哀れなるものたち
ヨルゴス・ランティモス監督/エマ・ストーン、マーク・ラファロ、ウィレム・デフォー/2023年/アメリカ/Disney+
原作を読んだときにもそのセクシャルな内容に意表を突かれたものだけれど、この映画版は比較にならなかった。
いやはや、まさかここまでファッキンな映画に仕上がっているとは……。
原作はたしかに性的な内容をたっぷり含んでいるとはいえ、主人公の婚約者マッキャンドルス(この映画ではラミー・ユセフという俳優さんが演じている)の手記というスタイルをとっているため、基本的に性描写は皆無だった。
それに対して、こちらではその設定が取っ払われている分、自由奔放。エマ・ストーン演じる主人公ベラの性欲まかせな行動がそのまま映像化されている。
成熟した大人の女性の身体を与えられた幼子として登場するベラは、自らが受ける性的快感になんの恥じらいも罪悪感も抱かず、意気揚々と性的冒険へと驀進してゆく。
同じくヨルゴス・ランティモス監督とエマ・ストーンがタッグを組んだ『女王陛下のお気に入り』でも、エマ・ストーンが女王様とのベッドシーンでヌードを披露しているのに驚いたけれど、今回はその比じゃない。
白黒で描かれる序盤はともかく、彼女がマーク・ラファロと駆け落ちをして、映像がカラーになった途端、いきなり大胆なセックス・シーンが目白押し。まさかエマ・ストーンがここまで体当たりで濡れ場を演じるとは思ってもみなかった。
最近はポリコレありきの風潮のせいか、映画で女性のヌードを観ることがめっきり減ったと思っていたので、この映画のあまりの露出度の高さにはびっくり仰天だった。
まぁ、ヒロインのエキセントリックなキャラクターゆえ、数多のベッドシーンもそれほどエロティックな印象ではないけれど、でもそんな風に思うのも、そろそろ還暦も近くなって、いい加減そちら方面が枯れ気味な昨今だからで、この映画を十代に観たらどうなっていたやら……。
あと、この映画はエロいだけではなくグロい。原作はそれほどエロくもグロくもなかったのに、この映画は見事にエログロだった(手術のシーンがグロい)。
原作との違いはそうした煽情的な部分のみならず。この映画は小説の本編のみを映像化していて、そのあとにある作品の要というべき部分を割愛してしまっているため、物語はほぼ同じであるのもかかわらず、ある意味まったくあと味の違う作品に仕上がっている。どちらがいいかは意見の分かれるところだろう。
ブラック・ユーモア溢れる映画オリジナルのラストシーンとか、屋敷に住まうキッチュなキメラたち、凝った衣装と色鮮やかな映像など、映像作品ならではの見どころも多い秀作だけれど、カラフルでユーモラスな装い反して、かなり過激にエログロなので、これを子供と一緒に観るのはちょっと無理かも……と思う。
なるほど、R指定って言葉はこういう映画のためにあるのかと思った。
(Jul. 3, 2024)