すずめの戸締まり
新海誠・監督/声・原菜乃華、松村北斗/2022年/日本/ユナイテッド・シネマとしまえん
RADWIMPSが音楽を手がけているがために映画館で観た新海誠の監督作品その三。
地上波や配信で無料公開されている冒頭十二分だかの映像を観たときから思っていたことだけれど、今回の作品は展開がど派手だ。『君の名は。』や『天気の子』はゆっくりと始まって後半に向かって盛り上がってゆく感じだったけれど、今回はその冒頭部分であっという間に最初の山場が訪れ、その後も何度となく見せ場がある。新海誠に詳しくないので断定はできないけれど、彼の作品ではもっともファンタジー色が強くてドラマティックな作品なのではないでしょうか。
なにより『すずめの戸締まり』というタイトルが素晴らしい。日本各地に地震の原因となる――あの世へつながる?――扉があるという設定で、それを封じる役割を持った青年と出逢った主人公の女の子がなし崩し的にその仕事を手伝うことになる。そのコンセプトを込めたこのタイトルの着想を僕は最高だと思う。
ただし、主人公が日本の各地をまわるという噂だったから、「閉じ師」とやらにスカウトされて修行の旅に出たりするのかと思っていたら、そんな設定はまったくなし。そこのところはちょっとどうかと思った。主人公のすずめチャンは一匹の猫を追って、魔法で椅子にされたハンサム青年とともに、まるでとなり町を訪れるような気楽さで、いきあたりばったりに日本列島を北上してゆく。そんな女子高生いねぇよって思わずにはいられない。
そんな風にご都合主義まるだしの展開にはいまいち感心できないのだけれど、それでも確実にこちらの心を揺さぶってくるのが新海作品の真骨頂。
九州から始まった物語は、四国、関西と舞台を替えながら北上していって、東京で最大のカタストロフを迎える。でもって、そのあとにクライマックスでさらに北へ――。僕らをあの大震災の地へといざなう。
前の二作でもある程度まで災害をテーマに据えてはいたけれど、今作でまさかここまで直接的に東北大震災を扱ってみせるとは思わなかった。日本人だったらこんなもん、涙なしに観られるわけがないじゃん。反則ではなかろうか。
(Dec. 26, 2022)