『風』から2年ぶりとなるエレカシの新作。このアルバムでエレカシのスタジオ・レコーディング作品も実に16作目となる。あまり気にしていなかったけれども、それってすごい数だ。気がつけばいつの間にか、スライダーズはもとより、サザンや佐野元春さえも抜いてしまっている。まあ、売上が多くないので、きちんきちんと発表してゆかないと生活が成り行かないという理由があるのかもしれないけれど、理由はどうであれ、これだけの作品をコンスタントに生み出し続けてきた実績は評価されてしかるべきだと思う。
さらに続ければ、エレカシがすごいのは、その間一度もメンバーチェンジをしていないことだ。ロックバンドがメンバーチェンジなしで十枚以上のアルバムをリリースしたなんて例は、国内海外を問わず、ちょっとほかには思いつかない。たとえその理由が解散できないくらいに他のメンバーが宮本に依存しているからだとしてもだ。エレカシというバンドは、もしかしたらロック史上に残るバンドなんではないかという気がしてきた。いや、少なくても僕にとってはこの十六年間、間違いなく日本ロック史上最強のロックバンドなのだけれども。
2年ぶりとなるこの新作は、すでにライブで何度か聴いたことのある『すまねえ魂』や『人生の午後に』などを中心に11曲が収録されている。その2曲はアルバム『愛と夢』を思い出させる歌謡ロック調のナンバーで、ライブで初めて聴いた時からあまり印象が良くなかった。今回ひさしぶりに佐久間正英にプロデュースを依頼したのは、これらの曲のせいかとも思う。とにかくあまり印象のよろしからぬそれらの楽曲を、佐久間プロデュースでリリースするというのだから、ポニーキャニオン三部作が一番つまらないと思っている僕のようなリスナーに期待しろって言うのが無理な話だ。正直なところ、聴くまでは不安の方が大きかった。
でもいざ聴かせてもらってみると、これが結構いい。やはり問題の2曲は好きになれないけれども──悪いと思いつつiPodで聴いている時にはつい飛ばしてしまう──、それ以外はなかなかいい曲が揃っていると思う。特に『地元のダンナ』(すげータイトルだ)『シグナル』、そして『流れ星のやうな人生』からの最後3曲はむちゃくちゃ好きだ。つまり収録曲のうち、約半数はとても気に入ってることになる。音作りにも、派手なところこそないけれど、きちんとした仕事をしている感じが伝わってくる。出来を疑っていて申し訳なく思える好作品だった。
(Jun 25, 2006)