2006年11月の音楽

Index

  1. Live In Amsterdam / Fishbone
  2. D.C. Blues: Library Of Congress Recordings Vol.1 / Mississippi John Hurt
  3. Welcome to Haiti: Creole 101 / Wyclef Jean
  4. Rebirth Of A Nation / Public Enemy
  5. Nights of Ballads & Blues / McCoy Tyner
  6. Waterloo To Anywhere / Dirty Pretty Things
  7. Pod / The Breeders
  8. Just Can't Help It / 東京事変

Live In Amsterdam

Fishbone / 2005 / CD

Fishbone Live in Amsterdam (Bonus Dvd)

 フィッシュボーンの最新ライブ・アルバム。ボーナス・ディスクとしてCDと同じステージ、同じセットリストのライブDVDがついてくるので、大変お得だ。ただしDVDのほうはCDのまんまではなく、演奏の合い間にアンジェロのインタビューが挿入されていたりしている。英語のわからない僕にはなにをいっているのやらという感じだけれど。
 フィッシュボーンというと、ミクスチャー・ロック色が前面に出ていた中期の印象が強かったので、このライブ盤で聞ける、あまり厚みのない音はちょっと意外だった。でも映像を見てみて納得。現在のこのバンド、バッキングはベースとドラムとギターの三人のみという、いたってシンプルな編成なのだった。あとはフロントマンのアンジェロと、コーラス(MC?)兼トランペットのおにいちゃん。
 アンジェロはたまにサックスも吹いてみせる。バリトン・サックスっていうのだろうか、やたらとでかいやつだ。いっぽうでそれと対比するかのように、相方のトランペットは手のひらサイズのちっちゃいやつ。この人はアメフトチームかなんかのユニフォームなんか着ちゃって、普通のラッパーってイメージで、ほかのメンツと毛色が違っている。昔からのメンバーじゃなさそうな雰囲気だけれど、どうなんだろう。よくわからない。
 なんにしろ音だけ聞いている分にはそれほど感銘を受けられなかったので、これは映像があってとても助かった。おかげで随分と楽しめた。
(Nov 25, 2006)

D.C. Blues: Library Of Congress Recordings Vol.1

Mississippi John Hurt / 1963(2004) / CD

Dc Blues: Library of Congress Recordings

 マーティン・スコセッシの『ザ・ブルース』シリーズを見て、もっとも興味をおぼえたブルースマンのひとりがこのミシシッピ・ジョン・ハートだった。マディー・ウォーターズなんかの聴き慣れたスタイルのそれとは違う、フィンガーピッキングのアルペジオを得意とするフォーク・ブルースで、ボブ・ディランに通じるフィーリングが新鮮だった。
 これはその人が晩年、ブルース再評価の流れのなかで代表曲をあらためてスタジオ・レコーディングした63年の音源を集めたもの。悪くはないものの、もういい歳になってからの作品だから、いかにも職人芸という雰囲気が強い。一枚だけ聴くならば、やはりこういうのよりも若い頃の音源にするべきだったなと、ちょっと後悔した。
(Nov 25, 2006)

Welcome to Haiti: Creole 101

Wyclef Jean / 2004 / CD

Welcome to Haiti Creole 101

 ワイクリフ・ジョンのファーストは、出身地であるハイチの音楽が部分的に散りばめられて、アルバムの複雑なあじわいを引き立てる上でいいアクセントになっていた。だからそのハイチの民族音楽をアルバム一枚でどーんと紹介したこれもおもしろいかなと、ちょっと興味を持っていたのだけれど……。やっぱり根が平凡なロックファン。全編それ一色でこられると、ぜんぜん入り込めない。やはりワールド・ミュージックは苦手だった。
(Nov 25, 2006)

Rebirth Of A Nation

Public Enemy / 2006 / CD

Rebirth of a Nation

 しばらく前に何年ぶりかで買ったロッキングオンによると、この作品はPEがパリスのプロデュースでLAラップに挑んでみせた異色作、とのこと。なるほど、いつもとは音の感触がずいぶん違う。言われてみれば世の中のラップの半分くらいは、僕にはあまり馴染めない、この手の音のような気がする。
 なんにしろ、なぜ聴きもしないのにいつまでもPEをフォローするかなと思いつつ、聴くたびにその独特のガツガツとした音響にああなるほどと納得する、といったことを繰り返している僕のようなミーハーなリスナーにとっては、そのいつもの音が失われたこの新譜は、なんとも対処に困る一枚なのだった。
(Nov 25, 2006)

Nights of Ballads & Blues

McCoy Tyner / 1963 / CD

Nights of Ballads & Blues

 映画『酒とバラの日々』を見て、そのテーマ曲が気に入り、誰かおもしろい人がカバーしていないかなと検索をかけてみて見つけたのがこのアルバム。このところジャズといえばアマゾンで980円で買えるブルーノートのものばかり聴いているけれど、これは珍しくインパルスのデジパック盤で、昔買ったコルトレーンの『Lover Supreme』と同じシリーズのやつ。
 門外漢である僕は名前しか知らなかったけれど、マッコイ・タイナーという人は、ジャズ界では知らぬ人がないほどの有名なピアニストらしい。とはいってもこのアルバムはお目当ての『Days of Wine and Roses』のほか、『Statin Doll』や『'Round Midnight』、『Blue Monk』など、とても有名なスタンダード・ナンバーばかりを集めたカバー・アルバムだから、これをもってしてマッコイ・タイナーとはを理解した気になっちゃいけないのだろう。でもそんなことはどうでもいいやと思わせてくれる、とても可愛くて気持ちのいいアルバムだ。基本的に僕はピアノ・トリオが大好きなので、けっこう繰り返し聴いた。こういうのを気に入ってしまうあたり、やはり歳なんだろうなあと思うけれど。
(Nov 25, 2006)

Waterloo To Anywhere

Dirty Pretty Things / 2006 / CD

Waterloo to Anywhere

 リバティーンズのもうひとりのギター・ボーカル、カール・バラーの新バンド。ドラマーも元リバティーンズで、もうひとりのギタリストもリバティーンズのサポート・メンバーということだから、ピーター・ドハティを除いたあとのメンバーがこちらのバンドにそのまま流れてきたと考えていいんだろう。ベーシストはクーパー・テンプル・クロースの元メンバーとのこと(ではリバティーンズのベーシストはどこに……)。
 ベイビーシャンブルズがピーター・ドハティのソロといった風情で、バラエティに富んだ曲調が特徴だったのに対して、こちらのほうがリバティーンズの残り香の強い、いかにもバンドらしい作品に仕上がっている。どちらかというと個人的にはベイビーシャンブルズのほうがおもしろかったけれど、リバティーンズのファンのなかには、こちらのほうが断然好きだという人も多いのかもしれない。
(Nov 25, 2006)

Pod

The Breeders / 1990 / CD

Pod

 アナログ盤でしか持っていなかったブリーダーズのファーストアルバムを、MP3に落としたくて、いまさらながらCDで買い直した(安かったので)。でもこれはやはりいいアルバムだ。特別キャッチーな曲があるわけでもないのに、それでいてちゃんと心に引っかかってくる。ポイントはやはりこのオルタナティブの代名詞と呼べるような音。スティーヴ・アルビニの貢献度大ってことなんだろう。たぶん。
 とりあえず『Happiness is a Warm Gun』のカバーが最高。特別な新解釈もないビートルズのカバーでここまで見事なものはなかなかない。
(Nov 25, 2006)

Just Can't Help It

東京事変 / 2006 / DVD

Just can't help it. [DVD]

 東京事変第二期メンバーによる初のライブ映像作品。
 林檎さんが白無垢の花嫁衣裳で傘をさして『雪国』を歌うオープニングから、洋装への早変わりを見せて『現実を嗤う』に突入する演出など、最初っから椎名林檎らしい遊び心満載。ともさかりえへ提供した『少女ロボット』のセルフカバー、ギターの浮雲が作詞作曲したキャッチーな新曲『ミラーボール』、バービーボーイズのカバー『C'm'om Let's go!』など、セットリストもバラエティに富んでいて楽しい。新しい血が入ったバンドの完成度も高い。とてもいいコンサートだと思う。思うのだけれど……。
 どうにもやはりその世界観に浸かりきれない僕がいる。演歌風の『雪国』から始まった時点ですでに気分が引いてしまう。メンバー紹介の和気あいあいとしたおちゃらけた風景に冷めてしまう。『喧嘩上等』の歌舞伎調の演出に萎えてしまう。いまの僕にとって椎名林檎は音楽性のずれがあるうえに、ちょっとばかり演出過多なようだ。そのせいか、うわついたメンバーのなかで冷めすぎず浮かれすぎず、ひとり涼しい顔をしている浮雲の存在が意外な救いだった。
 いやしかし、ラスト・ナンバーの『落日』はとてもいい。これはむちゃくちゃ浸みる。鳥肌が立ってしまう。これぞ俺の好きな林檎さん。こういうのがある限り、たとえほかでどれだけずれを感じようとも、僕は彼女を愛さずにはいられない。
(Nov 26, 2006)