ザ・メニュー
マーク・マイロッド監督/レイフ・ファインズ、アニャ・テイラー=ジョイ/2022年/アメリカ/Disney+
舞台は孤島にある超人気のレストラン。アニャ・テイラー=ジョイ演じる主役のマーゴがタイラー(ニコラス・ホルト)という青年にエスコートされて訳ありでその店を訪れる。
その日その店に集まった客は、落ちぶれた映画スターとその恋人、有名女性料理評論家とその同僚、IT長者風の青年三人組、CEO風の熟年夫婦など、基本セレブな人たちばかり。料金も破格で、革ジャン姿のマーゴとあまり裕福でなさそうなその連れはいささか場違い。
やがてレイフ・ファインズ演じる天才シェフが腕をふるったフルコースがサーブされ始める。
一品目、二品目、三品目……とコースが進むにつれて、斬新さを通り越したメニューと意味不明なシェフの言動が客を戸惑わせ始め、四品目になったところでスーシェフ(副料理長)が思わぬ行動に出て、唐突な不条理劇の幕が上がる――。
というような作品だけれど、んー、これは僕としてはいまいち。
予告編の思わせぶりなムードに惹かれて観たいと思った作品だったけれど、全編にわたって単に思わせぶりなだけって感じがしてしまって、その不条理なブラック・ユーモアがいまいちしっくりこなかった。『ミッドサマー』に通じるテイストがあるものの、あそこまでの不気味さにはたどり着けていないというか。
僕が思うこの映画の欠点は、予約もできない超人気店だという設定の割には、あまりその店が魅力的に思えないこと。
ここしかないって特殊なロケーションでどれだけ美味な料理をふるまわれようと、あんな軍隊みたいなキッチンで提供される料理を食べにゆきたいとは僕だったら思わない(うちの奥さんもいまいち料理がおいしそうに見えないといっていた)。
おかげでお客さんたちが不条理な運命を従順に受け入れるラストにも納得がゆかず、どうにも消化不良感が否めない(レストランの映画だけに)。
まぁ、ということで僕は期待していたほどには盛り上がれなかったけれど、だからといってそこまでひどい出来とも思わないので、今が旬のアニャ・テイラー=ジョイか、熟練のレイフ・ファインズや、映画スター役のジョン・レグイザモが好きならば、観てもおいて損はないかも。
(Feb. 02, 2023)