとくに違和感なし。
まぁ、なぜネオたちが復活したかという部分にはいまいち説得力がないし、最後の「愛が世界を救う」みたいな展開にもびっくりしたけれど――二十四時間テレビか――でも、最初から蛇足感たっぷりの続編だから、前三部作の悲劇的な結末へのアンチテーゼ的な意味合いでは、僕はこのハッピーエンドも、これはこれでありだと思った。
そういや、クライマックスのカーチェイスのシーンで、つぎつぎと人々が身を投げる展開も、仮想現実って設定だからこそ可能な強烈なインパクトがあった。まぁ、むちゃくちゃ悪趣味な気もするけれど。
なんにしろ、過剰なメカ・バトル中心になってしまった二作目、三作目よりも、ふつうに人どうしの格闘シーンこそ見せ場というこの作品のほうが単純に僕は好きだった。
そういや監督のウォシャウスキー兄弟がいつのまにか性転換手術をはたしていて、今作は兄――もとい姉のラナの個人名義になっているのにもびっくりだよ。
(Nov. 12, 2022)