ウェンズデー
ティム・バートン他・監督/ジェナ・オルテガ/2022年/アメリカ/Netflix(全8回)
ティム・バートンが連続ドラマの監督を務めたというので話題になった『アダムズ・ファミリー』のスピンオフで、長女ウェンズデーを主役にした新シリーズ。
でもいざ観てみれば、ティム・バートンが監督としてクレジットされているのは前半の四話分のみ。つまり半分だった。
さすがに全八話すべてを手がける余裕はなかったのか、はたまたわけあって途中で降板したのか、誰か偉い人に更迭されたのか、その辺の理由は不明。ネットで調べればわかるのかもしれないけれど、このところ疲れていて調べる気力がない。
まぁ、半分しか手掛けていなかろうが、作品のムードはばっちりティム・バートン印だから、なんの問題もなし。『アダムズ・ファミリー』とティム・バートンの世界観がベストマッチすぎる。音楽もダニー・エルフマンだし、始まった途端にこれがティム・バートンの作品じゃなかったら、そのほうが驚きだろうって雰囲気だった。
とはいえ、この作品を特別なものにしているのはティム・バートンよりもむしろ、主演のジュナ・オルテガという女の子の存在だ。
この子がとにかくいいっ。ティーンエイジャーに成長したウェンズデーの役にこれ以上なくはまっている。にこりともせず無表情なままで、背筋をすっと伸ばして手を振らずに歩く、その奇妙な立ち姿がなにより最高だった。
でもってチェロも弾ければ、バトルも強いし、ダンスもいける。エキセントリックなのにいろいろハイスペック。世間に媚びることなく無表情のまま淡々とわが道をゆく。そんな最強のニュー・ヒロインの誕生。よもやアダムズ家の長女がこんなにもカッコよくひとり立ちしようとは思わなかった。
もうシナリオなんてどうでもいいから、ずっと彼女だけを観ていたいってくらいに魅力的。あまりにここでのウェンズデーというキャラのインパクトが強すぎて、今後俳優としての彼女がそのイメージを引きずって苦労しないか心配になるレベル。
共演者として劇場版『アダムズ・ファミリー』の初代ウェンズデー役のクリスティナ・リッチが教師役で出ているけれど、これ一作で僕個人のなかのウェンズデーのイメージはすっかりジュナ・オルテガで塗り替えられてしまった。
シーズン2も予定されているようだけれど、ここでのウェンズデーの魅力は思春期ならではの儚さに支えられているような気がするので、下手につづけてイメージを壊さないか心配。いっそこれ一作ですっきりと終わって欲しかったような気がする。
(Mar. 02, 2023)