2008年6月の音楽

Index

  1. Shine A Light / Rolling Stones
  2. I'm Not There / Various Artsts
  3. Seeing Things / Jakob Dylan
  4. Gavin Degraw / Gavin Degraw
  5. You Cross My Path / The Charlatans

Shine A Light

Rolling Stones / 2008 / 2CD

SHINE A LIGHT

 日本では今冬公開予定の、マーティン・スコセッシ監督によるローリング・ストーンズのドキュメンタリー・フィルムのサウンドトラック。
 とはいっても、サントラらしいのはスコセッシのイントロダクションが入った2枚目の冒頭くらいで、あとはいつもと変わらないストーンズのライブ盤といった感じ。このときのツアーについては、DVD4枚組の 『A Biggest Bang』 でたっぷり観ているので、いまさらという感じもあるけれど、それでも 『Loving Cup』 や 『You Got The Silver』、『Connection』 など、おや珍しいという曲も収録されているので、やはりファンとしては聴けて嬉しい。ジャック・ホワイト(ホワイト・ストライプス)、バディー・ガイ、クリスティナ・アギレラもゲスト参加してます。まあ、だからどうしたという感じだけれども。
 マイ・フェイバリットは、『Little T & A』 の最新ライブ・テイク。キーボード、ホーン、コーラスが加わったライブ編成の大所帯バンドによる演奏だから、スタジオ・バージョンとはかなり印象がちがう。音が厚くなった分、ドライブ感が増しているし、でもって持ち前のとっ散らかったところも健在で、とてもかっこいい。いまの気分だと、スタジオ・バージョンよりも、こっちの方が断然好きだった。
(Jun 08, 2008)

I'm Not There [Original Soundtrack]

Various Artists / 2008 / 2CD

I'm Not There

 つづけてもう一枚、こちらはボブ・ディランの内面を6人の俳優が演じ分けて見せるという異色の伝記映画 『アイム・ノット・ゼア』 のサウンドトラック。
 映画のコンセプトにあわせたんだと思うけれど、収録曲はタイトル曲のみがボブ・ディランの未発表オリジナル曲で、あとはさまざまなアーティストによるディラン・ナンバーの新録カバー・バージョンを集めたもの。つまり一種のトリビュート・アルバムという風な内容になっている。
 で、これが思いのほか、楽しい。エディー・ヴェダー(パール・ジャム)、ソニック・ユース、スティーヴ・マルクマス(元ペーヴメント)、ヨ・ラ・テンゴ、ロジャー・マッギン(元バース)、ウィリー・ネルソン、シャーロット・ゲインズブール、ジャック・ジョンソン、トム・ヴァーレイン(テレビジョン)ほか、新旧とりまぜた渋くも豪華な顔ぶれによって演奏される、ボブ・ディランの淡白ながらもあとを引く楽曲群は、コンピレーションでありながら、やたらと統一感があって、聴いていて、とても気持ちよかった。ボブ・ディランのあのしかつめらしいところがない分だけ、ご本家の作品よりも、とっつきがいい気がした。
 2枚組でどちらもCDスペックの上限、計2時間半を超えるボリュームだけあって、あまりちゃんと聴けていないものの、これはなにげにお薦めです。
(Jun 08, 2008)

Seeing Things

Jakob Dylan / 2008 / CD

Seeing Things (Sba2) (Dig)

 ボブ・ディランの息子にしてウォールフラワーズのフロントマン、ジェイコブ・ディランのファースト・ソロ・アルバム。
 この人の場合、ディランの息子というよりも、どちらかというとブルース・スプリングスティーンの弟なんじゃないかってくらい、声質がボスに似ている。このソロ・アルバムは全編アコギの弾き語りとアンプラグド・オンリーという内容なので、なおさらスプリングスティーンっぽさが引き立っている気がする。ただし、あちらのような熱さはまったくなく、非常に淡白な印象。まったく力むことなく、なんともいい声で淡々と弾き語ってみせている。くせがなくてシャイな感じが、この人の持ち味かもしれない。いまみたいな蒸し暑い季節に聴くにはもってこいではないかと思う。お薦めはラスト・ナンバーの 『This End of the Telescope』。
 ちなみに調べてみたら、ジェイコブくんは僕より3つ年下で、誕生日は僕と一日ちがいらしい。つまり現在38歳。意外といい歳だった(人のことは言えない)。
(Jun 24, 2008)

Gavin Degraw

Gavin Degraw / 2008 / CD

Gavin Degraw (Snys)

 スペンサー・シリーズの読者ならば、おっと思う地名、ニューヨーク州キャッツキル出身のシンガーソングライター、ギャヴィン・デグロウのセカンド・アルバム。
 ファーストのときには、ニューヨーク出身のソウルフルなピアノマンということで、ビリー・ジョエルを引き合いに出して紹介されることが多かった記憶があるのだけれど、そのわりに作品自体はナチュラル・トーンのギター・サウンドが中心の、まったくピアノが目立たない音作りで、なんだか名に偽りありな感じだった。
 このセカンドは、前作よりさらにロック寄りのギター・オリエンテッドな音作りになっている。ネットで見ると、ギターを弾いている写真ばかりしか見つからないし、本当にこの人はピアノを弾くんだろうかと疑いたくなってしまった。
 作品としては、音もメロディもかなり平均的なアメリカン・ロックだと思う。ファーストの 『Chariot』 のような問答無用のポップ・チューンもない。それでもこの人のボーカルは、白人にしてはなかなか黒っぽくて好きだ。どこぞのインタビューで、サム・クックに影響されたと語っているのを読んで、おっと思った。サム・クックのボーカル・スタイルは僕にとってひとつの理想形なので、それを共有している人ならば、共感をおぼえるのも当然かもしれない。
 お薦めはこちらもラスト・ナンバーの 『We Belong Together』。
(Jun 24, 2008)

You Cross My Path

The Charlatans / 2008 / CD

You Cross My Path (Dlx)

 シャーラタンズ、通算十枚目のオリジナル・スタジオ・アルバム。
 シャーラタンズのライブはいつでもファースト・アルバムのラスト・ナンバー 『Sproston Green』 で終わるものと相場が決まっているけれど、今回のアルバムにはあの曲を思い出させるテイストの曲がいくつもある。要するに、特徴であるグルービーなキーボードが非常に効いていて、これぞまさにシャーラタンズという仕上がりになっている。一聴してはっとするようなすごさはないけれど、それでいて全編しっかりとダンサブルだから、聴いていてとても気持ちがいい。デビュー当時から一貫して変わることのない、この中庸なるグルーヴ感とでもいったものこそ、彼らの最大の強みだと思う。
 考えてみれば、ストーン・ローゼズとインスパイラル・カーペッツのいいとこ取りをしたようなサウンドで、インスパイラル・ローゼズと揶揄されたファーストのころも、僕にとってこの人たちはそんな感じだった。最初は、なんだよ、こいつら胡散臭いなと思っていたのに、そのなにげないノリのよさについつい引き込まれ、いつの間にか好きになってしまっていた。でもって、ほかのマンチェのバンドが姿を消してゆくなか唯一生き残り、気がつけばかれこれ二十年近いつきあいになっている。
 やたらとなよなよした印象のわりには、意外とタフで骨太──そしてどのアルバムでも確実に踊れる。そんなシャーラタンズを、僕はけっこうかけがえなく思っていたりする。
(Jun 29, 2008)