In Rainbows
Radiohead / 2007 / CD
これ一枚で年末のUKロック界の話題を独占していた感のあるレディオヘッドの新作。
なるほど、これは前評判にたがわぬ素晴らしいアルバムだった。一発目の 『15 Step』 を聴き始めたとたん、ああ、こりゃすごいやと思ってしまった。ダウンロードのみで先行販売されたという話だったから、もっと打ち込み多用のデジタルなサウンドを想像していたら、意外とそうでもなく、逆に思いのほか生演奏の感触のある仕上がりになっている。
デジタル世代らしい緻密さを持ちあわせた生身のバンド・サウンド──要するにそれは、いままでレディオヘッドがやってきたことの延長線上なわけだけれど、今回はこれまでよりさらに密室的な印象が強く、完成度が高い。ここまできっちり精密に音を積みあげておきながら、それでいて人肌のぬくもりをも感じさせる音楽はなかなか作れない。リリースしたばかりだというのに、いきなり古典的ロック・アルバムの仲間入りをしてしまいそうな雰囲気がある。この完成度を前にしてケチをつけるのは、ちょっとむずかしい。
ただ、個人的に唯一不満に思うのは、メジャー・コードのアッパーな曲がひとつもない点。昔から暗い曲ばかりやっていたバンドならばともかく、レディオヘッドはそうじゃなかった。かつてはもっとあかるい曲もあったわけだから、ここ何枚かではそうした面がすっかり影をひそめてしまった点は、やはり残念だ。
いまの音楽性を維持してなお、もっとポップに弾けるレディオヘッドが聴いてみたい。
(Jan 19, 2008)