ゴジラ-1.0
山崎貴・監督/神木隆之介、浜辺美波/2023年/日本/グランドシネマサンシャイン池袋
東宝による劇場版『ゴジラ』最新作。海外でも大好評だと聞いて観たくなり、師走の慌ただしいさなか、ひさびさに劇場へと足を運んだ。
東宝の『ゴジラ』シリーズって、第一作は別として、あとはゴジラがほかの怪獣が戦うってパターンばかりなので、正直子供だましな気がして、まったく食指が動かないんだけれど、これは怪獣がゴジラしか出てこないみたいだったし、しかも舞台は第二次大戦の終戦直後だという。
つまりゴジラと戦うにもオキシジェン・デストロイヤーみたいな超科学的な秘密兵器は使えないってことでしょう?
この縛りの中でいかにゴジラを描いて見せるのかにとても興味を惹かれた。
でもって観てみたら、これが本当によかった。
これが俺の観たかったゴジラだ~!――って、まさしくそういう出来になっていた。
まぁ、シナリオはかなりご都合主義だ。銀座での浜辺美波の受難にまつわる流れは不自然すぎると思うし、光る可動式背ビレを持った今作のゴジラは、その超常的な再生能力も含め、突然変異した生物というにはいささか無理がある。
それでもまぁ、怪獣は理不尽であってこそ怪獣。そういう欠点があってなお、お釣りがくるくらいに、この作品はよくできているし、なによりとても感動的だった。初代ゴジラのシナリオを踏襲しつつ、それを過去の時代設定に移し替え、特攻隊崩れの主人公を軸とした(ベタではあるけれど、それゆえに感動的な)ヒューマン・ドラマに仕立てあげてみせたところが最高。恥ずかしながら、観ながら何度も泣いてしまいました。
予告編を見たときには「やっぱハリウッドと比べるといまいち?」と思ったCGも、物語の流れの中で観る分にはまったく違和感なし。とくにゴジラが銀座で放射能を吐いたあとに立ち上るキノコ雲の映像はインパクト特大だった。舞台が原爆投下から十年もたたない時代設定だからなおさらだ。わがことのように呆然としてしまった。
ハリウッドがゴジラをリメイクするたびに期待を裏切られて、「俺が観たいゴジラ映画はこんなんじゃない!」と思ってきた過去を、この映画はようやくぬぐい去ってくれた。まさか日本映画がいまさら特撮物でハリウッドを凌駕することがあろうとは……。
東宝が元祖怪獣映画の矜持を見せてくれた素晴らしき一作。
(Jan. 07, 2024)