Working On A Dream
Bruce Springsteen / 2009 / CD
前作 『Magic』 からわずか1年ちょっとでリリースされたブルース・スプリングスティーンの最新アルバム。
スプリングスティーンのスタジオ盤もこれで第16作目。僕がこの人の作品を夢中で聴いていたのは第8作目の 『トンネル・オブ・ラヴ』 までだから、つまり単純にアルバムの数だけでみると、僕が好きだったのはキャリアの前半だけで、その後は20年以上にわたり、延々とつかず離れずの状態をつづけていることになる。いい加減ここいらあたりで聴くのをやめても後悔しない気がするけれど、やはりそこはそれ。十代の自分が、いかに多くの恩恵をこの人から受けてきたかを思うと、そう簡単には離れられない。それはサザンもしかり。きっと僕はなんだかんだいいつつ、一生この人たちの音楽を聞きつづけてゆくんだろう。
ということで、これはボスの新譜。
いつになくリリース・インターバルが短くなったのは、オバマ大統領誕生に対する祝賀気分のせいかと思っていたけれど、それよりも去年亡くなったEストリート・バンドのオルガン奏者、ダニー・フェデリシに対する追悼の意味のほうが大きいようだった。インナー・ジャケットにはフェデリシへの追悼の言葉が記されているし、参加ミュージシャンのクレジットにも彼の名前がある。いまは亡き旧友の最後の音を、きちんと作品として残しておきたいと思ったにちがいない。
そんな作品にけちをつけるのは、野暮ってもの。あいかわらず音響的にはほとんど惹かれるところがないし、一曲一曲が映画でも観ているように鮮明なイメージを持っていた往年のような楽曲は少ないけれど――それでも一応、生後6ヶ月でおむつも取れないうちから銀行強盗を働いたという伝説のアウトローにまつわる西部劇ソングとか、スーパーマーケットの店員さんに片思いする男の歌とか、かつてのストーリーテラーぶりが垣間見える曲もある――、持ち前の生真面目さは十分に伝わってくるので、そういうところにはきちんと答えねばと思って、それなりに繰りかえし聴いている。
いちばん気に入っているのは5曲目の 『What Love Can Do』。「この雨をやませたり、君の夜空を青く変えたりはできないけれど、愛にできることならば見せてあげよう」と歌うサビのフレーズがとても好きだ。
(Feb 27, 2009)