Coishikawa Scraps / Movies

2025年8月の映画

Index

  1. デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム
  2. チェンジング・レーン

デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム

ブレット・モーゲン監督/デヴィッド・ボウイ/2022年/ドイツ、アメリカ/Apple TV

デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム (字幕版)

 デヴィッド・ボウイのキャリアを貴重な未発表映像たっぷりで辿るドキュメンタリー・フィルム。

 「神は死んだ」というニーチェの言葉を引用したボウイのテキストから始まるこの映画。

 有名なメリエスの『月世界旅行』が一瞬登場するほか、しっぽの生えた女の子が宇宙飛行士のミイラをのぞき込む映像等、この映画のオリジナルなのか、ボウイのミュージック・ビデオの一部なのか、はたまたボウイが愛した映画の一シーンなのか、出自が不明なフィクション映像もあるけれど、そうした演出上インサートされた映像をのぞけば、あとはすべてボウイのライブやインタビューやツアー映像から成りたっている。

 説明的なナレーションはなしで、話を進めるのはすべてインタビューなどで発せられたボウイ自身の言葉。それらを絡めて数多のライブシーンやインタビュー映像やプライベートショットをコラージュして、デヴィッド・ボウイという稀代のポップ・アイコンの姿を描き出してゆく。

 いってみればボウイのキャリアを映像のイメージ力だけで辿ってみせる二時間越えのミュージックビデオとでもいったような作品。

 映像だけでボウイの人生を辿るというその性格上、この映画は動画が少ない最初期は割愛して、『ジギー・スターダスト』の時期から始まる。晩年もあまり映像が残っていないらしく、『レッツ・ダンス』の時期までが中心という印象だった。

 コアなファンにとっては感涙ものの内容かもしれないけれど、全体的に説明が足りないので、僕のようにボウイについてよく知らない人間には向かない作品だって気がした。途中で観るのをやめてボウイのアルバムをちゃんと聴き返したくなってしまった。

 自分がいかにデヴィッド・ボウイを知らないかを思い知らされた一本。

(Aug. 05, 2025)

チェンジング・レーン

ロジャー・ミッシェル監督/ベン・アフレック、サミュエル・L・ジャクソン/2002年/アメリカ/WOWOW録画

チェンジング・レーン (字幕版)

 無謀な車線変更(=チェンジング・レーン)により接触事故を起こしたせいで、さんざんな目にあう二人の男性を描いたサスペンス・スリラー。

 若き日のベン・アフレック演じるエリート弁護士のギャビンが、出廷すべき裁判に遅れそうになって、事故を起こしたのが事件の発端。

 先を急ぐ彼は、無責任にもさっさと事故現場を立ち去ってしまう。でもって、その際に、裁判所に提出しなくてはいけない大事な書類を置き忘れてしまったことから、敗訴どころか詐欺罪での刑務所入りかってピンチに陥る。まさに自業自得。

 一方のサミュエル・L・ジャクソン演じる保険販売員のドイルも、離婚か養育権の調停を受けるため、同じ裁判所へ向かう途中だったのに、事故で車が動かなくなったせいで遅刻を余儀なくされ、それが原因で調停に失敗してしまう。

 かくして書類を取り戻すために違法な手段に打って出たギャビンと、家庭崩壊を余儀なくされて自暴自棄になったドイルによる報復で、事態は悪化の一路を辿ってゆく。

 もうベン・アフレック演じる主人公がひどい人で。交通事故は金でもみ消そうとするし、事務所の同僚(トニ・コレット)と浮気しているし、書類を取り戻すためにハッカーをやとって相手の銀行口座を改ざんして、その復旧を口実に脅迫するし、スプリンクラーを誤動作させてオフィスを水浸しにするし。いつ捕まってもおかしくないじゃんって行動の数々に同情の余地がない。

 対するサミュエル・L・ジャクソンは、相対的に最初のうちは気の毒なのだけれど、相手の悪辣さに激高して報復に出てからは、あわや大惨事って交通事故を起こしたり、ローン窓口の人にやつあたりしてコンピュータを投げ出したり、それはないんじゃんって行動を取るようになってしまう。

 とにかく主演の人気俳優ふたりの行動があまりにひどくて苦笑が絶えない。作り手はべつに笑わそうとはしていないのかもしれないけれど、苦笑いなしには見られない。これはそういう映画だった。でもって僕はそこのところがけっこう好きだった。

(Aug. 09, 2025)