シン・仮面ライダー
庵野秀明・監督/池松壮亮、浜辺美波/2023年/日本/グランドシネマサンシャイン池袋
去年の『シン・ウルトラマン』につづき、今年も『シン・仮面ライダー』を映画館で観てきた。
なんたって『仮面ライダー』は、僕が生まれて初めて観たテレビ番組だ。
初代ライダーの放送開始は1971年だから、当時の僕は四歳か五歳。そのころに父親と一緒に『仮面ライダー』を見たのが、僕の記憶にあるもっとも古いテレビの思い出だったりする。ブラウン管テレビでみた蜘蛛男のイメージが鮮明に残っている。
対する『ウルトラマン』が始まったのは1966年だそうだから、ちょうど僕が生まれた年だ。リアルタイムで観た最初のウルトラマンは、1972年に始まった『帰ってきたウルトラマン』ということになる(まぁ、それ以前に初代やセブンを再放送で観ている可能性もあるけれど。少なくても記憶の中ではその三つがごっちゃになっている)。
対する『仮面ライダー』は1号からストロンガーまでをリアルタイムで観ていたのだから、その分だけ仮面ライダーに分がある――かというとそんなこともない。それぞれに違ったよさがあるので、どっちが好きだったかとか問われても答えなんか出せない。仮面ライダーとウルトラマンは、僕らの少年時代を彩ってくれた偉大なる二大特撮ドラマだった。
その両作品を、かの庵野秀明がつづけて劇場版としてリメイクするとなれば、観てみたいと思うのが当然。しかも『シン・ウルトラマン』を劇場で観ておいて、もう一方は観ないとかあり得ない。
ということで、珍しく池袋の、数年前にできた大きな映画館で『シン・仮面ライダー』を観てきた。
予告編を観たときにもっとも印象的だったのは、浜辺美波ってものすごくきれいな子だなぁってことだったけれど、本編をすべて観てもその印象は変わらず。もしかしてこの映画は、浜辺美波という女優さんをいかにきれいに撮るかがテーマだったんじゃないかって思ってしまうレベルの仕上がりになっている。
仮面ライダーの生みの親である科学者の娘として、最初から主人公と行動をともにしつつ、つんとすまして心を開こうとしないツンデレ娘。まるで綾波レイと葛城美里を足して二で割ったような、これぞ庵野弘明ってヒロイン像を、徹底的にクールに演じている。この映画は特撮ヒーロー映画であるのと同時に、ある種のアイドル映画なんじゃなかろうか。
とはいえ、特撮の面でもオリジナルに対するリスペクトがたっぷり。『シン・ウルトラマン』は現在進行形なアレンジがそれなりに入っていたけれど、こちらはムードがまんま七十年代。「蜘蛛男」が「クモオーグ」とカタカナになっていたり、ショッカーがなんだか長たらしい英語の省略形だったり、それなりに今風なところもあったけれど、舞台のほとんどが人里離れた場所だったりすることもあり、昭和レトロ感がすごい。サイクロン号がもうもうと白い排気ガスを吹き出しながら走るのとか、地球温暖化に反しているあたりもまさに昭和レトロ。
あ、でも冒頭のショッカー戦闘員とのバトルシーンがやたらスプラッターなのはさすがに現代風だ。いきなりタランティーノかと思った。
とにかく大好きな特撮ドラマの名作を、オリジナルへの敬意を込めつつも、自らの趣味で味つけしてみせたという感じの意欲作。
最後の戦いが途中から妙にぐだぐだな小学生の喧嘩みたいになってしまったのはちょっとなんだけれど、少なくても最後までライダー対ショッカーの構図が崩れずにバトル・シーンが小気味よくつづいただけでも、『シン・ウルトラマン』よりこちらのほうがおもしろかった。
(Apr. 15, 2023)