2006年7月の音楽

Index

  1. Thirteen Tales from Urban Bohemia / The Dandy Warhols
  2. Songs for Tales of the Abyss / Motoo Fujiwara
  3. Pay the Devil / Van Morrison
  4. Different Strokes by Different Folks / V.A.
  5. ザンサイアン / Cocco
  6. Simpatico / The Charlatans
  7. Down in Albion / Baby Shambles
  8. 僕と君の全てをロックンロールと呼べ / サンボマスター
  9. 冬のピノキオ / Midnight Bankrobbers
  10. My Flame Burns Blue / Elvis Costello
  11. Hammersmith Odeon London 75 / Bruce Springsteen
  12. The Juliet Letters / Elvis Costello & The Brodsky Quartet

Thirteen Tales from Urban Bohemia

The Dandy Warhols / 2000 / CD

Thirteen Tales From Urban Bohemia

 ダンディ・ウォーホールズの三枚目。2002年ワールドカップの時に、このアルバムに納められている『Bohemian Like You』がCMソングとしてガンガンかかっていた。ストーンズを思わせるそのナンバーはツボではあったのだけれど、ただそのバンド名のイメージから、変に格好をつけたバンドじゃないかという先入観を持っていたため、聴こうかどうしようかというあたりで宙ぶらりんになったまま、年月が過ぎ……。気がつけば、ドイツ大会が始まる頃になってようやく入手して、終わってからこんな風に感想を書く羽目に。クレジットをみれば、実に2000年の作品だ。いやー、そんなに古かったのか……。
 それにしても、いざアルバム一枚聴いてみても、やはりちょっと評価に困るバンドだったりする。音的には文句はないし、曲もいい。でもその曲目が一曲目から立て続けに「無神」「マホメット」「ニーチェ」とくるとなあ。どう受け取っていいんだかって感じだ。このアルバムの次に出たやつは、かなりシンセサイザー多用の音になっているとかいう噂だし、ほかもフォローしようという気がいまのところ起きない。
(Aug 06, 2006)

Songs for Tales of the Abyss

Motoo Fujiwara / 2006 / CD

SONG FOR TALES OF THE ABYSS (通常盤)

 バンプ・オブ・チキンの藤原基央が手がけた、コンピュータ・ゲームのサウンドトラック。バンプの『カルマ』を中心としたプログラミングによる交響曲といった作品だけれど、一曲だけは生の弦楽四重奏を起用、藤原くんは大変な喜びようだったみたいだ。
 なにはともあれ藤原基央という青年が、単にソングライターとして秀でているのみならず、広い音楽的素養を持った優れたアレンジャーでもあることを証明する作品。あっぱれ。
(Aug 06, 2006)

Pay the Devil

Van Morrison / 2006 / CD

Pay the Devil

 ヴァン・モリソンの新作は、自作の新曲3曲を加えたカントリー・ナンバーのカバー・アルバム。
 僕はどうにもカントリーというやつが苦手だ。コステロの『Almost Blue』同様、このアルバムにもどうしても馴染めない。基本的にはアコースティックな音作りが好きだというのに、どうしてこうも徹底してカントリーだけは苦手なのか、われながら不思議に思う。今度、時間がある時にじっくり考えてみる価値があるかもしれないけれど、いまのところは保留して次の作品へ。
(Aug 06, 2006)

Different Strokes by Different Folks

V.A. / 2006 / CD

Different Strokes By Different Folks

 スライ&ファミリー・ストーンのトリビュート盤、と一言で片付けてしまうわけにはいかなそうなこの作品。なんたってプロデュースはスライ本人だ。基本的にはオリジナルの上に、多彩なゲストを迎えて録音した新録のトラックをミックスした、リミックス・アルバムということになるんだろう。いや、使われている音源のうち、ジャネット・ジャクソンの『Rhythm Nation』はあきらかに新録ではないから、もしかしたらばほかも僕が知らないだけで、それぞれのアーティストの既存曲からの引用なのかもしれない。
 なにはともあれ、これがとても素晴らしい。どの曲も原曲の味わいを十分に残したまま、コンテンポラリーなダンス・ミュージックに変身を遂げている。音楽の楽しさにあふれた、とてもいいアルバムだと思う。僕は大好きだ。
(Aug 06, 2006)

ザンサイアン

Cocco / 2005 / CD

ザンサイアン(初回限定盤)(DVD付)

 音楽活動を停止してから5年ぶりとなるCoccoの復帰第一弾。まあその間に『Heaven's Hell』や SINGER SONGER での活動があったし、僕個人が彼女の作品をきちんと聴いたのが引退後だったためもあり、それほどご無沙汰という印象でもない。
 意外なことに、全曲が自身の作詞・作曲によるアルバムはCoccoにとってこれが初めてなのだそうだ。これまでのアルバムでは、詞はすべてCocco自身が書いていたけれど、曲関しては何曲か、ほかの人に提供を受けていた(主に『強く儚い者たち』や『樹海の糸』『星に願いを』と言ったシングル曲)。そうした作品のない今回の作品は、初めての純然たるCocco印の作品だと言える。音楽活動の再開にあたって、期するものがあったのかもしれない。以前のような情念の激しさはあまり感じられなくなったような気もするけれど、それはそれでいい。優しい響きと独特のセクシャリティを持った作品だ。
(Aug 10, 2006)

Simpatico

The Charlatans / 2006 / CD

Simpatico

 シャーラタンズ、スタジオ盤としては9作目となる2年ぶりのアルバム。印象的には前作『Up at the Lake』と同じような感じだ。メランコリックなロック・ナンバーが中心のオーソドックスな作り。なんだかメロディ的に抜けが悪くて、残念ながら前作同様、あまり盛りあがれなかった。
(Aug 16, 2006)

Down in Albion

Baby Shambles / 2005 / CD

Down in Albion

 リバティーンズのボーカリスト、ピーター・ドハティの新ユニット。いまさらだけれどこの人、ボーカリストとしてのスタイルがハッピー・マンデーズのショーン・ライダーに似ていると思う──おまけにジャンキーなところまで。でもって曲はとてもキャッチーだし、才能はまぎれもなさそうだ。バンドとしてのインパクトはリバティーンズの方があったけれど、これはこれでありだ。とてもいいと思う。
 プロデューサーはリバティーンズの時と同じくミック・ジョーンズ。彼はおそらく15曲目ではコーラスにも参加している(と思う。あの声は)。
(Aug 16, 2006)

僕と君の全てをロックンロールと呼べ

サンボマスター / 2006 / CD

僕と君の全てをロックンロールと呼べ

 ただでさえ暑苦しいバンド、サンボマスターのサード・アルバムは、なんと全18曲で80分近いボリューム。しかもその間、延々とあのテンションが持続するという、スタミナ底知らずな内容。これはちょっと僕には過剰すぎる。過剰さというのはロックのひとつの要素として重要だとは思うけれど、ただ過剰に高カロリーというのもどうかと……。このバンドの場合、もっと削れるところを徹底的に剃り落とした作品が聴きたい。
(Aug 16, 2006)

冬のピノキオ

Midnight Bankrobbers / 2006 / CD

冬のピノキオ

 チバユウスケがRossoのギタリスト、イマイアキノブとコンビで制作したアルバム。エレクトリック・ギター・デュオのアルバムとのことで、半数以上がインストナンバーなのだけれど、これが意外と悪くない。何曲か歌の乗っているやつは、このところのチバ君が得意とするトーキング・ブルース調のナンバーで、その饒舌さが印象的だ。特に『My Name Is』(エミネムとは無関係)の詩がおもしろい。
(Aug 16, 2006)

My Flame Burns Blue

Elvis Costello / 2005 / CD

My Flame Burns Blue

 コステロが2004年のノース・シー・ジャズ・フェスティバルに参加した時の音源を編集したライブ盤。ビッグバンドをバックに往年の名曲を新アレンジで聴かせつつ、何曲かの新曲も披露している。ボーナス・ディスクとしてバレエ組曲『Il Sogno Suite』のおまけつき。やっぱり一番盛りあがるのはエレクトリック・ギターがガンガン鳴っている『Episode of Blonde』だったりする。
(Aug 16, 2006)

Hammersmith Odeon London 75

Bruce Springsteen / 2006 / CD

Hammersmith Odeon, London '75

 『Born to Run』30周年記念盤のボーナスDVDとして発表された75年のライブ音源が2枚組CDとなって単品発売されたもの。DVDで見られる映像はとても貴重だけれど、やはり音楽だけを手軽に楽しむにはCDの方が便利だ。ファンにとってはマストアイテム。
(Aug 16, 2006)

The Juliet Letters

Elvis Costello & The Brodsky Quartet / 1992,2006

The Juliet Letters [Bonus CD]

 コステロが弦楽四重奏のブロドスキー・カルテットとコラボレートしたこの作品で個人的に一番印象深いのは、やはり来日公演で初めて生の弦楽を聴いたことだった。それまでロックひと筋だった僕が、初めてクラシック音楽に断片的ながらも興味を抱くことになったという点で、非常にエポック・メイキングなコンサートだった(とはいってもその後にクラシックを聴く機会なんてまったくないんだけれども)。その記憶のためにこのアルバムには、けっこういい印象を持っている。もっとも日常的にはやはりあまり聴かない作品だけれど。
 ボーナス・ディスクは同じような管弦楽をバックにしたライブ音源が中心となっている。だから当然、スローなナンバーばかり。こればかりは今後も主ディスクに増して聴く回数が少なさそうだ。
(Aug 20, 2006)