Coishikawa Scraps / Movies

2025年9月の映画

Index

  1. 教皇選挙
  2. ウェンズデー シーズン2
  3. 劇場版 孤独のグルメ

教皇選挙

エドワード・ベルガー監督/レイフ・ファインズ、スタンリー・トゥッチ/2024年/イギリス、アメリカ/Amazon Prime

教皇選挙(字幕/吹替)

 新しいローマ教皇を選ぶ選挙、コンクラーベをテーマにしたスリラー映画。

 主演のレイフ・ファインズは主席枢機卿として、コンクラーベを取り仕切る立場の人。それなりに人望もあるので、彼を教皇に推す人たちもいるようだけれど、彼自身にはそんな野心はなく、コンクラーベ後に身を引く覚悟を決めている。

 参加者全員の任意投票を何度も行い、最終的に全体の三分の二の票を得た人が新教皇になるとのことで、黒人司祭、革新派、保守派など、四人が有力候補として票を集めるのだけれど、それぞれにスキャンダル等が持ち上がり、ひとりひとりと脱落してゆく。さて、最後に選ばれるのは?――という話。

 結末にはいささか説得力がないように思うし、主要な登場人物がみんな同じ服を着た中高年男性なので、いささか華やかさには欠けるけれど、話としてはそれなりにおもしろかった。厳粛なクラシック音楽のサントラも印象的だ。

 見ていて気になったのは、司祭様たちが被っている赤い小さな帽子。どれだけ偉くなれようとも、少なくても僕はあんな帽子はかぶりたくない。あの帽子が嫌で司祭になりたくない人だって一定数いそうな気がする。

 そんな罰あたりなことを思うのは、僕がカソリック教徒ではないから?

(Sep. 9, 2025)

ウェンズデー シーズン2

ティム・バートン他・監督/ジェナ・オルテガ、エマ・マイヤーズ/2025年/アメリカ/Netflix(全8回)

 『ウェンズデー』のファースト・シーズンは主人公の魅力に全振りしたような作品だった。少なくても僕の印象ではそうだった。

 対するこのシーズン2は違う。ウェンズデーがなぜだか未来予知の能力を失ってしまって、一般人に近い存在になってしまうのが影響しているのか、肝心のウェンズデーが前のシーズンに比べると目立っていない。

 その分、彼女を取り囲む脇役たちが存在感を増している。エマ・マイヤーズ演じるルームメイトのイーニッド、ウェンズデーのストーカーとして新登場した透明人間の女の子アグネス(イーヴィー・テンプルトン)のふたりは主役を食わんばかりの勢いだし、ウェンズデーの弟パグズリー(アイザック・オルドネス)がネバ―モア学園に入学したのにあわせて、寄付がどうしたという話で父母(ルイス・ガスマンとキャサリン・ゼタ=ジョーンズ!)まで学園で居住するようになって、アダムス・ファミリーの全員がレギュラーに昇格。ハンドがじつは……というサプライズまである。

 さらにはウェンズデーの元カレや前校長など、ファースト・シーズンで出番が終わったかと思っていたキャラが何人も引きつづき登場してくるし(すっかり忘れていて困った)、そこに今シーズンの重要キャラである時計仕掛けの心臓をもったゾンビや、新校長役のスティーヴ・ブシェミまでが加わるという。レディー・ガガも出演しているけれど、出番は一度だけだった(でもイメージ的にはぴったり)。

 そんな多彩なキャラに囲まれて、様々な事件が巻き起こり、物語は前作に増してにぎやかだ。ただおかげで主人公の印象が控えめ。そこだけがやや残念かなと。

 そんな今シーズンでもっとも出色のエピソードは、呪いのせいでウェンズデーとイーニッドが『君の名は。』なことになる六話目。いつもとは違う役どころを演じるジェナ・オルテガとエマ・マイヤーズの演技が素晴らしい。

(Sep. 13, 2025)

劇場版 孤独のグルメ

松重豊・監督主演/杏、内田有紀、磯村勇斗/2025年/日本/Amazon Prime

劇映画 孤独のグルメ

 『孤独のグルメ』はおそらく全シーズン観ているのだけれど、ほとんどが食事をしたりつつ、ながら観してばかりなので、これまで文章を書こうと思ったことがなかった(きちんと観ていない作品については語らない主義)。

 この劇場版については一応映画ということでちゃんと観たから感想は書くけれど、でもこれが『孤独のグルメ』の通常版よりも素晴らしいと思う人はおそらくいないと思う。それなりにおもしろいけれど、僕らが『孤独のグルメ』という作品に期待しているのはコレジャナイ。

 松重氏が自ら監督を務めたこの映画の井之頭五郎さんは、仕事で訪れたパリで依頼人の老人から思い出の味を再現するための食材探しを依頼され、そのため足を運んだ長崎ではパドルボートで海を渡ろうとして遭難し、流れ着いた島の食品研究所の女性たちに助けられて韓国に密入国して、帰国後は隠遁していたラーメン屋の店主を説得して、思い出の味を再現してもらうことになる。

 さすがに映画だからといって五郎さんが世界を救ったりはしないけれど、それでもテレビの本編ではありえない事件のオンパレード。『孤独のグルメ』の魅力がさりげない日常性にあるとしたら、この劇場版はまったくさりげなくない。

 そもそもスーツを着たままパドルボート乗ったり、毒キノコにあたって泡を吹いて倒れたり、なにそれなギャグ満載だし。遠藤憲一が井之頭もどきの役で登場したり、世捨て人同然だったラーメン屋の頑固店主(オダギリジョー)がなぜだかあっさりといい人になっちゃったりもする。

 食べているのも本場フレンチ、ちゃんぽん、拾った貝ときのこで作った鍋、韓国料理が二種類、チャーハンにラーメンという内容で(もっとあったのかもしれないけれど、あとは忘れた)、最初のフレンチ以外は特別感がない。そのフレンチだって、わずか二品だけだし。どうせならばフルコースを楽しむ五郎さんが観てみたかったよ。そういうスペシャルさがよかった。

 まぁでも、そんな風に粗を探してつべこべいうのも野暮かもしれない。あの五郎さんがこんな冒険を……という普段とのギャップを笑って楽しむべき映画なんだろう。盟友クロマニョンズを主題歌に起用したのもその一部だろうし。適当なギャグをちりばめたその作風には『男はつらいよ』に通じるものを感じたりもした。

 とはいえ、ふだんから「ドラマはどうでもいいから、さっさと食事をしてくれないかなぁ」とか思って『孤独のグルメ』を観ている僕のようにな人間にとっては、そのドラマの部分こそがメインのこの劇場版が、本編よりも楽しいわけがないのだった。

 願わくば次は食事のシーンに全振りした映画版が観たい。

(Sep. 25, 2025)