Honey
Chara / 2008 / CD+DVD
ラッドウィンプスの野田洋次郎が初めてプロデュースを手がけた曲が収録されているというので聴くことになったチャラの通算十作目のオリジナル・アルバム。
思い返せば、僕が前回彼女の作品を聴いたのは、かれこれ十年以上前の大ヒット作 『Junior Sweet』 で、そのときも折から話題になっていたところへきて、ストリート・スライダーズの蘭丸が参加した曲があるというので、それじゃあいっちょう聴いてみようと思ったのだった。なんだ、今回とおんなじだ。
チャラとの接し方がいつもそんな形になるのは、僕が彼女のボーカルを好きとも嫌いともいいきれないからだ。スタイル的にはとても個性的だから一目置いてはいるものの、僕の趣味からするとやや声量が足りない。もしも彼女が椎名林檎やCoccoのように、もっと声量があって、抜けのよい声を持っていたら、たぶんもっと積極的に聴いていたんじゃないかと思う。いかせんボーカルの好き嫌いってのは、かなり感覚的なものなので、どうしようもない。このアルバムでは年のせいか──彼女は僕より一学年下らしいので、現在四十ジャスト──、前よりさらに声が出なくなっていて、なおさら残念な感があった。
ただし、僕がそんな風に不満をおぼえてしまうのは、彼女のボーカル・スタイルに対してだけであって──それもごく個人的で感覚的な好き嫌いのレベルであって──、作品としての質に対してのものではないということは、はっきりいっておきたい。このアルバムはとても出来がいい。曲は粒ぞろいではずれなしだし、音づくりも丁寧で、非常に素晴らしい仕上がりだと思う。なまじすごくいいだけに、好きだといい切れないのが残念だよなぁと──そういう作品だった。
野田よーじろー(とチャラは自身のホームページで呼びつけにしている)初プロデュースの 『ラブラドール』 は、ベースがバンプ・オブ・チキンのチャマ、キーボードがいまやエレカシの第五のメンバーと化しつつある蔦谷好位置という、僕にとってはなじみのある人たちが顔をそろえていて、とてもおもしろかった。出来もいいです。さすがよーじろー。ラッドウィンプスの新作がなおさら楽しみになった。
そのほかにも蔦谷くんが自身でプロデュースした曲あり、椎名林檎の師匠、亀田誠治がプロデュースの曲あり(ドラムは古田たかし)、佐野元春の最新作にも参加しているグレート3の高桑圭がベースを弾いている曲ありと、なんだか知っているミュージシャンがたくさん参加していて、妙に親近感のわく作品だった。フェイバリット・ナンバーは当然 『ラブラドール』、そしてやたらとファンキーなラスト・ナンバーの 『call me』。この曲はチャラ自身のプロデュース。いやはや、素晴らしいです。
(Jul 13, 2008)