デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム
ブレット・モーゲン監督/デヴィッド・ボウイ/2022年/ドイツ、アメリカ/Apple TV
デヴィッド・ボウイのキャリアを貴重な未発表映像たっぷりで辿るドキュメンタリー・フィルム。
「神は死んだ」というニーチェの言葉を引用したボウイのテキストから始まるこの映画。
有名なメリエスの『月世界旅行』が一瞬登場するほか、しっぽの生えた女の子が宇宙飛行士のミイラをのぞき込む映像等、この映画のオリジナルなのか、ボウイのミュージック・ビデオの一部なのか、はたまたボウイが愛した映画の一シーンなのか、出自が不明なフィクション映像もあるけれど、そうした演出上インサートされた映像をのぞけば、あとはすべてボウイのライブやインタビューやツアー映像から成りたっている。
説明的なナレーションはなしで、話を進めるのはすべてインタビューなどで発せられたボウイ自身の言葉。それらを絡めて数多のライブシーンやインタビュー映像やプライベートショットをコラージュして、デヴィッド・ボウイという稀代のポップ・アイコンの姿を描き出してゆく。
いってみればボウイのキャリアを映像のイメージ力だけで辿ってみせる二時間越えのミュージックビデオとでもいったような作品。
映像だけでボウイの人生を辿るというその性格上、この映画は動画が少ない最初期は割愛して、『ジギー・スターダスト』の時期から始まる。晩年もあまり映像が残っていないらしく、『レッツ・ダンス』の時期までが中心という印象だった。
コアなファンにとっては感涙ものの内容かもしれないけれど、全体的に説明が足りないので、僕のようにボウイについてよく知らない人間には向かない作品だって気がした。途中で観るのをやめてボウイのアルバムをちゃんと聴き返したくなってしまった。
自分がいかにデヴィッド・ボウイを知らないかを思い知らされた一本。
(Aug. 05, 2025)