クリード 過去の逆襲
マイケル・B・ジョーダン監督・主演/テッサ・トンプソン、ジョナサン・メジャース/2023年/アメリカ/Amazon Prime
『クリード』シリーズの第三弾である本作では、主演のマイケル・B・ジョーダンがみずから監督を務めている。
『ロッキー』でも二作目以降はスタローンがメガホンを取っていたから、プロダクションの面でもこのシリーズは『ロッキー』を踏襲しているわけだ。
ただ、今回のエピソードにはシルベスタ・スタローンは出てこない。特別な説明もないまま(なかったですよね?)ロッキーは過去の人になってしまっている。
それでもそんな重大な事実に違和感がないのは、この作品がクリードの引退試合から話が始まるから。
え、前回でチャンピオンになったのに、もう引退?
まぁ、主人公がもう引退を考える年ならば、すでにロッキーが故人となっていてもおかしくない。少なくてもロッキーの不在の理由を説明せずに納得させる上では悪くない設定だと思う。前世代ヒーローの最後を描くお涙頂戴な作品だって作れただろうに、それをあっさりと放棄した姿勢も潔くていい。
物語は引退したアドニスの前に、少年時代に兄と慕ったデイミアン(ジョナサン・メジャース)が現れ、敵として立ちふさがるというもの。
デイミアンはアドニスのせいで刑務所に入ることになり、ボクサーとしてのキャリアを棒に振っている。彼に対する罪悪感を抱いていたアドニスは、出所してきた彼に自身の後継者と育ててきたボクサーと対戦するチャンスを与えたところ、結果は(当然のごとく)デイミアンの勝利。一夜にしてチャンピオンの称号を得た彼は、メディアを味方につけて、アドニスを挑発し始める。そして再びアドニスがリングに立ち、両雄があいまみえる日が……。
引退したアドニスよりも年上のデイミアンが現役バリバリのチャンピオンに勝っちゃうというシナリオはご都合主義が過ぎて、どうにも説得力がないのが残念なところ。
アドニスの引退というプロットはロッキーの不在を説明する上では有効だったけれど、逆にメイン・ストーリーには悪影響を及ぼしてしまっている。映画って難しい。
(Dec. 03, 2023)